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俺は、医者からこう言われた。
「…葵さん。貴方はIHSです。」
と。俺は病気に詳しくないが、自覚はあった。わかるさ、それくらい。
「このケースは今までに4体しか発症していないんです」
「なんでうちの子が!…何か、何か治療法はあるんですか!」
親たちが可笑しいくらいに動揺している。
「…あるにはあります。ただ…」
「ただ?」
「この治療をしたところで、症状が緩和されるだけで、完治はしません」
そうか…まあ治らなくても俺はいいけどな。
「肝心の治療法は!!?」
「────、ですね」
…。そうできるなら、何よりも嬉しいだろう。
「ッ!それ以外に方法は…」
「現時点では見つかっておりません。」
なんで俺はこうなった。
普通に寝て起きて、ご飯を食べて、
普通に学校へ行って、部活をやって。
何から何まで平凡な日常を送っていたじゃないか。
なんで。なんで。
普通に友達もいたし、クラスメイトとも仲良くしていた。
「普通」に好きな人もできた。
────分からない。
【 patient’s case record 】
Indulgent Hatred Syndrome
通称 IHS
・概要・
原因不明の精神病。完治する事はない為指定難病とされている。
特定の異性(一人である)に異常な程の好意を抱く。
しかし関心が強すぎるが故に愛しているという気持ちの反面強い憎悪も抱く。矛盾した自身の気持ちに耐えられず相手の周りの人物を排除、更に激しく束縛監禁をしたいという欲求が出てしまう症候群。
発症例は少なく、有史上では4件しか発症していない。その為、指定難病とされている。
治療方ではないが緩和方法としては相手と生殖行為をし、子をつくることである。緩和方法なので完治する訳では無いが生活に支障が出ないレベルまで症状を緩和することが可能。
今こうしている間も彼女の事を考えてしまう。
考えたくないけれど、考えてしまう。愛しているけど、憎んでしまう。
彼女がいてくれるだけで人生が明るくなる。
彼女さえいなければ普通に暮らせていた。
この矛盾した思考が自分を蝕んでいく。
嗚呼、どうしたものか。
そうして俺は意味のない自問自答をやめた。