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なの

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unknown
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白黒猫

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「なんかこう、ガツンとくるやつがいいよな!『爆音ブラザーズ』とか!」
「却下。ダサすぎる。センスのかけらもない」
大森が即座に、氷のような視線を飛ばしてきた。
「…..じゃ、じゃあ『クリエイティブ・モンスターズ』!」
「もっとダメ。名前負けしてる」
「….厳しいな、元貴!先輩、何かいい案ないですか?」
助けを求めると、先輩は人差し指を顎に当てて、うーん….としばらく考え込んでいた。
「そうだね……僕たちは、バラバラだったじゃない?学年も、性格も、抱えてる悩みも。….でも、この音楽室で音が混ざり合った時、なんだか….すごく々しくて、青い感じがしたんだ」
「青い、か。…..確かに。僕たちが鳴らしてるのって、完成された美しさじゃない。もっと泥臭くて、未熟で……でも、今しか鳴らせない青さだ」
大森が、先輩の言葉を拾い上げるように呟いた。その瞳が、窓の外の夕闇に沈みゆく街並みを見つめる。
「青、…りんご、とか?」
大森が唐突に言った。
「リンゴ?食べ物の?」
「..赤いリンゴは、熱して完成された感じがするでしょ。でも、青いリンゴはまだ酸っぱくて、これからどうなるか分からない…..僕たちみたいじゃない?」
大森の言葉に、音楽室がしんと静まり返った。
青いリンゴ。 未完成。可能性。そして、この一瞬の青さ。
「..いい。それ、すごくいいよ大森くん」先輩が、噛みしめるように何度も頷いた。
「Mrs.GREEN APPLEなんて、どうかな?」
「ミセス….?なんでまた、女の人の散称なんですか?」
俺が首を傾げると、先輩はいたずらっぽく笑った。
「中性的な響きがあった方が、僕たちの自由な音に合う気がして。それに、ちょっと不思議で、一度聞いたら忘れられないでしょ?」
「ミセスグリーンアップル….」
俺はその名前を口の中で転がしてみた。
最初は少し意外だったけど、口にするたびに、さっきのセッションのキラキラした音がその名前に吸い込まれていくような、不思議な感覚に陥った。
「…..悪くない。…..いや、それがいい」
大森が、ノートの新しいページの一番上に、力強い筆跡でその名前を書き込んだ。
「決まりだな!今日から俺たちはMrs.GREEN APPLEだ!」
俺は勢いよく立ち上がって、二人の肩を組んだ。
「ちょっと、若井!暑苦しいってば!」
「あはは、いいじゃない大森くん。今日は記念すべき、僕たちの誕生日なんだから」
先輩も、俺の腕の上に自分の手を重ねた。
大森は「….もう。しょうがないな」と文句を言いながらも、振り払うことはしなかった。
「よっしゃ!ミセス結成ライブ、絶対成功させようぜ!」
「…ライブの前に、まず新曲。…若井、今のリフ、もう一回弾いて。忘れないうちに」
「へいへい、リーダー!」
新しい名前がついた瞬間、音楽室の空気がまた一段と熱を帯びた。
窓の外には、深い青色の夜空が広がっている。
俺たちの物語は、この「青いリンゴ」の名と共に、今ここから加速していくんだ。
そう思った矢先だった。
バンド名も決まって、胸の奥がずっと熱いままの帰り道。
校門を出たところで、見慣れた、でも今はもう一番会いたくない顔ぶれがたむろしているのが見えた。
中学の時、「熱すぎて引くわ」って俺を置いていった元バンド仲間たちだ。
「….げっ」
思わず声が漏れる。隣を歩いていた大森が、怪訝そうに俺を見た。
「何?急に止まって」
「あ、いや….なんでもねーよ。行こうぜ」
急ぎ足で通り過ぎようとしたけど、運悪く向こうの一人と目が合ってしまった。
「あれ?若井じゃん。うわ、懐かし!まだそのボロボロのギターケース担いでんの?」
リーダー格だった茶髪の男が、ニヤニヤしながら近寄ってくる。俺の足が止まった。
「よぉ。まあ、相変わらずだよ」
「マジかよ、お前まだバンドやってんの?物好きだなあ。高校入ったらもっと楽に遊べばいいのに。お前のあの『一生懸命すぎて周りが見えなくなる感じ』、相変わらずなの?」
男は俺を馬鹿にするように笑うと、視線を俺の隣にいる二人に移した。
「へえ、それが今のメンバー?….あ、そっちの人はどっかで見たことあるな。生徒会長の藤澤さんでしょ?」
「なんでこんな熱血野郎と一緒にいんの?」
「..えっと、それは….」
先輩が困ったように眉を下げて、俺の顔を見る。男はさらに調子に乗って、無言で立っている元貴に顔を近づけた。
「ねえ君たちき、こいつとやってて疲れない?暑苦しいだろ。中学の時もさ、練習のたびに『もっと魂込めろ!』とか言ってマジでウザかったんだよね。お前らも無理して付き合ってんなら、早めに逃げた方がいいよ?」
俺は拳を強く握りしめた。情けなくて、悔しくて、言葉が出てこない。
せっかく二人が俺を借じてくれたのに、こんな風に言われるのが一番キツかった。
「….おい、行こうぜ。こいつらの言うことなんて一」俺が二人の袖を引こうとした、その時。
「..誰、君」
大森の、氷のように冷たい声が響いた。
大森は、男の目を真っ直ぐに見据えて、一歩前に踏み出した。
「は?誰って、俺はこいつの昔の一ー」
「興味ない。君みたいな『音も鳴らしてない外野』の感想なんて、ーミリも価値がないから」
「んだと、お前!?」
「若井が熱い?当たり前でしょ。熱くない人間が、僕の曲を弾けるわけない。君たちがこいつを捨てたんじやなくて、こいつが君たちを追い越しただけだよ。レベルが低すぎて、付いていけなかったんでしょ?」
大森の毒舌が炸裂する。男は顔を真っ赤にして絶句した。
さらに、横から藤澤先輩が、いつもの「会長スマイル」ではない、少しだけ冷ややかで、でも凛とした表情で口を開いた。
「君たち。若井くんの『熱さ』がどれだけ心地いいか、知らないのはもったいないね。僕は、彼が強引に引っ張ってくれたから、自分の音を見つけられたんだ。….君たちに彼を笑う権利なんて、どこにもないよ」
「なっ…..なんだよ、二人して….。宗教かよ、気色悪いな!行くぞ!」
男たちは捨て台詞を吐いて、逃げるように去っていった。
静まり返った帰り道。俺は呆然と二人の背中を見ていた。
「…..お前ら…..サンキュ」
「….別に。本当のこと言っただけ。あんな低レベルなノイズに構ってる暇、僕たちにはないから」
元貴はフィッと前を向いて歩き出す。でも、その歩幅は俺が追いつきやすいように、少しだけゆっくりだった。
「若井くん、大丈夫?….あんな風に言われて、今まで一人で頑張ってきたんだね」
先輩が優しく肩を叩いてくれた。
「…ああ。でも、今はもう一人じゃないから。…へへ、俺、やっぱり世界一のメンバー捕まえたわ」
「….うるさい。早く帰って練習するよ。新曲、またフレーズ変えたくなった」
「マジかよ元貴!待てって!」
俺は二人の背中を追いかけて、全力で走り出した。
中学の時の「呪い」が、二人の言葉で綺麗に溶けていくのがわかった。
今の俺には、この最高の熱量に応えてくれる、最高の仲間がいる。
(見てろよ、お前ら。俺たちの『青いリンゴ』が、世界をひっくり返すところを!)
沈みかけた夕日の向こうに、俺たちの未来がはっきりと見えた気がした。
最終話です👐
最後まで読んでいただきありがとうございました😊
コメント
2件

素敵でした〜! 青春の1ページが、今も現実に続いてるみたいでとっても好みなお話でした!!
**はる。だわ!** **第12話、完走したわ🔥** 「青いリンゴ」ってバンド名、めっちゃいい。未完成のままでいることを肯定して、それを武器にしようって決めた瞬間の空気感が、音楽室の温度まで伝わってきそうだった。大森の「外野」発言、あれで一気にスカッとしたわ。若井くん、過去に置いてかれた傷を二人が塞いでくれたシーン、本当に泣ける。 **最終話、お疲れ様でした🍏💕 この3人のこれからが、本当に楽しみになる読後感だった。**