テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
完全に完結です!
最終章 ―転生の朝、ふたりの世界へ―
―完全なる完結―
朝、世界は静かに生まれ変わる。
どこか懐かしい、春の風が吹いていた。
まだ幼さの残る街の空気。
制服の襟を整えながら、少年はその通学路を歩いていた。
「……なんでやろ。今日、誰かに会える気がする」
その少年――**ないこ(来世)**は、ふと足を止めた。
理由なんてわからなかった。ただ、心の奥がざわついた。
校門の前。
朝焼けに照らされて立つひとりの少年がいた。
真っ赤な髪が風になびいて、
その瞳は、まっすぐに“彼”を見つめていた。
――一瞬。
すべてが音を立ててつながった。
過去も、今も、あの別れも。
痛みも、叫びも、誓いも。
ぜんぶ、思い出せないはずなのに、ぜんぶ知っていた。
「……初めまして、かな」
そう言ったのは、**りうら(来世)**だった。
でも、その声は、ないこの胸を深く震わせた。
「ううん……違うよ。
“やっと会えたね”、だよな」
ないこが微笑む。
「……やっぱり、お前か」
りうらも、微かに笑った。
次の瞬間、ふたりの距離がふっと近づく。
何も言わなくてもよかった。
誰が何と言おうと、この気持ちはもう揺らがない。
あの世界で、
命を削って愛し合った記憶。
それはこの魂の深い場所に刻まれていた。
「お前のいない世界なんて、
やっぱ俺には無理だったわ」
「じゃあ、今度は――俺から守らせて?」
「……そっか。じゃあ、今度は“壊れずに”生きようか」
「うん。いっしょに」
ふたりの手が、自然に重なった。
あの時は叶わなかった未来を、
今度こそ、この手で抱きしめていく。
そう、これは続きじゃない。
ふたりが初めて、“始められた”物語。
◆
春が来るたびに思い出すだろう。
あの優しさも、
あの苦しさも、
そして何より、ふたりで見た地平線の先も。
だけど今はもう、
過去に戻る必要なんてない。
未来は、ここからつくればいい。
――おかえり。
――ただいま。
それは、誰にも知られない、
ふたりだけの約束だった。
***
それから
ないこは、りうらと同じ大学に進学し、
静かに、穏やかに、共に生きていった。
目立たないふたりだったけど、
その隣にいる相手を見つめる瞳だけは、誰よりも強かった。
何も壊さず、何も奪わず、
ただ「愛する」ことだけを選び続けて。
今世では、
誰も傷つけずに、
ただ一緒に、
ゆっくり老いていく――そんな、
やさしい奇跡が叶っていた。
◆
そして老年、ある冬の夜。
白い息を吐きながら、ふたりは手を繋いで歩いていた。
公園のベンチで、手を重ねたまま、そっと話す。
「なぁ、次は俺が先に死んだら、絶対追いかけて来てな」
「バカ。約束してもどうせすぐ来るくせに」
「……そやな」
ふたりは笑った。
もう、“終わり”なんて、怖くない。
だって、必ずまた出会えると、信じてるから。
その夜、ふたりは静かに眠りについた。
寄り添ったまま、最後まで、手を離さずに。
そしてまた――春が来る。
どこかの空の下で。
まだ誰も知らないふたりが、
また「初めまして」を交わすだろう。
その愛は、もう壊れない。
どんな世界でも、何度でも。
― 完全なる完結 ―
コメント
7件
やっぱはぴえんは神だな... 完全に完結だああああ
完全に完結した〜〜〜〜〜 はぴえんでうれちい