テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
俺の親は俺の親じゃない
大村進は小さい頃からそう考えていた。腹違いとかではない。血が繋がっていないのだ。
自分が覚えている最古の記憶。それは母親に頭を洗われている時だ。女性の割にはしっかりした身体つきのの母に進は思い出す度何時もかっこいいなと思っていた。だが、とある事をきっかけに尊敬の気持ちは嫌悪感に変わってしまった
「こうすることで子供ができるぞ。そしてこれが男性と女性の体の違いだ。板書しておくんだぞ」
小学校高学年の頃に教えられた保険。男子はにやけ女子は顔を顰めていた。しかし、進は違って目を見開いた。子供をつくるためには男性と女性が必要。女性の割には身体がしっかりとしている母は本当に女性なのか。抱え込んではいけない疑問が進を支配した
その日から母をちゃんと見ることができなくなった。まだ男性が女性か分かっていないのに見る事が出来なかった。
「進大丈夫?風邪でもひいた?」
「……いや、大丈夫」
普段とは元気が無い顔に気付いた母は体調が悪いのだろうと考え学校を休むよう言った。進もこの状態で授業に受けれないと考えたので母に同意した
自室に戻り布団にくるまっても眠る事は出来なかった。母の性別が分からない以上自分はこのまま親を見る事はできなくなるだろうと考えた進は考えた末大胆な行動にでることにした
母が風呂上がりの時に洗面所に入る事だ
進の家は洗面所と脱衣所が一緒の間取りとなっているので歯磨きをしに洗面所に来たと誤魔化せれる。
計画を立てた進の1日は長かった。少し寝て食べて勉強して漫画を読んでの1日だったが今度は計画が頭に離れなかったのだ。なんでかは分からない。ただ、頭から離れなかった
そして今、進は洗面所のドアに立っている。中には母がおり着替えているだろう。覚悟を決めドアを開けた
「……あ」
「…え?アッ、」
「…ごめん、歯磨きしたくて」
「う、うん。大丈夫だよ」
歯磨きと歯みがき粉を持って直ぐに洗面所からでた
(あぁ…男だったな)
母の身体は進にある最古の記憶の母と一緒だった。そして一瞬ながらも男性だとわかるモノも見えた
「…うぅ……ウプッ」
込み上げてくる吐き気にやっと、頭から計画が離れない理由が分かった。警告だったのだ。これ以上調べたら危ない。薄々分かっていたのかもしれない。母は、彼は男だったことを
「ヒック…ハッ……ウゥ…」
叫びたかった。しかし嗚咽によって出せれなかった
そこから時が経って進は高校生となった。親とは全く話しておらず顔も見ない日があった。学校でも一人で行動していることが多く、青春をすることもなかった。昼休憩になったら何時も通ってる屋上への階段で携帯をいじって時間を潰していた
今日も携帯で時間を潰す事になるだろうと考えていたが先客がいた。髪の毛を綺麗に束ねデコられた携帯をいじっている女子高生は進に気付いていなかった。進も関わりたくない為今日は違う所で暇を潰そうと考えその場から離れていった
翌日、今日はあの女はいないだろうと進は考え屋上の階段へと向かったがまた女子高生は居ており携帯をいじっていた。その日翌日も更に翌日も居ており、屋上への階段は女子高生のになってしまった。もう此処は使えないかと考えた進だったが携帯を起動してある事に疑問を感じた。
今の時間は12時43分。昼休憩は12時40分からで進は自身の教室から少し近いので早めに屋上の階段着くことができるのだがこの女子高生は進より早くついているのだ。相当ここの場所が取られたくないんだなと考え最近通っている場所に向かった
屋上の階段に行かなくなったので女子高生には会えなくなったが進は気にすることもなく授業を受けていた。今は体育のバレーで試合を行っていた。ボールが回ってスパイクをし点をとれたが指に少し深い切り傷ができてしまった。水で洗ったが絆創膏がないので先生に保健室に行くと伝え向かった。
保健室に入ると先生は居り絆創膏を渡された。用はそれだけだったので直ぐに保健室から出て体育館に向かっている途中
「ねぇ」
と後ろから声をかけられた。振り返ると屋上の階段で居座っていた女子高生だった
「君何時も屋上の所の階段使ってたよね」
「…そうだが」
「少し話し相手になってくれない?」
「あ?どういう事だ?」
「まぁ今日屋上の階段に来てね」
そう言い彼女は進が通った道を歩いていった。
昼休憩に入るまで行きたくないなと思う気持ちがは溢れていたが結局屋上の階段に着いた。引き返そうかと思ったが女子高生手招きをしたので戻れなくなった
「やっほ。来たんだね」
「…お前が誘ったからだろ」
「まぁそうだけどね」
「で、話は何だ?」
「それね〜……実は私保健室登校してるんだ」
「………」
「それで、4時間目が普通より少し早く終わるから昼休憩がめちゃくちゃ長くて暇なんだよね」
あぁ、そう言うことだったのかと進は納得した何故進よりもこの女子高生が早く屋上の階段に着いていたのは進より早めに授業が終わるからだった。保健室登校で使っている教室は屋上の階段へ行くとなると進の教室よりも少し遠いが授業が早めに終わるので普段の4時間目の授業が終わる時にはついていたのだろう
「後ね、私。話し相手が欲しいんだよね」
「…だったら俺以外にいるだろう」
「嫌、君と話したかった」
そう言い彼女は進をみる
「保健室登校をし始めた時から此処で暇を潰している君が可哀想だなと思って」
「……余計なお世話だ」
「それにさ君と私何だか似てる気がして」
何処がだと進も女子高生を見たが何も似たような所はなかった
「いや、顔のパーツとかじゃなくて環境」
「環境……親とかか?」
「まぁ、それもそうなんだけどね。私、友達と喧嘩してそれでからかわられるようになったんだよね。それが辛くて少しの間保健室登校にする様になったんだよね」
それが俺とこの女と何が似ているのだろう。女は友達に縛られ俺は親に縛られている。取り巻く環境は違うだろうと進は心で考える
「別に私からかわれるには無視とか出来るから良いんだけどあの子さ私の親を馬鹿にしてきたんだよね」
「馬鹿にした…?」
「私施設育ちだから血液上私の親は私の親じゃないんだよね。それをあの子が知ってて馬鹿にしてきたの」
「…!」
私の親は私の親ではない。それはずっと昔の進が考え、そして今日までずっと引き摺っている言葉だった
「ごめんね。色々と脱線して重たい話しまくっちゃったね」
「…何でそんな気軽に話してるんだ?」
「……え?」
「何で自分は自分の親の家族じゃないって気軽に言ってるだ?」
例え仲が良かった友達にすらも話さなかった進にとって初めて話した人にすらっと言ってきた女子高生に疑問しか出てこなかった
「なんかね……君は中学の時の私みたいだなって思って」
「は?」
「中学の時私も自分が自分の親は自分の親じゃないってことをわかってて、ずっとそれを引き摺ってたんだよね。その時の私が君と似ていて、それに君親の話になると凄い食いついてきてたからそうなのかなって思って」
「…………はぁ」
「確かに血が繋がってないと親じゃないって感じるけどそうじゃないんだよ」
「は?…」
「結局は想いなんだと思う。親が愛を与え続けるから家族なるんだよ」
「そんな考えでお前は立ち直ったのか?」
「うん。そうだよ」
分からなかった。散々引き摺って来たものがそんな簡単な考えで立ち直ったのが
「血液で全ては分からない。愛情を与え、子供をそだてる。それが親の役目だよ。君の母さんと父さんは今もそうしてるんじゃないの?」
進は今までの家の出来事を思い出す。進はあの二人を軽くあしらっていたが二人は進に何かあったのか尋ね、進を心配をし、そして進に優しい笑を向けた。そうだ。あの二人は進を自分の子供として、進を見ていたのだ
「あ……あぁ…」
「親が子供を育て、その子供が親を受け入れてから本当の家族になる。いざこざは沢山あるよ。でもそれを超えて行くのが家族なんだよ」
昼休憩の終わりを告げる鐘がなる
「じゃあね。また話そう」
そう言い女子高生は階段を下って行った
「おかえり」
「ただいま」
「あら」
「ん、何?」
「いや、何でもない」
久しぶりにただいまを言ったからそれに驚いたのだろう
あの女子高生と話した後、授業は家族の事でいっぱいになった。それである結論にたどり着いた
少しでもいいから母と父に接していこう。 かつて、母が男だと知る前の時のように
第二話
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!