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K-Takasaka
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#スクラッチャーズ
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K-Takasaka
143
#タイムループ
K-Takasaka
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翌朝。
五人は、パリ市内の小さな広場に集まっていた。
狐面の暗号通信は、昨夜のうちに別の場所へ移動していた。アオノが追跡した結果、発信地点は警察の巡回区域と何度も重なっている。
「つまり、狐面の六人は警察の動きを利用している」
マサカゲが地図を指でなぞった。
「そして、その近くには必ずK-Tの痕跡がある」
メバルが続ける。
「K-Tが狐面の六人を追っているなら、次に現れる場所も予測できるかもしれない」
「では、警察車両を追跡します」
アオノが端末を操作する。
「市内の巡回車両を表示します」
画面に、いくつもの車両の位置が映し出された。
カキはその画面を覗き込む。
「多すぎる!」
「フランスには警察車両が多いからな」
「違う! Kさんが多すぎる!」
「K-Tが何人もいるわけではない」
「でも、どのパトカーにも乗ってる可能性がある!」
ミステーが静かに言った。
「K-Tが増えている」
「増えていないよ」
メバルは地図を見ながら、ひとつの車両を指差した。
「この巡回車は、昨日も暗号通信の近くにいた。今日も同じ区域を回っているね」
「それだ!」
カキが立ち上がった。
「トマさんの車だ!」
マサカゲが顔を上げる。
「なぜトマという警察官の車だと分かる?」
「Kさんに似ているから」
「理由になっていない」
「でも、トマさんが狐面の事件を知っていたのは事実です」
アオノが冷静に補足する。
「彼が事件を担当している可能性はあります」
「よし、トマさんに聞こう!」
「待って。相手は警察官だよ。何度も職務質問されたら、今度こそ問題になる」
メバルが止めた。
しかし、カキはすでに走り出していた。
「トマさーん!」
「だから大声で呼ばないで!」
広場の向こうから、一台のパトカーが近づいてきた。
運転しているのはルノー。
助手席には、制服姿のK-T。
前回と同じく、五人の前を通り過ぎる予定だった。
しかし、カキが道路の端まで駆け出し、両手を大きく振っている。
ルノーがブレーキを踏んだ。
「見つかったな」
K-Tが言う。
「君の家出仲間に」
「家出ではない」
「今日はどうする? トマのままで?」
「そうする」
ジャンが無線を通じて連絡してくる。
『こちらにも五人組が見える。接触するなら、笑うなよ』
「笑わない」
『君ではなく、こちらの話だ』
K-Tは無線を切った。
パトカーが五人の前に停車する。
窓が下がり、ルノーが顔を出した。
「何か用か?」
カキが息を切らしながら駆け寄る。
「トマさんに聞きたいことがあります!」
K-Tは、あくまで初対面の警察官として振る舞った。
「何でしょうか?」
「昨日、地下施設の近くにいましたよね?」
「いました」
「狐の仮面をつけた人を見ませんでしたか?」
「見ました」
五人の表情が変わる。
「本当ですか!?」
「はい」
K-Tは端末を確認しながら答える。
「黒い服を着て、仮面をつけていました」
「それは狐面の六人です!」
「六人かどうかは確認していません」
「でも、狐の仮面なら間違いない!」
カキが身を乗り出す。
「どこへ行ったんですか?」
「地下施設の東側へ」
「東側!」
マサカゲが地図を取り出した。
「その先には何がある?」
「古い倉庫街です」
ルノーが答える。
カキはK-Tを見つめた。
「トマさん、あなたはあの事件を追っているんですか?」
「はい」
「じゃあ、Kさんのことも知っていますか?」
車内に沈黙が落ちた。
ルノーが口元を押さえた。
K-Tはカキをまっすぐ見た。
「Kさんとは、誰ですか?」
「俺たちの仲間です。日本からフランスへ来て、俺たちに何も説明せずに働いています」
「それは仲間というより、監視対象ではないのか?」
カキが固まった。
メバルが眉をひそめる。
「どういう意味ですか?」
K-Tはフランス語で話し続けた。
「説明もなく姿を消し、置き手紙だけを残し、追跡されても自分から正体を明かさない人物なら、普通は仲間より先に問題行動を疑うでしょう」
流暢なフランス語だった。
言葉の選び方も、現地の警察官が捜査対象を評価するように自然だった。
しかし、五人には内容が正確には分からない。
アオノの翻訳端末が音声を拾う。
『説明なく姿を消し、追跡されても自分から正体を明かさない人物なら、普通は仲間より先に問題行動を疑うでしょう』
カキが目を見開く。
「Kさんを悪く言いました?」
「一般論です」
K-Tは即座に答えた。
「一般論なら仕方ない」
マサカゲが頷く。
「確かに、行動だけを見れば怪しい」
「マサカゲまで!」
カキが抗議する。
パトカーの車内で、ルノーが拳を口元に当てていた。
ジャンは後部座席で、肩を小刻みに震わせている。
無線から、別の警察官の声が漏れた。
『トマ、もう少し言ってやれ』
K-Tが無線へ手を伸ばす。
「通信を切る」
『待て、俺たちも聞きたい』
K-Tは無線を切った。
カキはなおも食い下がる。
「でも、Kさんは悪い人じゃありません!」
「そうですか」
「ちょっと怖くて、無口で、説明が足りなくて、すぐ一人で行動するけど!」
「十分に問題があるのでは?」
ルノーの肩が大きく揺れた。
メバルがルノーを睨む。
「今、笑いました?」
「笑っていない」
ルノーは必死に顔を引き締めた。
しかし、頬が震えている。
カキは気づかずに続けた。
「でも、Kさんは俺たちを守るためにフランスへ来たんです!」
K-Tの表情が、ほんのわずかに変わった。
「なぜ、そう思うのですか?」
「置き手紙に書いてあったからです」
「何と?」
「色々あったのでフランスへ行ってきます。探さないでください」
「それだけですか?」
「はい!」
K-Tは目を閉じた。
ルノーがとうとう下を向いた。
ジャンは窓の外を見ながら、必死に笑いをこらえている。
K-Tはゆっくり目を開けた。
「それは、守るというより、説明を放棄しただけでは?」
カキの顔が曇る。
メバルが小さく息を吐いた。
「……確かに、そこはK-Tらしいけど」
「メバルまで!」
K-Tは窓の外へ視線を向けた。
その先に、古い倉庫街へ続く道がある。
建物の屋上に、一瞬だけ白い狐の仮面が見えた。
K-Tの目が鋭くなる。
「失礼。仕事があります」
ルノーが車を発進させようとする。
カキが慌てて窓に近づいた。
「トマさん!」
「何でしょうか?」
「もしKさんに会ったら、言ってください!」
「何を?」
「俺たちは、Kさんを捕まえたいんじゃない!」
カキは拳を握った。
「一緒に帰りたいんです!」
K-Tは黙ってカキを見た。
その言葉を聞いて、車内の空気が少しだけ変わった。
ルノーも、ジャンも笑うのをやめた。
K-Tはやがて、短く答えた。
「伝えておきます」
「本当に?」
「はい」
「じゃあ、もう一つ!」
カキが叫ぶ。
「Kさんに、たまには連絡しろって!」
「分かりました」
「あと、はちみつレモンを勝手に持っていかないでって!」
K-Tの眉がわずかに動く。
「それは、本人に直接言えばいいでしょう」
「会えないから言ってるんです!」
「そうですか」
K-Tは窓を閉めるよう、ルノーへ目で合図した。
パトカーが動き出す。
五人はその場に残され、走り去る車を見送った。
「やっぱり、トマさんはいい人だな」
カキが言う。
「事件の情報も教えてくれたし」
アオノが端末を確認する。
「倉庫街の方向へ向かいました。狐面の六人を追うようです」
「なら、私たちも行こう」
マサカゲが車へ向かう。
メバルは、走り去ったパトカーを見つめた。
「……あの人、本当にK-Tじゃないのかな」
カキが振り返る。
「どうして?」
「最後の言い方が、少しだけK-Tに似ていた」
「でも、フランス語が上手すぎる」
「Kさんがフランス語を話せないとは限らないよ」
アオノが答えた。
「むしろ、警察の任務で派遣されているなら、流暢でも不思議ではありません」
カキは黙り込んだ。
しかし、すぐに首を振った。
「それでも、トマさんはKさんじゃない」
その頃、パトカーの中では、ルノーとジャンが必死に笑いをこらえていた。
K-Tは前方を見たまま、無言で運転している。
ジャンがとうとう耐えきれず、低い声で言った。
「説明を放棄しただけ、か」
「黙れ」
「監視対象かもしれない、も良かった」
「黙れ」
「本人に直接言えばいいでしょう、も――」
「黙れ」
ルノーの肩が震える。
K-Tは二人を睨んだ。
「勤務中だ」
「分かっている」
ジャンが笑いをこらえながら答える。
「だから余計に面白いんだ」
K-Tは前方へ視線を戻した。
倉庫街の屋上で、白い狐の仮面が再び揺れた。
「……対象を確認」
K-Tの声に、二人の警察官はすぐに表情を引き締めた。
パトカーは速度を上げる。
その後方から、五人の車も同じ方向へ進んでいく。
カキはハンドルを握りながら叫んだ。
「待ってろ、トマさん!」
「K-Tを探しているんじゃなかったのか?」
マサカゲが尋ねる。
「トマさんがKさんを見つける前に、俺たちが見つける!」
その声を、前方のパトカーに乗るK-Tは無線越しに聞いていた。
K-Tは小さく息を吐く。
「……本当に、騒がしい」
ルノーが笑いをこらえながら尋ねる。
「今のも、本人たちには聞こえないように言ったのか?」
「聞こえても問題ない」
ジャンが口元を押さえる。
「だが、あれは悪口では?」
K-Tは少しだけ間を置いた。
「事実だ」
その返答に、車内の二人はまた笑いをこらえた。
パトカーの前方には、狐面の六人。
後方には、K-Tを追う五人。
そしてその中央で、正体を隠したK-Tは、誰にも気づかれないまま事件現場へ向かっていた。
コメント
1件
第5話読み終わった!トマさん=K-T確定だよね…?「説明を放棄しただけ」「監視対象かも」って本人に言わせるの酷すぎて笑ったわwww でも最後の「伝えておきます」からの車内の笑いこらえるやりとり、K-Tのキャラが透けて見えてじわじわ来た。カキが「一緒に帰りたい」って叫んだところはグッときた。正体バレはまだ先か〜続き気になる🔥