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それから、釈放され、後宮の部屋に戻ったものの、私は元気がなかった。皇帝陛下が私を牢屋に入れるとは思っていなかったし、私だけが勝手に気に入られていると思っていた。
それにしたって私だってこの国の為にえらく貢献してきたのに、スパイとは酷すぎる扱いでは無いか?
少し頭にもきていた。
それもあってか、私は口数も少なくなり、主に書物などを読んで後宮の部屋で生活した。
皇帝陛下が久しぶりに来られたが、ついきつい口調になった。
「…何を怒っておるのだ?」
とうとう皇帝陛下がそう問われた。
「いいえ、怒ってなどおりませぬ。
しかし、私は皇帝陛下同様とまで行かなくとも、随分とこの国に心を砕いてきたつもりにございます。
スパイなどと思われ、牢屋にまで入れられるとは、夢にも思っていませんでした。
いえ、元は私が勝手に隣国へ行った事が悪かったのでございますね。」
「その事はもう水に流せ!」
「流れぬ物もございましょう!?
私はこの国を心より愛しておったのでございます!
皇帝陛下にはそれが伝わっていたものと…」
私の目からは、悔しさか、悲しさか、情けなさか、涙が溢れてきた。
「…すまなかった…
俺がやり過ぎたのだ…
許せ…
泣くなよ…」
皇帝陛下は美しい洋服の袖で私の涙を拭った。
「汚れますわ…」
「構わぬ…
許せ…
そなたをスパイだと思った事は一度もなかった…」
「は…?
では、なぜ牢屋などに…?」
「…サイア王子よりそなたを王太子妃したいとの打診があった。
その直後、そなたがサイア王子と隠れて会っている事を知ったのだ…」
文章の要点が分からない。
「つまり…?」
「分からぬややつだな。
俺はサイア王子とそなたの仲に嫉妬したのだ。
それで、スパイなどと言いがかりをつけて…」
私はびっくりして涙が止まった。
「私は皇帝陛下の後宮の姫ですわ…」
「だからこそだ。
だからこそ、裏切られた、とそう思ったのだ。
俺は…
そなたが好きだ…
戦を論じるそなたも、熱弁で俺を打ち負かすそなたも、甘い物が好きなそなたも、全てが愛おしい…
そなたが何をしていても可愛いと思う俺はきっと、エティーナから見れば恋する変わった男だろう…
そんなふうに思うそなたでさえ、俺は…
愛している…」
私はなんと返事をして良いか、言葉が全く出てこなくなった。
「良いのだ…
俺の片想いなのは重々承知している…
城下町までなら、外出を認めよう。
とりあえず今はそれで我慢せよ。」
皇帝陛下はそう言うと、私の手を取りキスを落とした。
その唇は僅かに震えていたようにも感じた。
そして、その日は本城へ帰って行かれた。