僕は、どうしようもない人間なの
きんときが幸せそうにしてるのを見て、
羨ましい、と思ったの。
自分は、ずっと孤独で
ただ時間になるまで働く社畜。
だけど君は、
その絵が批判される前までは
沢山の人達から、称賛を貰い
自分の好きなことを仕事にできてる。
これだけでも、すごい大差だ。
それに踏まえて言うと、
君はあのホテルから
チェックアウトした後も、
前向きに、自分の考えを突き進めて
画家も辞めて、
花屋をしている。
「……、うらやましい…。」
いつもそう口にする。
君に会うといつもこうだ。
君に会う度、別れを告げた後
僕は、ずっとそうだ。
あれから数年経った今、
久々に君と出会って
花屋として働いている君を見て
綺麗な汗を流しながら、
キラキラした宝石のように笑う君を見て
僕はどうしても、
「うらやましい」
そう、ポツリと
一滴の雨のように、呟いてしまう。
ほら、見ればわかる。
どちらが、人生を満たせているかなんて
わかりやすい話だ。
「……ごめんね、きんとき。」
いつも謝る、僕が羨ましく思う度に。
こんな自分、情けない。
ポツリと、僕の嫉妬を
会う度に降らせてる。
本人には、気付かれないようにしてる。
そのつもり。
だって、こんな嫉妬がバレたら
それでこそ、記者失格だ。
他人に真相を光の下に渡してるのと同じだ。
寧ろ、
失格にしてほしいけどね。
君がくれた花の資料を見て
いつも、自分がどうしようもない人間だと
改めて思う。
いつも、嫉妬する。
その優しさに浸かっている。
今回は、カランコエっていう花だね。
素敵な花だよ、きんとき。
僕とは大違い。
「”奇跡を起こせたなら”、か……。」
そうだね。
起こせたなら、どんなによかったことか。
奇跡を起こせてるのは
___君の方だよ、きんとき。
「さて、埋めるとするか。」
僕は家に戻り、
残りの空白に花を書く。
君のくれた資料は、どれも的確で
おかげで助かってる。
僕は、人に助けられてばかりだ。
自力では何も出来ない。
ただ、真実を光の下に照らす
それだけの仕事。
僕は、ただのスポットライト係。
事件があれば、駆け付ける。
愛用のカメラ2つと、
いつもの手帳とペンを持って、
ある意味、スピーカー係かもね。
ただの情報集めのためが故に
上達してしまったトーク力も、
走りも、
書くスピードも、
暗記力も、
読解力も、推理力も、
全ては、記者としての能力だ。
「……無意味な能力。w」
記者以外で、役に立った覚えがない。
ホテルの時も、
記者として力を出しただけ。
ホントに、無意味な力だったと思う。
「……できた。」
完成した記事を見て、いつも思う。
「街は、今日も平和なんだ。」って
「…上司に渡すか。」
おっと、その前に
夕飯を食べなくちゃ。
上司は、記事を提出した瞬間
他の記事も書かせてくる。
なので、少し時間を稼いで
僕に記事を書かせないようにする。
我ながらよく考えた対策だと思う。
だが、
「……今日は何も作りたくない、」
料理の火は付かなかった。
最近はいつもこうだ。
ネガティブが多すぎるとこうなる。
いわゆる疲労困憊から連なったのだろう。
なので、最近はどうしても
「…外食するか。」
と、足を少し伸ばして
外で食べることにした。
「今回は別のところに行ってみよう。」
そう思いながら、僕は足を進めた。
気晴らしには、丁度良いだろう。
と、僕は真夜中の街を歩いた。
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