この作品はいかがでしたか?
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「…昨日、人を殺したんだ」
「…は_?」
突如親友の口から放たれた、聞きたくも無い言葉
今は梅雨だと言うのに、傘もささず、ここに来たのだろう
ずぶ濡れで、髪からは雫が滴り、顔は涙が雨か分からない程に濡れていた
雨の音に負けない程、目の前の彼女は泣いていて、
濡れた寒さか、嗚咽か、彼女の体は酷く震えていた
「…やっぱ、思い出したくは…ないんだよなぁ、はは、笑」
こんな、こんな書き出しから始まる、あの夏の日の記憶だ_
…彼女が言うには
「殺したのは、何時も虐めてきた…あの人で…
やめてって言って…突き飛ばしたら…打ち所が、悪かったの…」
「そんな…ッ、そんなの、担任に言えば…!」
「あの子の親が…だって…ッ!」
そこで言葉を詰まらせ、彼女は泣き崩れてしまった
…暫く、時間が経って…
「大丈夫…?」
「…う、うん…ごめんね」
と、謝る彼女、どうにかしたいのに、
どうにも出来ない不甲斐なさを実感しながらも
「ううん、大丈夫だよ」
と、言うことしか出来なかった
「…でも、もうここには居られないし、どっか遠いとこで死んでくるよ」
…そう、彼女が泣き腫らした目ではにかんだ時、咄嗟に僕は
「それじゃあ、僕も連れてってよ」
と、彼女を見つめる
「なんで…ッ!?君まで巻き込む訳には…!」
勿論、君は止めようとして
「いいんだよ、僕は君の事が…」
「…なんて、?」
「…ううん、なんでもないよ、ねぇ、御願い」
僕が、粘って御願いし続けると
「…わかった…けど…」
と、渋々承諾してくれた
「有難う…それじゃあ、荷物、まとめようか」
携帯ゲームや財布を鞄に詰めて出発への支度をしている時、ふと
…彼女の鞄に、ナイフが入っている事に気付いた
「ナイフ…?」
と、思わず僕が聞くと
「うん、護身用で…!」
と、苦笑いする彼女を見ると、僕はそれ以上聞くことも出来ず、
準備が終わった
「ねぇねぇ、要らないもの、全部壊していこうよ」
と、僕が言うと
「全部?!…でも、楽しそうだね」
と、少々驚きつつも彼女は承諾してくれた
幼い頃の写真や日記とか…ちょっと躊躇っちゃう物もあった、でも
「…今は、もう要らないや」
と、君が言うから、私は、やっぱり…
近くから、サイレンのような音が聞こえた、僕達じゃないかもしれないけど…
急がないと、彼女捕まるかもしれない…
「行こう、人殺しと…あぶれ者の旅だ…!」
…そうして…そうして、僕たちは逃げ出した、この、狭い世界から
家族も、友達も全部…全て捨てて、…な君と二人だけで
「遠い、誰もいないとこで、二人で死のうよ」
こんな世界に価値なんてないんだ、だって…
「人殺しなんてそこら中に湧いてるじゃんか」
そう言うと
「うん…!」
と、嬉しそうに笑いながら泣く彼女を見て…
彼女は何も悪くないんだ…
…君は何も悪くは無いから…
コメント
1件
この書き方で私書けないから尊敬.....!!