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本屋へと向かった俺達は、さっそく参考書を見ることにした。
「ゆっくり見てもいい?」
「いいよ、ちゃんと選ばないとね」
「ありがと、時間かかるから、齋藤も本見て来ていいよ」
「俺も参考書買いたいから一緒に見るよ」
俺達はそれぞれ本を手に取って、中身をパラパラと確認しては元に戻す作業を永遠と繰り返した。
俺達も、もう高校2年生だ。大学受験を考えると、大学によっては遅いくらいだ。だが、うちの高校も偏差値はかなり高いことで有名。学年10位以内をキープ出来ていれば、大体の大学に受かると言われている。
学校独自の参考書が教科書以外にも配られており、皆んなそれをもとに受験勉強をしている。
だが、やはり心配になるのは仕方がないことで、よく市販の参考書を見にくるのだ。しかし、学校の参考書の出来はかなりいいようで、市販のものだと物足りなく感じてしまう。
チラッと大塚さんを見ると、表情は暗い。
やはり、今回は見つかりそうにないな。
俺の視線に気付いたのか、大塚さんがこっちに近づいてくる。
「どう?見つかった?」
「ううん、そっちは?」
「私もダメ。やっぱり学校のだけやっとけば良いのかね?」
「そうだなぁ。とりあえず、あれをもとに大学の過去問さらうしかないのかな」
「ごめん、無駄な時間になっちゃったね」
「気にしなくていいよ。さて、気晴らしにどっか行く?」
「そうだね。齋藤に任せていいか?」
「了解」
俺は、短く返事をすると何処に行くか考える。
遊ぶとなると、まず定番はあそこだよな。
俺達が最初に向かった先は、ゲームセンターだ。香織とも良く来ており、色々やらされるので、大抵の景品は取れるようになった。
「ゲームセンターって、私来たことない」
「えっ、マジで?意外だね」
「そんなに遊んでるように見えるのか?」
大塚さんが睨みつけてくるが、どうしても身長差があるため、上目遣いにしか見えない。可愛いな。
「〜〜〜〜〜〜!」
急に大塚さんの顔が真っ赤になり、顔を逸らすと先に歩いて行ってしまう。
「ど、どうしたの?」
「なんでもない!・・・可愛いとか、言うなし」
早く行こ!と大塚さんに急かされ、UFOキャッチャーのゾーンへと向かう。
うわぁ、景品がガラッと変わってる。
あ、これ香織が集めてるキャラクターのぬいぐるみだ。
取ってってやるか。
「大塚さんちょっと待ってて」
俺は、100円を入れると、慣れた手つきでボタンを押して行く。このゲームセンターは設定が良心的で、余程のことがなければ一発で取れる自信がある。
そして、今回も難なくぬいぐるみをゲットすることが出来た。これで香織のお土産が出来たな。
「齋藤、すごいな」
「あぁ、結構得意なんだよ。大塚さんも欲しいのがあれば取るよ?」
「いやいや、私はそういう可愛いの似合わないから」
そう言って、大塚さんは先に行ってしまった。
確かに、大塚さんがストラップやキーホルダーなど小物をつけているところを見たことがない。何か理由があるのだろうか?
そんな時、ガチャガチャのコーナーが目に入った。
『今、女子高生に大人気!』と太鼓判が押されたキーホルダーのガチャ。確か、香織も少し前までつけてたっけ。
俺は、とりあえず一回まわして、大塚さんを追った。
ーーーーーーーーーー
その後、ゲームセンターで一通り遊び尽くした俺達は、端っこの椅子で休憩していた。
「はぁ、ゲームセンターって楽しいんだなぁ」
「楽しかったなら良かったよ」
「連れてきてくれてありがと」
「いいえ。そろそろ、お昼食べる?」
時刻は14時となり、ご飯を忘れて遊んでいたようだ。今ならどこでも空いてるだろう。
「もう、ご飯はいいかな。軽めにクレープとかでどう?」
「オッケー、じゃあそうしよう」
俺は立ち上がったが、大塚さんはゲームセンターの方を向いて動かなかった。まだやりたいのがあったのかな?
「どうしたの?」
「あれ・・・やりたい」
そっと指差された方を見ると、そこには見慣れた大きな箱達が並んでいた。そうプリクラってやつだ。よく香織に誘われて撮ったっけな。
「プリクラやりたいの?」
「うん。でも、やっぱり柄じゃないよな」
クレープ行こうぜーと歩き出す大塚さん。
なぜか、引き止めた方がいいような気がした。
特に理由があったわけではない。が、俺は大塚さんの手を掴むと、ゲームセンターに向かっていた。
「撮ろうよこれ」
「い、いいの?」
遠慮がちに聞く大塚さんに、俺は小さく頷くと、2人で中へと入った。そして、お金を入れてあることを思い出した。
そう、あれは香織とプリクラを撮りに来た時のこと。プリクラを撮る際、何枚か連続で撮られるのだが、その際に機械の方からポーズを指定されるのだ。
慣れている人達は、そんなのお構いなしに自由に撮るのだが、香織から『この通りにしないとダメなんだよ?』と教えられた晴翔は律儀にそれに従っていた。さらに、彼女は今回が初めてで、晴翔の言うことに従うことになる。
やばい、またあの恥ずかしいポーズをさせられるのか?
しかし今更逃げるわけにも。むむむむ。
隣を見ると、目をキラキラさせて大塚さん。
これは・・・やるしかない。
「大塚さん、機械の方からポーズを言われるからその通りやってれば大丈夫だから」
「わ、わかった」
その後、機械から何度かポーズを指定され、俺達は必死についていく。
大塚さんは、初めからパニックになっており、『こ、こんなポーズとるのか!?』『ち、近すぎる!!』『お嫁に行けないぃぃぃ』とか騒ぎながら頑張っていた。
そして、最後のポーズ。
『最後にキスしちゃおうかー』
「「・・・は?」」
一瞬フリーズして、頭が真っ白になってしまった。
『3・2・1』
やばいやばい、どうすれば!?
『ハイ、ポーズ』
カシャっと音がしたと同時に、俺の頬に柔らかい感触が。え、大塚さん?俺はびっくりして隣を見る。
「こ、こっちみんなし・・・晴翔」
照れながら、俺の名前を呼ぶ大塚さん。頬に残る彼女の温もり。不意の出来事に、俺の頭が状況を理解するまでに、時間がかかったのは言うまでもなかった。