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ほしのはな
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楽屋
「仁人〜!」
楽屋に響いたのは、勇斗の明るい声だった。
「……なに?」
ソファで台本を読んでいた仁人が顔を上げる。
「暇!」
「そう」
「冷たくない!?」
「台本読んでるから」
そう言いながらも、仁人は隣のスペースを少し空けた。
それを見逃さなかった勇斗は、満足そうに仁人の隣に座る。
「えへへ」
「なに笑ってんの」
「いや、仁人が隣空けてくれたから」
「うるさい」
口ではそう言いつつ、仁人は勇斗の方に少し身体を向けた。
その様子を、向かいのソファに座っていた太智、舜太、柔太朗の三人がじっと見ていた。
いつもの光景ではあるが、ついつい言ってしまう
「……またやってるわ」
最初に口を開いたのは太智だった。
「ほんま好きやなあ、あの二人」
「いつものことやん」
舜太も呆れたように頷く。
柔太朗に至っては、もはや何も言わずスマホを眺めていた。
そんな三人の視線など気にも留めず、勇斗は仁人の肩に頭を乗せる。
「仁人、眠い」
「寝れば?」
「ここで?」
「どこでもいいよ」
「じゃあ仁人の肩で寝る」
「それは聞いてない」
そう言いながらも、仁人は勇斗の頭を軽く撫でた。
「……ほんと甘いなあ」
太智がぼそっと呟く。
「仁人、勇斗には甘いよな」
「ほんまそれ。俺らが同じことしたら絶対怒るやん」
「だいちゃん、前に肩貸してって言って断られてたもんね」
柔太朗が淡々と付け加える。
「せやねん! なんで勇斗だけええん!?」
「だいちゃんは重いんちゃう?」
「舜太!?」
三人が小声で盛り上がっていると、
「仁人」
「ん?」
「手」
勇斗が仁人に向かって手を差し出した。
「なに?」
「繋いで」
「……子どもか」
「いいじゃん」
仁人は小さく息を吐くと、勇斗の手を取った。
「これでいい?」
「うん!」
満面の笑みを浮かべる勇斗。
仁人も少しだけ口元を緩めた。
「……かわいい」
「え?」
「なんでもない」
「今かわいいって言った?」
「言ってない」
「言ったじゃん!」
「うるさい」
勇斗が嬉しそうに仁人の腕に抱きつく。
その瞬間。
「はい、出た」
太智が天井を仰いだ。
「もう見慣れた光景やな」
「今日何回目?」
舜太がスマホの画面から目を離さずに尋ねる。
「朝から数えたら五回目くらいちゃう?」
「まだ午後やで?」
「怖いなあ」
柔太朗は呆れたように笑った。
すると、勇斗が三人の視線に気づいた。
「なに?」
「いや、別に?」
太智がにっこり笑う。
「なんか見てたじゃん」
「見てへん見てへん」
「絶対見てた!」
「勇斗くんと仁人くんが仲良しやなあって思ってただけやで」
舜太がにこにこと答える。
「そう?」
勇斗は嬉しそうに仁人を見る。
「俺ら仲良しだって!」
「はいはい」
「仁人も嬉しい?」
「別に」
「えー!」
「……まあ、嫌ではないけど」
「ほら!」
勇斗が三人に向かって得意げな顔をする。
太智、舜太、柔太朗は顔を見合わせた。
そして、ほぼ同時に。
「「「またやってるよ……」」」
三人の呆れた声が重なった。
それから数分後。
「仁人、飲み物取って」
「自分で取って」
「手繋いでるから動けない」
「離せば?」
「やだ」
「……はあ」
結局、仁人は繋いだ手を離さないまま、空いている方の手で勇斗の飲み物を取ってあげた。
「ありがとう!」
「どういたしまして」
「仁人だいすき!」
「はいはい」
その光景を見た太智は、ついに立ち上がった。
「もう俺ら別の部屋行こ」
「賛成」
「俺も行く」
三人がぞろぞろと楽屋を出ていく。
扉が閉まる直前、太智が振り返った。
「お二人さん、ごゆっくり〜!」
「ちょっと太智!」
勇斗が声を上げる。
仁人は顔色ひとつ変えずに台本へ視線を戻した。
「……ほっときな」
「仁人は恥ずかしくないの?」
「別に」
「俺はちょっと恥ずかしい」
「じゃあ離れれば?」
「それは嫌」
「どっちなの」
仁人が笑う。
勇斗もつられて笑った。
結局、三人が戻ってくるまで、二人はずっと隣同士だった。
そして戻ってきた三人は、やっぱり同じことを思うのだった。
(まだやってるよ、この二人。)
コメント
2件
チームガキがちょっぴり可哀想な気がします笑。
読ませていただきました〜!もうもう、仁人さんったら口では冷たく言うのに、隣を空けて頭撫でて手も繋いで飲み物まで取ってあげちゃう……その「嫌じゃないけど」のニュアンスがたまらないです(笑) 勇斗くんの無邪気な「だいすき!」にもってかれそうになる仁人さんのちょっとした口元の緩み、すごく良かったです。周りの三人の「またやってるよ」の空気感も含めて、このチームの関係性がじんわり伝わってくる第3話でした✨