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桃「ただいま」
青「ないこ…おかえり」
数年ぶりに実家に帰った。
インターホンを鳴らして玄関から入るとまろが出迎えてくれた。
でもまろは痩せ細り、骨と皮だけの状態で、酸素ボンベを引きづりながら出てきた。
青「急にどうしたん笑?」
桃「いや…ちょっと失敗しちゃって…」
青「そっか…」
桃「それよりどうしたの…?」
青「どうしたってなんや笑ただ、ないこが帰ってくるのを待ってたんやで」
数年前、会社を辞めて、起業したいと思い
まろに相談すると
青「辞めておきな、上手く行かへんかったらどうすんねん」
っと言われてしまい、夢を否定させてる気持ちになり。
桃「弟のやりたいこと応援できないのッ?」
青「ないこにはまだ早いやろ。」
桃「俺を馬鹿にしてるの…もう知らない。」
とついかっとなり、家を飛び出した。
そこから何件も着信や手紙がきたが全て何も目を通さずに削除していた。
それからがむしゃらに働いたけど、結果としては失敗してしまい、全て失ってしまった自分は仕方なく実家に帰ることにした。
俺が生まれてすぐ両親が離婚し、俺が中学にあがる頃母は俺たちを捨てた。
高校生だったまろは家事、バイト、学校を両立させて、俺の事を育ててくれた。
それなのに冷たく突き放したバチが当たったんだろう。
すごく胸が苦しくなった。
桃「まろ、今すぐ病院に行こう」
青「俺は大丈夫やから笑とりあえず中に入ろうや笑」
そう言われリビングに入ると数年前と何も変わらないリビングがあった。
1つ変わったことはまろが痩せ細っただけで、
青「なぁ…ないこ」
桃「ん?」
お互いソファーに座り、ただ黙って気まづくしていた。
その時急に少し寂しげな声でまろが話しかけてきた。
青「うすうす気づいたと思うんやけど、笑」
少しか細い声で、でも心配させないように笑いながら
青「実は癌でもう末期やねん笑」
そう言われた。何となく勘づいてはいたが、現実を受け止めたくなかった。
まろは笑っていたが、昔の本当の笑顔の方が輝いて見えていた。きっとそんなふうにしてしまったのは俺のせい。
青「でもないこが帰ってくるかもしれへんから入院しないで待ってたんやで笑」
桃「は?」
青「ないこが帰ってきた時に誰も居なかったら寂しいやろ笑?」
数年間まろのことを無視した挙句仕事も、家も恋人も何もかも失って帰ってきたのに
まろからの叱責も一言もなくて。
その優しさに胸が痛くなった。
ふらふらの体でキッチンに向かうまろ。
急にどうしたんだと思っていたら
青「最後にお願いがある。」
桃「何…?」
青「最後にないこの好きな手料理を作りたい」
桃「馬鹿言わないで!無理しないでよ」
青「お願い。最後の望みなんや」
そういうまろの目には涙が浮かんでいた。
それを見て俺は何も言えなくなってしまった。
数年ぶりに台所に立つまろを見て、
こんな大きかったっけ?なんて思いながらずっと見つめてた。
まろは手を震わせながら丁寧に調理を進め
俺が何か頑張ったら必ず作ってくれた
あの特製カレーを最後の力を振り絞って作ってくれた。
青「できたで、食べてみ」
桃「ありがとう」
青「なんか痩せたんちゃう?ちゃんと食べてる?」
なんてお母さんみたいなことを言いながら俺が食べてるところをじっと見つめている。
1口食べると昔と全く味が変わらず懐かしい気持ちになった。
気づいたら涙が出てきて。涙が止まらない。
桃「まろ、ほんとにごめん。俺全部失敗して」
青「…」
桃「あの時止めてくれたのにそれも聞かずに、俺なんかもう泣」
そう泣き崩れる俺にまろは優しく頭を撫でてくれた。
青「大丈夫。どんなことがあってもないこは俺の自慢の弟や笑」
そう優しい顔して言ってくれた。
食事の後まろは横になり俺の手を握り締めり静かに話し始めた。
青「俺な、ないこが居なくてもずっとないこのこと考えてたんやで」
「今何しとるんやろ?とか元気にしとるかな?って辛くても頑張れてるかなってな」
震える声を聞きながら俺は何も言えずにいた
青「あん時は色々言っちゃったけど病気が分かった時もないこならきっと上手くいってそして必ず帰ってくるって信じてたんやで」
青「だから治療も頑張れた」
言葉一つ一つにまた涙が溢れてきた。
青「そんなに泣かんでや笑」
そう言われたけど涙を止めることは無理だった。
そしてその夜はまろの隣で昔みたいに2人一緒の布団に入って安心して眠った。
明け方まろの独り言が聞こえた気がした
青「大きくなったな…」
その2日後まろは空へと飛びだった。
あの日素直に帰ってきて良かった。って心から思った。
まろの気持ちと向き合った俺はもう1回チャレンジしてみようって思えた。
桃「もう、失うものは何もないもんね笑 」
次こそは成功して見せるからちゃんとみててよね。