テラーノベル
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…やばい、この書類昨日までだった。
私、御前崎八幡宮悠は真っ白の報告書を手に持って廊下で立ち尽くした。
バレたらめめさんにしばかれる…ん?
廊下の向こう側に、周りより背が小さくてもしかしたら小学生にも見えそうな熊耳の生えた人が見えた。
「…ぜんさんどうしたの?」
声をかけると、ぜんさんこと熊白善が物凄く悲しそうな顔をして振り返った。
「八幡さん…実はアイス落としちゃって…」
床には落ちてぐちゃぐちゃになったバニラアイスがあった。
「購買で売ってる限定品なのにいいいい!!!!!!!」
…このままじゃほんとに泣くな…
「ならぜんさん私のアイスあげますよ。」
後ろから話しかけてきたのはレイラーさんこと音乃川麗羅だった。
「レイラーさんいいの!?」
「はい!アイスは別に他のでもいいですから!」
「やったあ!レイラーさんありがとう!」
ぜんさんが笑顔でぴょんぴょん跳ねる。
………やっぱり子どもにしか見えない。
「あ、生徒会の皆さんじゃないですか。」
振り返ると、Sの字をしたヘアピンをつけた生徒がいた。
…!東雲椎名…
めめさんから危険視されている一年生。
能力もそうだし、性格が…どこか人間とはかけ離れている。
精神が不安定らしいけど、一体どういう感じなのか…
「…えっと、椎名さんだっけ?」
「私のこと知ってるんですね!私有名人ですか?」
「ま、まあそうだね…(ある意味…)」
「…まあね(危険という意味で…)」
私達は椎名さんの地雷に触れないよう、当たり障りのない会話をする。
「…皆さんって、私の能力知ってますか?」
「…えっと、詳しくは知らないかな。」
「なるほど…私の能力はですね!”狂人化”です!身体能力が凄く上がるんですよ!ただ、使ってると周りが見えなくなっちゃうんですよ〜。」
「へ、へ〜…」
…どうしよう、この人やばいかも
心が…壊れるかもしれない
椎名さんの目をじっと見つめる。
「…どうしたんですか?そんな見つめて…」
「…椎名さん、辛かったら相談してね、いつでも聞くよ。」
「…なんのことですか?」
椎名さんが苦笑いをする。
…ほら、無理してる。
一体なぜあなたがそうなっているのか
絶対私がその心を救い出す。
「………私、もう行きますね」
椎名さんがその場を去ったあと、ぜんさんとレイラーさんは不思議そうな顔をしていた。
「八幡さん、どうして椎名さんにあんなことを?」
…まあ、この二人知らないからな
二人だけじゃなくて、めめさんすらも私の能力のことは知らない…
「…いや?なんとなく」
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