見ないうちに大きくなって…
祖母はたるんだ口で囁き、はにかんだ。
久方ぶりに帰ってきたこの地元に
私は真っ先に祖母に会いに行った。
小さい頃とはもう違う。
知識も蓄えた。
経験も蓄えた。
前回は無かったお歳暮を携えて
立派な社会人として
祖母に会いに来た。
まいちゃんは元気にしてるの?
祖母は言った。
元気です!そんな囁かな会話が私の中では
楽しかった。とても。楽しかった。
手のひらに増えたしわ。
あまりきった頬の皮。
アーチのかかったへっぴり腰。
優しい気持ちの表れた肩。
この姿を見ると時間の流れを感じる。
私も大きくなったのだと。
改めて実感する。
しかし時間は待ってくれなくて
ただひたすらに私達を置いて行く。
時間が成長をくれる事もあれば
時間が老いを与える事もある。
時間は止まらず歩みを進める。
私は止まらず歩けるだろうか。
暗い顔をしてたのか。
祖母がこちらを覗いている。
不安かい?
祖母は言った。
私は何が?と言わんばかりの顔で
首を傾げて見せた。
祖母はゆっくり腰をあげて空を指をさした。
みてみぃ。あの夕焼け空をぉ 。
キレイだろぅ、キレイだろぉ。
お天道様はねぇ、
私達を照らしてくれるが、
道まで照らしてはくれん。
道は開けるものぉ。
未知は若者ぉ。
満ちは年寄りのものぉ。
なんて言ってなぁ、考えても答えのない
答えはたくさんあるぅ。
追いかけず、気にかけず。
なるようになるぅ。
肩の荷が降りた時ぃ、
人は満ち満たされるのよぉ。
その言葉を聞き終わる前に私は泣き出してしまった、心に曇りはないのに。雨がふる。
祖母に抱きつき昔から
変わらぬエプロンに
涙をなすりつけた。
気持ちを押し付けるかのように。
泣き方も変わらんもんやねぇ。
よしよし、、。
おかき、食べるかい?
祖母の変わらぬ愛情に
私は童心に帰る。
しばらくしておかきを貪りながら
ねね!ばぁちゃん聞いてよ!
上司がね凄い嫌味ったらしいのよ!
ほぉほぉ。。そいでそいでぇ?
その話が終わった頃には
私は祖母と同じ肩をしていた。
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