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「お待たせいたしました、こちら猪の肉料理になります」
打ち上げの途中、店員さんが猪料理を持ってきてくれた。
これは今日の獲物、暴れ猪のお肉で作った料理だ。
「おー、美味しそうですね!」
「あの見てくれからは想像できませんが……、確かに美味しそうですね」
エミリアさんとルークが、それぞれ感想を言う。
「あの暴れ猪、見た目は凄い凶暴な感じでしたもんね。あれのお肉がこうなるとは……。
早速、頂いてみましょう」
「それじゃ僕も遠慮なく♪」
四人それぞれお皿に取り、タイミングを合わせて口に運ぶ。
「おぉー、こういう味ですか。昔食べたのより美味しいなぁ」
「これこれ、これが猪ですよ! わーい、美味しいですー」
「少し野性味のある感じが良いですね」
「ふむ、これは精がつきそうだねぇ♪」
同じ料理でも、感想が少しずつ違うのは面白い。
でも結局は美味しいってことだよね、ジェラード以外は。
「ふむふむ、こっちのサラダと一緒に食べるとまた良い感じですね」
「バランス良く食べると美味しいですよね。舌のリセットもしていかないと」
「……というと、こっちのスープも良いですね。はぁ、しあわせー」
「そうですよ、アイナさん!
食事というのは、やっぱり人間の基本だと思うんです」
「分かります! 美味しいものをたくさん食べるとしあわせですよね。
……実は私、大食いの人って苦手だったんですけど、エミリアさんのおかげでその認識も変わったんですよ」
「え?」
「エミリアさんってたくさん食べるけど、美味しく食べるのが前提じゃないですか。
私の知ってる大食いって、量を食べることが目的になってる場合が多かったので」
「そ、それは褒めてるんですか?」
「もちろんですよ。見ていてしあわせになりますもん」
「ふえぇ~……。
わたしが男性だったら、このままアイナさんをお嫁さんにもらいたかったですーっ!」
「エミリアちゃん、その場合はルーク君を倒さなきゃいけないよ?」
「わたしの愛はルークさんには負けま――
……あ、いや。同じくらいだと思ってますので大丈夫です!」
「あはは、勝ってはいないんだ?」
「ジェラードさん! ルークさんのアイナさん愛を馬鹿にしてはいけません!」
「エミリアさん……何を言ってるんですか……」
突然の不思議な流れに、ルークも困り顔だ。
私はネタにされるのも案外嫌いじゃないから、こういう流れも純粋に楽しいんだけど。
「まぁまぁ。
みんなのおかげで旅も上手くいってますし、いつも本当にありがとうございます」
「あはは、アイナちゃんまでどうしたの? でも、僕も楽しませてもらってるし――」
「わたしたちも楽しんでますよ! ね、ルークさん!」
「ええ、もちろんです」
「えへ、打ち上げっていうことなので、たまには改まるのも良いかなと思いまして。
それにメルタテオスでの目的も果たしましたし、次は王都に向かうことを考えないとですね」
「そうですねー。それにしても、案外早く終わりましたよね」
「はい、特にジェラードさんが頑張ってくれましたから」
「この調子で王都でも頑張るよー♪
ところでさ、メルタテオスはいつ発つの?」
「明日はさすがに急すぎるので、明後日くらいはどうかなって考えてます。
また1週間、馬車での移動になりますからね。やり残したことが無いか、改めて確認しないと」
「今回は挨拶まわりに行くような方もいませんし、それは楽ですね」
「そういった意味では、少し寂しいかも?」
「ところでアイナさん、ガルルン教の展示スペースはあのままにするんですか?」
エミリアさんが思い立ったように、ガルルン教の話を始めた。
あれもあんまり後先のことを考えないで作っちゃったから、どうしようかなぁ……。
「うーん……。特に何も考えてませんね」
「わたし、髪がふっさふっさになった教祖さんのこれからに興味があるんですけど……。
何か神託を下していった方が良くないですか?」
「えぇ? 神託って……」
「ほら、ガルルンの聖地も復興のために大変な時期ですし。
メルタテオスで慈善事業をやっているくらいなら、そちらを手伝ってもらったりとか」
ガルルンの聖地……っていうのは、つまりガルーナ村のことだよね。
「ふむぅ……。エミリアさん、それは信仰心を利用しているような感じがしますよ?
なかなか良い案かもしれませんけど」
「疫病で寂れてしまった村を救う……神託としては特に違和感は無いかと思います!
それにほとんどの宗教って、信仰心を利用しているものかと思いますし」
「えぇ……? エミリアさんがそういうこと言っちゃって良いんですか?」
「いやですね、アイナさん。
もちろんルーンセラフィス教は違いますから!」
あ、なるほど。
自分のところ以外は……っていうことね。
「それじゃまた袖の下を渡して、教祖さんが来たら信託のお手紙でも渡すようにしましょうかね……?
エミリアさん、また代筆をお願いしても良いですか?」
「はい、もちろんです。
神託の手紙を書けるなんて、聖職者冥利に尽きますね!」
「いやいやエミリアさん。他宗教だし、そもそもガルルン教は創作宗教ですよ?」
「それでも、貴重な経験をありがとうございます!」
「あはは、それじゃ明日にお願いしますね。
そうしたらガルーナ村の村長とセシリアちゃんにも話を通しておかないといけないかな?
村の特産品にしようとしてたものが、何やら急に御神体になってしまうわけですし」
「知らない人から見れば、驚きの展開ですよね」
「作った本人も驚きですけどね!」
実際、完全にその場のノリで作ったからね。
何であんなことをしたのか……という思いも、この時点で少なからずあったりして。
「でも、わたしがあの施設を案内したことが発端になったと考えると、感動もひとしおです!」
「ああ、確かにそうですね。エミリアさんは創立者の一人って感じですし……。
それではエミリアさんを、ガルルン教の枢機卿に任命いたします!」
「やったー! 辞退しますー!」
「えーっ」
速攻で辞退された!
「わたしはルーンセラフィス教に生きるので! その誓いは、わたしの前提なんですよ!」
「エミリアさんは、こと宗教に関しては一本筋が通っていますからね。
……仕方ない、ここは諦めましょう」
「ありがとうございます。
この誓いが無ければ、わたしはずっとアイナさんの旅に付いていきたいんですけど!」
「あ……そうか。エミリアちゃんって、王都までなんだったっけ?
アイナちゃんのお供はルーク君とエミリアちゃんでばっちりハマってるから、それは凄く残念だなぁ……」
「そうなんですよー!
それか、アイナさんがルーンセラフィス教に入って頂ければ良いのですが」
「うーん、信徒ならともかく……。お抱えのプリーストとか錬金術師はやっぱり抵抗がありますね。
私はまだまだ旅を続けるわけですし」
「ふむぅ……。王都に戻ったら、そこを踏まえて上と相談してみます!」
「いやいや、無理はなさらず……」
「ところで王都に着いたら、エミリアちゃんとはすぐに別れちゃう感じなの?」
「あ、いえ。
今のところ、私たちが王都を発つまではご一緒する予定です。ね、エミリアさん」
「はい! そこは何とか許可をもらおうと考えています!
もらえなければ、長期休暇を取ってでも……!」
「私もエミリアさんとはできるだけ一緒にいたいですけど、将来的に不利になるような選択はしないでくださいね……?」
「大丈夫です! たぶん」
「心配だなぁ……」
そのまま1時間ほど盛り上がったあと、眠くなってきたところで打ち上げは終了。
いつもみたいに雑談で終始するのも良いけど、目標を達成したあとの打ち上げっていうのも格別なものだよね。
また何か目標を達成したときは、ぜひ開催することにしよう。
次は王都で――
……うん、何を達成したあとなのかは分からないけど、それを想像してみるのも面白いなぁ。