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天井近くの採光窓から朝日が光を差し、寝室を覆う影をゆっくりと溶かして行く、その時紗理奈がゴロンと寝返りを打った
「うう~・・・き・・気持ち悪い」
紗理奈が寝返りを打ってそうつぶやくと、隣にいる大きくてあたたかな物体が、ガバッと飛び起きた
ベッドが大きくうねったものだから、紗理奈はマットレスの端をつかんで、揺れないように力を入れた
胃の縦揺れと横揺れがおさまることを、願いながら
ベッドボードの向こうからバタバタと何か、音がしたと思ったら、大きな体の重みでまたマットレスが沈んだ
「さぁ!紗理奈!これを食え!」
心配そうな声がして、ミートボール大の小さな米を丸めた、物体を唇に押し付けられた
目を閉じたままパカッと口を開けると、ミートボールおにぎりが口の中に入って来た
「ほら!お茶だ!噛まなくてもいいから飲み込むんだ!」
紗理奈は直哉の入れた麦茶をそのままごくりと飲み込み、ミートボールおにぎりを3つ麦茶と一緒に胃の中に流し込んだ
3つのミートボールおにぎりは胃袋の底に落ち着き、まるで船を安定させるための錨のように、ずっしりと落ち着いた
すると嘘のようにつわりが引いて行き、紗理奈は嬉しくなって起き上がった
目を開けるとボクサーショーツ一枚姿の直哉が、あぐらをかき、心配そうに見つめている
「・・・大丈夫か?吐く?」
彼が尋ねながらコップを紗理奈の口につけて、再び麦茶を飲ます、そしてだらしない子にするように口を横に、置いてあるタオルで拭ってくれた
二人のベッドボードには、毎夜ジップロックのタッパーに入った、ミートボールおにぎりが数個、お茶が入ったボトル、紗理奈の「おえ!」用の洗面器ハンドタオル、手首にはめてつわりのツボを押すつわりバンド、その他つわり対策の諸々のグッズが置いてあった
そしてそれはなんとすべて直哉が用意してくれたものだ、彼は紗理奈が気持ち悪くなったら、自分でキッチンに行って何か食べるからいいと言っても聞かず
毎晩小さなミートボールおにぎりを、せっせと作ってベッドボードに置いて、起き抜けに紗理奈に食べさせるのだ
ケロっ!「すっかりなおったわ!」
にっこり笑う紗理奈に安堵して直哉が言う
「そっ・・・そうか・・・やっぱりお福さんの言った通りだな!君は腹を減らしたらダメなんだ、今日はミートボールおにぎりで成功したけどお粥もいいと言ってたぞ!あしたはお粥にするか?それともフルーツをカットしたものや、ねこまんまとか・・・味噌汁かけごはん・・・ 」
直哉が再び紗理奈を胸に抱いて、仰向けに寝転んだ、ふ~・・・と安心したのか大きくため息をつく、紗理奈も彼が愛しくてぎゅっとしがみつく
「ラーメンとか・・・からあげ・・・キムチ?」
うっ・・・「もっとあっさりしたの言って」
紗理奈が裸の直哉の胸に抱かれ、口元を抑える、想像したら「ウッ」と来そうだ
「う~ん・・・ソーメン?・・・あっさりかぁ~・・・お茶づけ・・・日本人ならではの特権だ、酢だこ・・・白菜の漬物・・・焼きナス・・ 」
クスクス・・・「おばあちゃんの食べ物みたい・・」
「そういえばアリスはバターロールパンの、お徳用の袋をいつも引きずって歩いていたな、誰を妊娠してた時だっけ?たくあんも丸々一本かじってたな」
う~ん・・う~んと直哉が思い出そうと考え込む
ここにくるまでは毎日一人で吐き気と闘い、胃袋に何もおさめていられなかったけど、彼の献身的な看病のおかげか
精神が安定しているせいか、実際彼がこんなに自分を甘やかしてくれるなんて思わなかった
直哉に抱きつきギュ〜ッとその腕に力を込める
「どうした?吐きそうか?お福さん呼ぶか?」
「ううん」
紗理奈はキツク彼に抱きつき、目を閉じた
ただ愛しいだけ・・・