7月のはじめ。
ジメジメとした風が窓から入って来た。 今年の夏は異様に暑く、テレビのニュースでもずっと「熱中症注意」と記されているほどだ。 鈴山夏男は昔から夏が苦手だった。喉か渇き、汗ばみ、とにかく暑いからだ。 例え夏が嫌いでも仕事にいかなくてはならない。 気だるい身体を無理やり起こし、着替えて朝御飯も食べずに家を飛び出す。 クーラーの効いた仕事場へ早く、早くと足が勝手に動く。 夏男は通称「始末屋」といわれている少し特殊な仕事をしていて、日本に一つだけといってもいいほど数少なく、一般には知られていない。その仕事とは、「大企業の尻拭い」だ。 例えば世界的に人気がある車を作る会社があるとする。そこで人を殺してしまうとする。そこで「始末屋」の出番だ。 そう。証拠を隠滅するのだ。 普通は目撃者に交渉をしたりして、漏らさないようにしたりするが、最悪の場合、殺さなければいけなくなる。 そのせいで鬱病にかかってしまう人もいる。とにかく楽しい仕事ではない。 では何故、夏男達は「始末屋」で働くのか。 それは、とにかく給料が平均より高く、会社の環境がいいからだ。 エアコンは常についており、社員それぞれに立派なデスクと椅子が用意され、テレビやらなんやら用意されており、とにかく快適だった。とはいえ楽しく無いものは楽しく無い。
夏男は会社に着くと自分のデスクに座り、お茶を飲み、一息ついた。
とりま続きます。
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