テラーノベル
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治療室で目覚めたときには元の世界のことなど全部忘れて、屋敷がこの世界の全てだと思っていた。けれど、平日の昼間は私は今まで何をしていたのかと違和感を持つほど退屈だし、ロノはいつもの癖で、と朝ごはんと一緒にお弁当を渡してくれることも少なくなかった。
私ってどうやって暮らしていたんだっけ?それに両親や友達は居なかっただろうか?どこを探しても私の血縁関係にある人物を見つけることはできなかったし、街では陰口を叩かれて悪いほうだと卵や石が飛んでくるので友達など作れるはずもない。でも私には一緒に頑張ろうと励ましあったり新しいグッズの発売を知らせてくれたりする友達が居た気がする。
ある日朝ご飯の後メイクをしていつも通りに指輪を引き抜いた。
すると狭苦しい部屋の中に着信を知らせる通知が止まらないスマホが充電器に刺さったままベッドサイドに置かれていた。
『…え?』
スマホを顔認証で開くと職場や同僚からの不在着信の数々、未読のメッセージ達が通知で画面を埋め尽くしていた。そこで私はパレスと現実世界を行き来して生活していたこと、ロノが毎朝弁当を作ってくれていたのは仕事に持っていくためだったこと、平日の昼間にやることがなかったのは仕事に行っていたからだったことを思い出した。
どうしよう、かなりの期間会社に行ってないから席は残ってるのだろうか?無断欠勤を続けた訳だから飛んだと思われたりしてないだろうか?とにかくまずは電話して現状を確認しよう。でもどう言い訳しようか…そうだ、交通事故で入院していて連絡できなかったことにしよう。
とりあえず職場に連絡するとまだ席は残っていたらしいが、もっと早くに連絡をしなかったことを咎められた。とりあえず頭を打っていて意識が混濁していてそこまで考えられなかったと言い訳を並べて何とか納得してもらった。これでとりあえずこれから職場に行って…いや、先に菓子折りを買いに行ったほうがいいだろうか?私はとりあえず出かける支度をして家を飛び出した。
なんとか職場の皆に大量に買ったお菓子を配って無断欠勤していたことを上司に謝った。
溜まっていた仕事は同僚たちにやってもらっていたのでそれも重ねて謝って、できそうな仕事から任せてもらうようにした。病み上がりだから定時で上がっていいよと言われたのでありがたく退勤して、スマホを充電して指輪を嵌めた。
「主様!急に居なくなるので執事達総出で捜索にあたっていたのですよ?今までどちらにいらっしゃったんですか?」
出迎えてくれたのはナックだった。私の日記やクローゼットのどの服が無くなっているのかを確認していたらしく、部屋の中はかなり荒らされていた。
『ねぇどうして私には自分の世界があるってこと教えてくれなかったの?私はあくまで2重生活する前提でこっちに来てたんだよ?それなのにまるでこの世界しかないみたいに皆して騙して楽しかった?お陰で私は職場で腫れもの扱いだし家だって埃まみれでとても生活できない。ねぇこんな風に私を苦しめて楽しいの?私に私の世界のこと捨てさせようとするなんて酷すぎるよ。どうしてそんなことができるの?』
ナックはしばらく何と言っていいかわからない様子で口元を触っていたが、覚悟を決めたらしく口を開いた。
「私たちにとって主様は何物にも代えがたい大切な存在です。それを使い捨ての労働者として使い潰す世界に帰したいと思うでしょうか?私たちはただ主様が幸せに暮らせるようにと全力を尽くしました。それを騙していたと受け取られるのは甚だ遺憾です」
そして私の腕を掴んでベッドに引き摺って行く。
『何するの!?離して!!』
しかしナックは手を離そうとせず、ベッドに私を突き飛ばした。
「私たちがどれほど主様を思っているか…その身をもって分かっていただきましょうか」
ベッドの上に靴も脱がずに座っている私に眼鏡を外して懐に入れながら近づいてくるナック。私はここに居ては危険だと判断して指輪を外そうとした。
「逃げられるとでも思ってんのか?」
ナックとは思えないほど低くて冷たい声がした瞬間、指輪を嵌めている手を痛いほど強く掴まれて押し倒される。
「もう二度と逃げようと思えないくらい分からせてやるよ。俺達がどんなにアンタを大切に思っているか、どんなに元の世界に帰したくないと思っているか…」
片手で顎を掴まれて無理矢理唇を合わせられ、舌が私の口内に入ってくる。しかも噛み切られないように親指を奥歯に噛ませて私の口内を荒らしていく。
どうにかナックの舌を追い出そうと舌で押し返しても舌を絡め取られて愛撫される。
いつの間にか酸欠になってぼんやりとナックの愛撫を受け入れるようになってしまった。ナックは楽しそうに笑って私のスーツに手をかけて脱がしていく。その間も深いキスは続いていて、ナックは器用だなとぼんやり考えていた。
前開きのスーツとブラウスは全てボタンが外されて下着が空気に晒される。それも背中に回ってきた片手でホックを簡単に外されて締め付けが無くなった。
ナックはキスを止めて一度私から離れる。
「それではそろそろ本番に行きましょうか」
本番…その意味を認識した瞬間私はナックを押し退け指輪に手をかける。が、指には指輪を固定する器具が嵌められていた。いつの間に!?と私が驚いている間にナックはスカートのホックを外してファスナーを下ろし、ストッキングとショーツを同時に脱がしてくる。
バタバタと私が暴れるとそれを逆手に取られて丸裸にされてしまった。
「言ったでしょう?その体に分からせると…こんな私が主様を汚してしまうのは気が引けますが、他の執事に譲るというには惜しくて…申し訳ありません」
鍵の束をベッドサイドに置いて、ナックが私の足を開かせる。私は望んだわけでもないのにキスをされて濡れた下の口を見せるのが恥ずかしくて抵抗するが、簡単に押さえ込まれて秘部をナックの目に晒すことになった。
「ふふ、私とのキスで感じてくださったのですね。光栄です」
『やだ…見ないで…』
嬉しそうに微笑むナックが怖い。これからどう動くか見えないし、私がどう動いても押さえ込まれて好き放題されるのは目に見えている。私はていこうを諦めてナックが飽きるまで好きにさせるほうが賢明かと判断して身体の力を抜いた。
「おや、もう抵抗なさらないんですね?レイプはしたくなかったので喜ばしい限りですが…何か言いたいことがあるようですね?」
聡いナックには私の考えていることなどお見通しのようだ。私はナックを睨みつけて宣言する。
『私は何をされても屈しないよ。こっちの世界に縛り付けたいみたいだけど、私は絶対にあっちの世界を捨てないから。確かに仕事のストレスとか人間関係の悩みはあるよ。でもそれを乗り越えてこそ幸せになれるって信じてるから』
「そうですか。主様のお考えは分かりました。ですが私は主様をこちらの世界に留めることを諦めません。どんな方法を使ってでも引き留めて見せましょう」
ナックは自信ありげにそう宣言して私の秘裂に指を這わせる。手袋越しにしとどに濡れたそこをゆっくりとなぞっていく。蜜口から溢れ出した愛液を掬って陰核に擦り付ける。それだけで私は腰を震わせた。
「感度は良いようですね…こういった行為のご経験は?」
『言う訳ないでしょ』
「まぁ主様が初めてであろうがなかろうが、最後を頂くのはこの私なので気にしませんよ。主様が気持ちよくなってくださればそれだけで嬉しいですから」
ナックの発言に引っ掛かりはあるけれど、とりあえず今の行為が終わることだけが最優先だ。
とにかく早く満足してもらって開放してもらわねば仕事も家の管理もままならない。
早く行為を終わらせる気はなさそうなナックに溜息を吐いて、私は只管私の感じるところを探って指を動かすナックの与えてくれる快楽を享受した。
「…そろそろよろしいでしょうか?」
『やっと?何時間愛撫したの?飽きないの?』
悪戯な指に何度も絶頂させられ、ナックの手袋を愛液と潮でぐっしょりと濡らした頃、ようやくナックが満足して手袋を外してズボンに手をかけた。
私の言葉には返事をせず、いきり立ったペニスを取り出す。
顔に似合わず大きくカリ高なペニスを見て、ナックの体力的に何回くらいするんだろうかと考える。終わるまで私は持つんだろうか?いや、持つとは思えない。だってもう何度も絶頂させられ潮も吹かされた。それにもともとの体力にも差がありすぎる。多分私が気絶しても揺さぶり続けるであろう未来を想像してげんなりする。どこまで勝手にしたら気が済むんだろうこの男は。
私が半ば諦めつつナックを受け入れると、ナックは私を抱きしめてまるで恋人同士が愛し合うようにキスをしながら行為を始める。奥まで挿れられて気持ちいいところを突き上げつつ擦れ合う感触に感じて啼くと嬉しそうに笑ってそこを重点的に責めてくる。
早く終わってくれ。それだけを願いながら私はただ啼き狂うことしかできなかった。
意識を失って気が付いたらベッドサイドにもりこぼれるほどの貴金属や宝石の山ができていた。
『な、なにこれ…』
妙にすっきりした身体と重い腰とに困惑しつつ状況を確認していると、ナックが軽食を持ってやってきた。
「執事達の総意です。主様はお仕事などせずとも生活できるほどの資金があれば働かなくて済むのでしょう?それならば私どもで主様の生活を支えます。足りなければいくらでもお金でも宝石でも貴金属でも積みましょう。そうすれば主様はこちらに留まってくださるでしょう?」
その言葉に私は愕然とする。執事達18人が貯めていた金で買ってきたであろう貴金属と宝石の山に無言の圧を感じて震える。
皆私に働かないで屋敷に居てほしいと思っているということ?
私の自立した社会人としての暮らしと人間関係を捨てろと言うの?
今まで頑張って積み上げてきたものがこの状況で全て壊されてしまった。私はもう働くことも許されず一生買い殺される。その未来を想像して私は更に札束をベッドの上に重ね始めたナックを見ながら涙を流すことしかできなかった。
コメント
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第9話読み終えました…🤍🥀 記憶が戻ってからの現実と屋敷のギャップ、ナックの豹変、どれも心臓が締め付けられるようでした。「逃げられるとでも思ってんのか?」の低い声、ゾッとすると同時にナックの必死さも伝わってきて複雑です。愛ゆえの独占が暴力に変わる瞬間、MAKOさんは本当に繊細に描くんだなって思いました。主人公の“絶対に屈しない”宣言、すごく強くて好きです。続き、静かに待ってますね🌙