蘭江戸
露家日本家の女様のテラリレです。
平和な日常系を書きたかったのに気がついたら儚い日常系になってました。いつの間に?
それもまた一興。はい。
今回は語彙力と私の知識を少し入れてみました。
読みにくいところや知識のズレがあったら申し訳ない。
最初は英吉利。
次に西班牙。
その後は葡萄牙。
どいつもこいつも気持ち悪かった。
「……鎖国?」
「あぁ。いつまでかは決めてないがなぁ。」
「……ふ〜ん。なんでそんなことやるんだ?」
「…………さぁな。」
理由なんてこいつも知ってる癖に。
キリスト教、野蛮人、マナー、奴隷、誘拐……数えるだけで反吐が出る。
「そっか。で、俺も締め出される感じ?」
「知らん。態度次第なんじゃねぇかな。」
「………俺、もっと優しい言葉遣いする人の方が好きなんだけど。」
「…はァ? なんだぁ、突拍子もない。これが俺だ。」
「最悪なんだけど〜。俺の為にちょっと変えてみようとか思わないわけ? 見てみたいな〜、優しい笑顔で柔らかい江戸。」
「………はぁ。何故俺がお前の為にそんなことしなければならん。」
「ふふ、もしそうしてくれるなら……あぁそうだ。君の安全を保証してあげるよ!」
「……?」
「他の欧州の動向、鎖国するなら分からないよね? 清も朝鮮も鎖国してるんだろう?」
「……まぁ、そうだが。」
「で、江戸に他国があまり関心を持たないように仕向けてあげる。それだけで効果的だろう?」
「……うむ。」
「美味しいものも、甘いものも、学問も、世界動向も。全部ぜ〜んぶ、俺が江戸に輸入するんだ。」
「…その話だと、お前にメリットが…。」
「江戸と唯一交友を持つことを許可された欧州の国。これだけで俺は充分だよ。」
「…。」
「スペインにもポルトガルにも自慢できるしね!」
「…それが狙いか……。」
「いやいや、だってあいつら江戸のこと大好きだったじゃん。」
「言うな気持ち悪い。あの2人は知らんが、俺は大っ嫌いだ。」
「で、俺は?」
「……………。」
「黙秘? 酷いなぁ。まぁいいけど。でもさ、賢ぉ〜い江戸ならもう分かってると思うけど、これらの事をして欲しいなら…俺と今後も交流を持つことが必須となる。」
「…………………………。」
「安心してくれ、キリスト教の布教はしないし、日本人を攫ったりなど論外だ。ただのお商売。良いだろう?」
「………知らん。好きにしろ。」
「やったね! あ、じゃあ柔らかい江戸になってね? これも必須。」
「…はぁ。」
この会話をはじめに、俺……いや、僕と阿蘭陀の奇妙な関係が始まった。
「何これ。動きづらいんだけど。」
「しばらく僕のところに泊まるんだろう? 着てた服は汚いから洗う。素っ裸でいるわけでもなかろう。」
「確かにそうだけども、まだあの服は着れるぞ。」
「…お前のところには風呂に入る習慣がないと聞いている。ただでさえ汚いのに、着衣している服も汚かったら流石に僕近づけない。」
「急に幼くなっちゃった。てか、守ってるじゃん、俺との約束。優しくなるってやつ。」
「……情報が入らないのは困るからな。」
「…はは、俺の武器は情報だからね。で、この服は一体なんなのさ。」
「衣冠。」
「……はぁ!?!? もっと動きやすいやつあっただろ!?!? っ、しかもコレ有位者しか着ちゃダメなやつ!!!」
「おぉ、良く知っておるな。」
「他のやつ!! せめて他の服!!!!!」
「………ならば、コレとかはどうか?」
_人人人人人人_
> 狩衣 <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y ̄
「それも動きにくいやつ!!!」
「そうか? わがままだなぁ。」
「どこが!? とにかく、別のやつ!!」
_人人人人人人_
> 衣布 <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y ̄
「流石にバカにしてるでしょ。動きやすいって知ってる? お酒飲んじゃったのかな?」
「まさか。これでもシラフだよ。」
「俺お前が怖いよ。平和そうな顔して処刑とか日常茶飯事だし。」
「話の方向が変わったな。」
「……はぁ、動きやすくてフォーマルなやつ頂戴。」
「ふぉーまる……? 布一枚でいいのか?」
「0か100しか無いの? あの頭のいい計算方法を教えてくれた江戸は何処にいっちゃったんだ?」
「これとか。」
「話聞いて?」
_人人人人人人_
> 素襖 <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y ̄
「これ俺が着て良いものじゃない。位の高い武士しか着ないやつ。」
「絶対面白いと思うぞ、君が着れば。」
「……………。もういい、あの服貸して。襠高小袴。」
「えー。」
「えーじゃない。金平糖あげないよ?」
「今すぐ持ってくるね! 3秒ほど待ってて!」
「………甘いもの大好きすぎるだろ。」
「何作ってるの? 江戸。」
「ん? あぁ、これかい。何、ただのお煎餅だよ。」
「へ〜、美味しそうじゃん。」
「僕は醤油派だけど、食べてみる?」
「いいの? やったぁ。で、いくら?」
「金50。」
「お前それがどれぐらいの価値か知ってる? クソ高いぞ。」
「僕のところでは君の国ほど高くないもんで。」
「……黄金の国、ジパング………。」
「やめてくれ、あれはただの勘違いだ。」
「ねね、タダでいいよな?」
「僕の料理には価値がないと?」
「めんどくさっ、この前ちっちゃい水牛あげたじゃん。」
「……醤油も上手いが、塩もなかなかだぞ。両方食べるかい?」
「いただくよ、ありがとう!」
「この商売上手が。」
「何か言った?」
「いいや、和菓子もつけてあげようと言ったのだ。」
「え〜うれし〜!」
「………………………。」
「………いらっしゃい。」
「あ、港まで迎えに来てくれたの? わざわざありがとう。」
「いいや、気分だったからね。……元気そうで安心したよ。」
「うん? うん、俺は元気だけど…。あ、旗立てなくちゃ。」
「……阿蘭陀。今日は花火があるんだ、少し遠いが見ていかないか?」
「おぉ、久しぶりだね、花火。もちろん行かせてもらうよ。」
「…そうかい。まだ時間もあるし、僕の家に行こうか。輸入品も見たいしね。」
「了解〜。今回は外の情報は少なめだけどいいか?」
「構わないよ。感謝する。」
他国から、阿蘭陀が仏蘭西に占領されていると聞いた。僕に察されないように必死みたいだが、外傷は目立ってないだけ良かった。僕に出来ることは無かろうと、元気付けることぐらいはしてやろうではないか。
当時、フランス領となっていたオランダ。日本は、オランダ国旗が立てられていた唯一の国であり、場所だったのだ。
「……もしかして、バレちゃってたのかなぁ。不安にさせたくないだけなのに、変に気を使わせちゃったかも。」
「……やば、江戸の優しさに惚れそうなんだけど。」
「何だこれ。ぐろっ。」
「ストレートな言葉だね……。解体書だよ、人体のね。」
「……全部阿蘭陀語だが、これを僕が翻訳しろと?」
「流石に日本語では書けなかったんだよ、ごめんね。」
「……まぁいい。感謝しよう。」
「んふふ、そうだよ感謝してよね。」
「最悪。」
「顔がガチなんだけど……………。」
「ぎゃーー!!!! かわいーーー!!!!!」
「…………嬉しくないんだけど。」
「やっぱ花魁っていいね!! 似合ってるよ!!」
「一応僕男なんだけど。」
「顔は女みたいなものでしょ、やばいエロい。」
「本当に君さ。」
「え、抱いていい?」
「金500。僕は高いぞ。」
「流石に破産するわ。」
「…………あつい、脱ぐ。」
「え、俺のために?」
「着替えるだけだわ! ………まったく、やるならやるで雰囲気をもっと大切にだな……。」
「…………えっ。」
「…………なんだ、その顔は。」
「やること自体は良いの? ………俺、本気にしちゃうよ?」
「…別に、初めから嫌とは言ってなかろう。」
「…………………えっ、と………。」
「………///」
「………あ、あはは、今日はなんだか暑いな〜!//」
「そ、そうだね、さっさと着替えてくるな。」
「う、うん!」
「…………はっず。」
「わぁぁぁ!? ちょ、江戸!? どうしたの!? なんで血まみれ!?!?」
「落ち着いて。ただ一揆の鎮静に向かっただけだよ。最近多くてね。」
「そっか、怪我は…あぁ、それ全部返り血か。大変だな………。」
「最近米の値段が高くなってな。まぁ今はそんなことはいい、今回は何を持ってきてくれたんだ?」
「……待って待って、そんなキラキラした目で見るなよ。家で紹介するよ、こんな外だと人目に晒されて大変だろう?」
「確かに。よし、全速力で帰るぞ〜!」
「現金………。」
「…あ、あそこの団子屋だけ寄ってもいい?」
「別に構わないよ、ていうか江戸が早く帰りたいだけだし。」
「……うるさいやい。お姉さん、団子10個ちょうだい〜!」
「あいよ〜。」
「…10!? 多くない!?」
「? 2つは君の分だよ?」
「それでも多いよ!? ありがとね!?」
「あ、あっちで処刑やってる。ついでに見にいく?」
「…そんな好き好んで見るものじゃないでしょ。」
「そう? 結構見せ物感覚だけど。」
「そんな動物園みたいに……そういえばイギリスが人間の動物園を作ったとかなんとか言ってたな。」
「……なんだソレ、悪趣味極まりない。」
「だよな。でも、それがアイツだから。」
「………お外怖い。」
「あらら。」
少しずつ、同じ時間を重ねていく。
「……今日は月が綺麗だな。」
「あぁ、雨が降ったからじゃないかい? 空気が澄んでいるんだ。」
「…もう、もっとロマンチックにいこうよ。あ、水ありがとう。」
「別にいいよ。僕が飲みたかっただけだし。
で、ろまん……? すまない、なんて?」
「……はぁ。こんなに綺麗な日は踊りたくなるね。」
「意味がよく分からないんだけど。」
「いいの〜。」
「……兎が餅をついている、薬を混ぜている、いろいろ言われているが……。」
「あぁ、それね。可愛い表現だよね。」
「僕はあんまり共感できないな。ただの模様にしかすぎないように感じる。」
「……やっぱり現実主義者だよね、江戸って。」
「よく言われる。あ、座敷童子の分の水を忘れた。」
「ちょっと前言撤回。」
「?」
1年。
5年。
10年。
30年。
100年。
お互いを重ねる時間の終わりを、彼らは知らない。
「阿蘭陀殿。」
「阿蘭陀さん。」
「阿蘭陀。」
「蘭ちゃん。」
「江戸幕府様。」
「江戸幕府。」
「江戸さん。」
「江戸。」
重ねた時間は、2人だけの秘密となる。
「あんこぉ…? てやつ、甘すぎない?」
「いや、街中綺麗すぎ。衛生面最高じゃん。」
「みんな優しいな、日本人って。」
「お風呂入るの多すぎない!? だから江戸っていい匂いするんだ…。」
「綺麗好きすぎ。箸は難しいし、お前もスプーン使えば良いのに。……はは、ごめんって。」
「日本刀切れ味良すぎじゃない? え、昔はこれで首切ってたの? こわっ!」
「……ちょ、お前めんどくさいよ。1番偉いやつの返事寄越せって……俺じゃダメ?」
「ねぇ、案外俺さ…江戸のこと気に入ってるんだよ?」
「はは、知ってるよ。」
「……そっか。そうだよな。」
「僕も君のことは好いてるしね。」
「…………あ”〜……駄目、今江戸への愛を叫びそうになった。」
「ただの不審者じゃんか。」
「もっと照れてもよくない!?」
重ね続くるほどは永久とも思はれく。
かれこれ水面といふ名の心は煌めくことのほかに知らず、常にかたみの差す光を欲したるなり。
コメント
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蘭江戸が最初の正式名称呼びから徐々に親しげな呼び方になっていくのに時の流れを感じる… どんだけお前達一緒にいるんだよおおおおおおおおおおおお そして、この後米が来て無理矢理蘭江戸は引き裂かれてしまってそのまま江戸が薩摩に倒幕されてしまうのでもう会うことは無いんですよね…蘭江戸悲恋が似合いすぎてもう無理先を想像して勝手に涙腺崩壊してますうわああああああああぁぁぁ
分かりやすい古文ではありますが、一応現代語訳置いておきます。 「重ねていく時間は永久のように思える。彼らの水面という名の心中は煌めくことしか知らず、常にお互いの差し込む光を欲している。」 まぁちょっと日本語おかしいところはありますが、こんな感じです。ふーん、ぐらいに思っといて下さい。これでも一応日本語が母語なんです。自分でもこの語彙の無さには驚いてます。軽くホラー。