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第4章.憎悪

──────そして俺は、明日出所する。」

「…は?」

驚きのあまり、口からこぼれた疑いは、言葉にへと変わった。

「出所って…そんな急に……決まるわけないでしょ。大体。私に教えてくれなかったじゃん。」

「あかりには言ってなかったからな。」

私は疑問、裏切られたような不快感、心配、不安。そんな気持ちが溢れ、作業の手を止める。

「…手。止まってるぞ。」

作業の手を止め椅子をぼーっと

見ている私にマサトは言った。

私は慌てて作業を続けた。それと同時に口を開いた。

「…マサト。このまま殺されるつもり?」

「まさか。」

マサトはニヤリと笑ってみせる。

「今日の夜。この刑務所の正体を暴く。」

──────所長室へ行け?

「ああ。所長室に行けば全て真相が明らかになるはずだ。前こっそり見に行ったら机の上に所長の日記、資料が全て置いてあった。それを取ってきて欲しい。」

「わかった。少しは協力してあげる。そうすれば私も出られるかもしれないんだよね?」

「そうだね。それは必ず保証するよ。こんな姿の明をみたら昔の俺だったら笑ってたよ」

「はいはい。」

私は少しニヤリと笑って、その場を離れ、食堂を通り、食堂の裏にある階段を登ろうとすると、

食堂の方から、聞き覚えのある音が聞こえた。

バン!バン!

という。2つの音。

…銃声だった。

階段を数段戻り、壁からこっそり食堂をみた。そこには、血を流しながら倒れる。ドルレットがいた。私は、複雑な気持ち、疑問、自分の不甲斐なさ、愚かさを感じながらも振り返り、所長室へと向かった。幸い、ドルレットの騒ぎのせいで、看守はみんないなかった。所長室は、向こうからしか鍵が開かない。

そうマサトは言っていた。だけど、閉まっているとは限らない。

そう思い、全力で扉を引く。扉は重く、固かった。だが、さらっと開いた。扉の音だけが響く中、私は、颯爽と部屋に入る机の上に日記と資料がある。マサトはそう言ってた。部屋は静かで、水の滴るような音が聞こえる。私は机の上に目をやり、すぐさま日記と資料がある事に気づき、素早く手に取り、すぐさま黙読する。

〜8月6日〜

あぁ。殺人とは楽しいものだ。

軽く人を殺すだけで金が手に入る。ああ。なんて滑稽なんだ。蘭まで協力してくれるなんて。蘭が舞を殺してくれたおかげで

生涯遊んで暮らせるだけのお金を手に入れた。だが明を殺し損ねたのは残念だ。

…まあ?どうせこの監獄にいる時点ですぐ殺されるだろうが。蘭はよくやってくれた。舞の殺しから明の殺人誘導まで。この調子だ。この調子だ。私には家族はらんしかいない。家族なんて金にしかならない。

この世は。

金が全てだ。

「やあ。明。」

私は声に驚き振り返ろうとするが、その声の正体を知っている気がして怖くなって振り返るのがゆっくりに感じた。私は後ろを振り返った。そこには、私に向かって銃を向ける。お父さんが立っていた。私の。お父さんだ。私は恐怖のあまり、何も声が出なかった。恐怖と失望で瞳孔が揺らぐ。すると数秒も経たずにマサトが慌てた様子で部屋に入ってきた。

「明!!」

マサトはお父さんと私を交互に視線を送り、全てを察した様に、私に近づき、手を握った。

そして感情を乗せた声でお父さんに向かって疑問をぶつけた。

「お前。俺の父さんを殺しただろ。」

その声は、酷く震えていた。

「誰だ?お前は。」

「名島 マサトだ。」

「名島…あぁ名島か。覚えているよ。あれは確か…」

「どうでもいい。殺したのはお前かと聞いているんだ。」

「そうだよ。」

お父さんは不気味な笑い方をしながらそう言い、それに続くかのように言った。

「明ぃ。ここまで来てくれて助かるよ。出所を、10年も待たなくて済む。」

言葉と声が一切出なかった。訳が分からなかったから。

「明。頼むよ。お父さんと蘭を死んで幸せにしてくれ。」

そう言ってお父さんは銃口を再び私達に向けた。私は恐怖、憎悪、悲しみの感情に一斉に襲われて、その場から1歩たりとも動けなかった。広い部屋に銃声が響き渡る。お父さんが、娘に引き金を引いたのだ。しかし撃たれるのを覚悟していたその瞬間。目の前には、私を守って血塗れになった、マサトがいた。

「マ…サト?」

「ちっ。邪魔が入ったか。名島マサト。お前は”不合格(リフェクトム)だ”!!!」

3回大きな音が鳴った。

どれも、お父さんの銃口からマサトに向かって発せられた、銃声だった。

「あ……か…り…お前…だけは…絶対に死…なせ…」

バン!!!!容赦の無い銃声が、マサトを撃ち抜いた。

「マ……サ…ト。マサト。ダメ。マサト。死ぬなんて。絶対ダメ…」

私はこれ程ない位に絶望していた。

「さて…これで最後だ。明。さよならだ。」

──────マサト…地獄で会おうね。そう、死を覚悟した、その時だった。

「…お前がな。」

──────バン!!!!

その瞬間。

鋼のように硬い。

銃弾が。お父さんを撃ち抜いた。

撃ち抜いた瞬間、その撃ち抜いた男の姿を見た。

「俺はリグルだ。久しぶりだな。」

それは朝いつもカンカンカン!と音を鳴らし、囚人達を起床させていた看守だった。

「看守…?」

「そうだ。ここまで良く頑張ったな。」

「マサトが…死んじゃったの。」

「安心しろ。息はある。弾は心臓を外れ、もっと離れたところに当たっている。すぐ治療すれば間に合う。」

はあぁぁ…と安堵した。その瞬間。

「生かして…たま…るか…。」

お父さんの方を向いた時、お父さんは銃を拾い上げ、私にめがけて、1発撃った。

「…ぐぅぁ…」

“マサト”が、私に覆い被さるように守った。マサトは呆気なく倒れる。それと同時に、お父さんも力を使い果たして倒れる。

「マサト…?」

「マサト!!!」

看守と私は、慌ててマサトの名前を口にするも、返事が無かった。看守は必死に傷口を抑えて止血するが、いくら抑えても血が止まらない。意識が戻らない。

所長室に向かう階段からは、大量の足音が聞こえてきた。銃声を聞いて他の看守達が駆けつけてきたのだろう。

「マサト!!起きて!!!」

返事は無い。私の無駄な叫び声が所内に響き渡る。

「マサト!起きろ!」

看守のかけ声も、無駄に終わった。部屋に看守が次々と入ってくる。私と看守は取り押さえられ、マサトの血が床に染みる。

「待って!!!マサトが撃たれたの!!」

「こちらで治療する。だからお前らは大人しく懲罰房に入ってろ。

いずれお前らは秘密を知ってしまったから殺さねばならない。それにお前らが死ねば脳さえ残っていれば大量のお金になるんだ。我々の足しになるとでも考えてくれよ。」

「え?私たちが!?」

「ちょっと待ってくれ!お前らも所長のやっていたことは知っているだろ!」

必死にリグル看守はほかの看守に弁解する。

「知ってるが?それが何だ。所長の言うことは絶対。俺ら看守は配下のようなものだ。」

「ちっ!」

看守は舌打ちとともに手錠をかけられ、それと同時に私にも手錠がかけられる。マサトは看守達に連れて行かれ、私達は、生きている事を願う他なかった。

「行くぞ!!!」

懲罰房に連れて行かれる。冷たい廊下を走らされ、道中で看守に「遅い」と背中を叩かれる。挙句の果てには薄暗い牢屋に閉じ込められた。しかもリグル看守とは遠い位置にある牢屋に投獄されたため、会話もろくにできなかった。マサトは無事だろうか。蘭は…お金持ちになりたかったのかな。そう考えていると、疲れが溜まっていたのか、それが開放されるかのようにどっと疲れが押し寄せる。もう…疲れたなぁ…。そうして、私は静かに目を閉じた。起きると外はやけにうるさく、銃声もした。眠ってしまったのか、時間が経ったのか、どういう状況なのかは全く分からなかった。必死に耳を研ぎ澄ませるが、沢山の足音と大きな声だけの騒音のみしか聞こえなかった。が。

「まだ生きてたの?」

その声は。鉄格子越しで、聞こえてきた。

「誰?」

その影は、近づいてきた。

「お姉ちゃん。お父さんを殺したの?」

蘭だった。

「蘭…!?あんた何したかわかってるの!?話したいことが山ほど…」

「そんなのどうでもいい!!!殺したのか殺してないのか。どっちなの?」

「…私たちが殺した。」

「そっか」

「蘭!こんな事して何になるの!?目を覚ましてよ!!」

「私は正常だよ。お姉ちゃん。私はお金持ちになりたかった。」

「…お…持ちに……お金持ちに

なりたかったから人を殺すの!?」

「そうだよ。」

蘭はそう言って、リグルの方へと歩いて行く。蘭の右手には、拳銃が握られていた。

「蘭!!!やめて!!!!!」

「やだよ。お姉ちゃん達がパパを殺したんでしょ?」

「こんなことして何になるの!!!!」

「うるさいなあ。」

バン!!!!…バン!!!!と、

リグルの血が飛び散る音と共に、

銃声が鳴り響いた。

「意外と死ぬの早いね。弱すぎて笑える。」

「蘭!!!!!やめて!!!!

それ以上はもう!!!」

「安心して。もう死んだから。」

「え、?嘘だ…」

「本当だよ。見てみる?まあ、お姉ちゃんが生きてたらの話だけどね。」

「蘭!!!!!」

私は怒り狂ったように妹の名前を叫ぶ。蘭は1歩ずつこちらに歩いてきてはニヤリと笑う。私の。鉄格子の前に来た。

「さよなら。お姉ちゃん。やっぱりお姉ちゃんも、”不合格(リフェクトム)“だ!!」

バン!!!!と私の足を撃ち抜いたと同時に、懲罰房に入るためのドアが開いた。

「…っぁ…ハッハッッ…やめ…て…」

私は悲鳴をあげる。私は最後のせめてもの抵抗として蘭の顔を見ようと、顔を上げたその瞬間。

マサトが、蘭の左胸部から心臓目掛けて。食堂で使うナイフで刺していた。

「グハッ…。」

蘭はその場に倒れ込み、私は自分の妹の心配よりも、自分の足の心配よりも、マサトの心配をしていた。マサトは、背中に包帯をぐるぐる巻きにしていて、

その傷の痛みに我慢しながら、

痛そうに言った。

「明!!!逃げるぞ…!!!」

「マサト…!生きていたの!私……足が…」

「…俺が担いでやる。早く行くぞ。」

マサトは妹の持っていた懲罰房の鍵で牢屋を開け、私をおんぶした。

…マサトには迷惑をかけてばっかだなぁ。そんな気持ちを抑え、マサトに体を預け、力を抜きマサトに一言礼を言う。

「…ありがとう。」

「どういたしまして。」

その瞬間。私は意識を失った。

疲れから来るものなのか、安堵からくるものなのかはわからなかった。目が覚めたら、見知らぬ病室にいた。周りを見渡そうと眼球を左に操作する。すると、マサトが私を見下ろしていた。

──────マサト?

「マサト!!!良かった…生きてたんだ!」

「まだ安心できないぞ。」

「え?何でよ。刑務所からは出られて一件落着じゃ…うっ…足が…」

「前にも言ったはずだよ。所長はマフィアとつるんでた。つまり、臓器売買していた所長が死んだから、今度は俺らを消すつもりだ。」

「なんでそんなこと分かるの?」

「リグルがこの病院に来た。それで伝えに…」

「リグルが!?生きてたんだ!!」

「まあな。この病院で死ぬ前に

リグルはこう言った。マフィアのトップは黒澤春樹だ。教員として身を隠していたが、4日前。何者かに殺された。それで所長を殺した、俺らが睨まれてる。」

「黒澤春樹!?」

「あぁ。確かにそう言っていた。知り合いか?」

「ぁ…あ、」

言葉に出なかった。

自分が蘭に騙されて殺した相手がまさかのマフィアのボスだったのだ。恐らく蘭は私を消すため、黒澤の名前を出したようだ。

「どうした?顔色が悪いぞ。」

「私が…」

「ん?」

「私が。殺した。」

断罪のリフェクトム

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