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90度に上半身を倒してから、我が探偵社の要である方に、その供物を捧げる。
「乱歩さん、どうぞ!!ラムネです!!」
珍しく人のいない静かな探偵社では、僕の声は格別に大きく響いたように思えた。
「ふぅん、敦にしては気が効くじゃあないか!」
で、この名探偵に何を所望かな〜?、と弾む声とは別に、閉じていた片方の目で先を見据えてから歯を見せてニッと笑っている。
勢い任せにここまで行動をしたのはいいが、相談するとなると、とても緊張して口が重たく感じてくる…うぅ…もう言ってしまおう…!
「えっと、ですね…!!じ、実は…、僕太宰さんのことが好きで…!!でも、恋愛なんて孤児院では経験した事がないので、何処から始めれば善いのか分からなくて……っ」
「えっ?」
あれ…先程まで乱歩さんのお気に召す物を当てられて探偵に一歩近付けた!と仄かに喜びを感じていたけど、今度は外れたみたいだ。
てっきり、乱歩さんなら超推理で分かっているのかと思ってたけど……乱歩さんの素っ頓狂といった声から考えると、知らなさそう…?
暫くすれば、まだ少し戸惑いの気配を感じつつも、普段の乱歩さんに戻っていた。
「…で、恋の助言を僕にしてほしいと?」
「はい!」
「世界一の名探偵なのに?」
「は、はい…」
言われて気付いたが、確かに名探偵に恋の助言を貰うなど変なものだ…、確りと考えてから言えば善かったかも。
「すみません…」
「__まあ、同僚が困っていれば助けてあげないと社長に怒られるからね、特別だよ」
「ほっ本当ですか!?ありがとうございます!」
「僕も恋愛なんて分からないけどさ、国木田に頼んで仕事に同行させてもらえば?」
「えっ?!でっでも太宰さんのサボり癖はどうすれば…?」
「そんなの僕が知るわけないじゃん、国木田が怒るでしょ」
「えっ、えぇ…?」
「兎に角!僕は知らないから、じゃあね」
「あぇっ!?超推理は…っ!?」
「気分じゃなーい!」
「そっそんなぁ…、
…何だか逃げられた様な気がする…。」
其れに、今日は「分からない」「知らない」の一点張りだった。超推理もしてもらえなかったし…矢っ張り乱歩さんの気分次第なのかな
乱歩さんが出て行ってしまった扉を一層すれば
自然と はあぁ……、と疲れをドンと込めたような大きなため息をついてから、一先ず、僕は諦めて国木田さんに頼まれていた書類仕事を再開することにした。
世界の国宝と言っても過言では無い、名探偵である江戸川乱歩は、この押し寄せてくる重い重い謎の気持ちを抑えられずにいた。
「全く、何なのさ!恋愛相談なんて名探偵の仕事じゃない!」
問題なのは太宰もだよ!ほんと、名探偵を振り回すのはやめてほしいね!犯人にだって振り回されたことないのに…!
「敦だって…少し考えれば分かるだろ…」