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ノストラードファミリーの護衛として、クラピカが“鎖”を研ぎ澄ませていたその頃、 とある廃墟都市にて、幻影旅団の定例会合が静かに始まっていた。
その場にいたのは、団長クロロ、シャルナーク、マチ、フィンクス、フランクリン、ノブナガ……
そしてもうひとり。黒いローブのフードを被った少女No.13の団員。
彼女の名は、ユメ。
旅団では“特質系能力者”として知られ、
諜報・分析・記憶操作に関わる任務を得意としている。
その力の正体を、団員たちは詳しく知らない。
クロロだけが知っていた。
彼女の“血”が、クルタ族のものだということをも
クロロ「鎖野郎の動きが活発になってきた。正面からぶつかるのは避けたい。ユメ、お前の出番だ」
ユメ「……彼に接触するんですか?」
クロロ「いや、まだだ。だが、彼の“心の構造”には君が入り込める。
見えない形で、彼の“怒り”を撹乱できるのは君だけだ」
ユメは視線を落とした。
クラピカ。
かつて、家族だった少年。
焼き尽くされた村。
飛び散った眼。
失われた名。
──そして、自分が生き残ったという罪。
マチが口を開く。
マチ「無理しないで。顔色悪いよ」
ユメ「……大丈夫、マチ。私は“蜘蛛”だもの」
口角を上げてそう答えるその姿に、シャルナークが少し目を細める。
シャル「ねえ、ユメ。君さ、本当に旅団が“居場所”だと思ってる?」
その言葉には、からかいでも詮索でもない、本物の優しさがにじんでいた。
ユメは少し黙ったあと、ゆっくりと頷いた。
ユメ「……思ってるよ。
“復讐の炎”が私を殺す前に、“仲間”ってものを知れてよかった」
それが、本心だった。
少なくとも、そう信じていた。
──その夜。
クロロの部屋に呼ばれたユメは、手渡された一枚の写真に息を止める。
写真には──
黒服を着たクラピカが、ホテルのバルコニーで立ち尽くしている姿。
クロロ「この近さで、彼に接触する覚悟はあるか?」
ユメ「……その前に、ひとつだけ質問」
クロロ「なんだ?」
ユメ「彼が、私を“殺そうとしたとき”……団長は、どっちを選ぶ?」
クロロは静かに笑った。
クロロ「もちろん君だよ。だって、君はもう“旅団の一部”なんだから」
その言葉は、嬉しいはずだった。
でも胸の奥が、きゅうっと締めつけられる。
クラピカが、自分の存在を知らずに“仲間”を殺していく。
その中に、自分が立っている。
ユメの中で、“復讐の炎”と“裏切れない絆”が絡まり始めていた。
その日、クラピカは単独での情報収集任務を受け、マフィアとの連絡役を訪ねていた。
場所はヨークシンの地下カジノ。
闇に紛れて、幻影旅団の気配があった、だが、それは罠だった。
クラピカ「……まさか、ここで奴らと鉢合わせするとはな」
対面に現れたのは、ローブをまとった小柄な人物。
顔は隠されていた。
だが、クラピカは即座に“念”を展開し、鎖を構える。
クラピカ「お前も“蜘蛛”か」
「……そうだよ」
低く、震えのある声。
それは、誰よりも静かな決意を含んでいた。
クラピカは“具現化系の鎖”を構える。
そして言う。
クラピカ「名前を聞く価値もない。……目を見れば十分だ」
──その瞬間、ローブが揺れてフードが落ちた。
赤い瞳。
クルタ族特有の、“怒り”を内に宿した光。
クラピカの動きが、ほんの一瞬だけ止まった。
クラピカ「……赤い瞳……?」
夢主「…………」
クラピカ「どうして、旅団に……?
お前……クルタ族なのか?」
夢主は言葉を飲み込んだ。
今ここで名乗れば、きっとこの場は止まる。
でも
名乗ることは、“クラピカの復讐を否定すること”になる。
ユメ「……敵だよ、クラピカ。
私を、迷いなく殺して」
クラピカ「なにを言って」
ユメは先に動いた。
強化系に転化された念で、鎖を避けながら跳び、クラピカの頬を斬った。
浅い傷。
だが、そこには躊躇いがにじんでいた。
クラピカ「っ……甘いな。やはり、蜘蛛の同情は偽物か?」
ユメ「違う……っ。違うけど、それを言えない……」
クラピカ「なら、ここで終わりだ」
クラピカの“律する小指の鎖”がユメの指先に巻き付く。
捕らえたように見えたその瞬間。
バン
爆発のような念の波動が周囲を飲んだ。
シャルナーク「間に合った! 団長、ユメが接触されてる!」
クロロ「……予定より早かったな。全員、撤退。」
クラピカ「逃がすか、、」