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◈ーシェリフ・トードスター sideー◈
あー、拒否られた…。そりゃそうか。正義とか関係なく、親友にあんなことされたら誰だって怖いよな。
保安官は目なしジェスターを運んだ後、見回りを始めた。プレイヤーが来て起こった惨劇から、地上で言う4ヶ月目。研究医であったプレイヤーが外科医を救った事で、死んだと思われてた女王や道化師、プレイヤーが確かに殺したと言ったクロウレンゾやミス・ミミッカー達までもが生き返った。保安官は主と親友が生き返ったことに泣いて喜んだが、女王はしばらく男性陣との接触を拒み、親友はあのザマ。保安官は大きな溜息をつき、とぼとぼと進んだ。そこに、見覚えのあるシルエットが見えた。
「あれ、シェリフ!顔色悪いけど大丈夫?」
園長にそっくりなフォルムの青い身体に心配の表情が浮かんでいる。彼は園長の暴走を止めることに尽力したが、決闘の末に外科医と園長と同じGvタンクに落ち、体が繋がってしまったことで少しばかり障害が残っている。かくれんぼしてたと思ったら外は殺し合いしてたなんて、さぞ衝撃だっただろう。
「あぁ、フランボか…。また仲直りに失敗しちまってな」
「17番…じゃなくて、ギグルだよね」
「顔を合わせるところまでは良かったんだが、園長に誘われた瞬間に、もう無理だと言わんばかりのギグルに拒絶された…」
俺はあそこまで怯えるギグルを見た事がない。そう言うと、フランボはますます深刻な顔つきになった。子供の頃、共にラマンバに襲われた彼も、ギグルが震えるほど怯える姿は見た事がないらしい。
「シェリフとしては、許して欲しいの?謝って欲しいの?」
「…許して欲しい」
フランボは「もう!」と言って保安官の腕を掴み、突然走り出す。保安官は訳が分からないままとりあえず着いていく。たどり着いたのはとあるオフィス。フランボはデスクから紙とペンを取りだし、保安官を椅子に座らせた。
「な、なんだ?」
「ここ暫くは事件もないし、今日は見回りお休み。代わりにこ の時間は、ギグルに手紙を書いて。内容は君に任せるけど、自分の名前は書いちゃダメだよ!ギグルに誰が書いたか察してもらわなきゃ」
確かに、面と向かって話せないなら、メッセージを残す他ない。名前を書いてはならないのには少々思うところはあるが、そっちの方が後で会った時に気でも楽なのだろうか。
「……わかった。やってみる…でも俺字が汚いんだが」
「それでいいんだよ。頑張って思いを文字にしたってことが大切」
フランボに励まされながら、俺はペンを走らせる。仕事にしか使ってこなかった太い指で書く文字はヨレヨレで不格好だが、読めなくはない。何度も何度も書いては直し、最善の言葉を連ねていく。消した跡で紙が黒くなっても紙は交換させて貰えず、とにかく思いを形にしていった。誤字や脱字を指摘されながら、俺は仕事時間を全部使い切って手紙を完成させた。
「できた……できた!」
「次は、その手紙を渡さなきゃね」
「ありがとう、フランボ!お前さんがいなきゃ手紙なんて思いつかなかっただろう。俺、渡してくるよ」
「行ってらっしゃい」
俺は手紙を握りしめ、ギグルを探しに行った。最初に行ったところはさっき子供達と居たところ。さすがに仕事の時間が全部消えたんだ。そこにはもう居なかった。次はかつての王国。ここにもいない。次は医務室。次はジェスターズのいた部屋。他にも思い当たるところは全部探した。でも見つからなかった。
「一体どこ行ったんだ……自室にもいないなんて」
「おい!さっきからドタバタと何している!」
突然怒鳴られた。扉の開く音の方を見ると、ぬっとオレンジの触手が伸びてきた。触手は慌てる俺を捕まえて、騒ぐなと言わんばかりに本体が出てきた。
「スティンガー、起こしてしまったなら謝る!でも俺はほんとに急がないと!」
スティンガー・フリンはプレイヤーが来てから徐々にGvが体から抜けて最終的には誰よりも小さくなっていた。今は治療により、バンバンたちより少しばかり大きいくらいになっている。そのせいか掴まれると結構痛い。スティンガーは保安官があえて探しに行かなかった道を指さした。
「どうせ行先は道化師のところだろう。それだったらさっき、一人であっちに向かっているのを見たぞ」
「あっち……?あっちは俺の部屋しか………!」
スティンガーは無言で保安官の背中を押す。その勢いに乗って保安官は刺された方向へ走った。その姿にスティンガーは大きなため息で見送った。
「はぁぁぁ……全く」
「優しいね、フリン。わざわざ背中を押してあげるなんて」
部屋の中からバンバンが出てくる。私は保安官が見えなくなったのを確認して、バンバンを抱えた。
「……お前も休んでろ。今日も子供たちの世話で疲れただろ」
「ありがとう…フフッ」
スティンガーに背中を押され、俺は自分の部屋へと走った。さっきもずっと走り回っていて、正直ヘトヘトだったが、そんなの気にしてられないくらい必死こいて走ってる。そこの角を曲がれば、俺の部屋だ。そこはあえて進まず、チラッと様子を伺った。案の定、そこには膝に顔を埋めて座っているギグルがいた。俺はゆっくりと近づき、少し遠目のところで声をかける。
「……ギグル」
「ん…んん?……シェリ、フ………!?」
寝ていたようだが、俺の顔を認識するとすぐに昼間と同じ顔になっちまった。俺がバッチを突き刺したところの傷を押えながら必死に何かを言おうとしている、呼吸も荒くて涙も流れている。
「ご、めんなさッ、ご、ご、ごめ、んッ……」
「大丈夫!大丈夫だ…」
そんな絶望的な顔で見ないでくれ…。俺は謝って欲しい訳じゃないんだ。俺は両手をあげて敵意がないことを示す。片腕にはあの手紙があった。宛名に『Dearビター・ギグル』と書いてあるのをギグルが見ると、意識がそっちに傾いてさっきより落ち着いたようだ。
「て、てが、てがみ?ワタシ、に?」
「あ、嗚呼。ここに置いておくから、後で取ってくれ。俺は別の部屋に行くとするよ」
◈ービターギグル sideー◈
(私が部屋の前に居たばかりに…気を使わせてしまった……。)
私はシェリフが見えなくなってやっと落ち着きを取り戻しました。謝ろうとして来たものの、本人はおらず、疲れと不安で眠ってしまっていたようデス。馴染み深い声に起こされたと思えば、目的の彼が目の前で私を見ている。私はさっきと同じようになりながらも必死に言葉を絞り出そうとしましたが、彼はそれを必死に止めた。大丈夫と言ったのは、許してくれたということでしょうか。それとも、単に落ち着けと言うことでしょうか……。
「……あ、手紙」
考えても疲れるだけだと思い、とりあえず置いていってくれた手紙を拾い、自室に帰りました。
「ただいまデス」
「おかえり、オリジナル。また失敗したのか?目が赤いぞ」
「失敗と言えば、失敗ですネ……。泣きながら言ったごめんなさいを途中で止められました」
私はベッドへダイブし、枕に顔を埋めた。これなら私の酷い顔を見る人はいませんからネ。そんな拗ねた態度をとっていたら、目なしに呼ばれました。
『オリジナル、首ナシガ呼ンデル』
「どうかしましたか?」
首なしはどうやって見たのか私の手にある手紙を指さしました。そういえば、この二人はなにか特別な会話方法があるようですネ。オリジナルの私にもわかると良いのですが。二人を交互に見つめ、ムクリと体を起こして手紙を開けました。
Dear ビターギグル
久しぶり。元気してたか?
最近は、外科医やダダドゥ卿の手伝いをしているらしいな。子供達と一緒にいるのをよく見るぞ。子供達もだが、君の生き生きとした顔を見ていると、こっちまで幸せになれるよ。
でも君の幸せの中に、未だに俺が入れていないのが苦しくて仕方がない。君の負った傷は、誰もが酷いと認めざるを得ないものだと、俺が一番よく分かってる。
君は、あの惨劇を自分のせいだと思っているようだが、俺はそうは思わない。何せ、悪い事をしたのは君だけじゃない。園長も外科医もプレイヤーも、俺だってそうだ。
だから、そんなに気負わないでくれ。
それと、俺は、君に謝りたかったんだ。ずっと。でも君は俺を見るとそどころじゃないし、謝ろうとしてくるだろう?俺は謝って欲しんじゃない。謝りたいんだ。
こんな大事なこと、手紙で伝えるより直接の方がいいんだろうけど…本当にすまなかった。許して欲しいけど、君の気が収まらないなら許さなくていい。
もし許してくれて、また話せる時が来たら、その時はよろしくな。その時まで、ごきげんよう。
送り主の名前が無い。いや、もうなくても分かりますけど。文章の内容からも、ヨレヨレで不格好な文字も、全て、貴方のものでしょうに……。手紙に涙が滲んだ。
「……バカ。」
手紙なんて人生で初めて書いたんじゃないでしょうか。それが私への謝罪なんて、…もっと、なんかこう……愛の告白とかに使った方がいいのでは?
そんなことを考えると、不思議と涙の他に笑みもこぼれた。
【…オリジナル?】
「え、今の首なしデスか?なんで喋れて……」
隣で手を握りながら見守ってくれていた首なしが話しかけてきました。私の発言に、周りの未完成ジェスターも驚いています。当たり前です、話せるか否かよりも、口がないのですから。ただ一人を除いてデスが。
『首ナシハネ、触ッタ相手ノ心ト通ジ合エルンダヨ。元々、オ喋リジャナイカラ、皆知ラナカッタヨネ』
ここの二人がやたら仲がいいのはそういう事でしたか。培養槽が隣同士の二人は、ガラスを通して通じあっていたのですネ。
【オリジナル、うれしそう。手紙の主、許せる?】
「……許せるに決まってますよ。でも、ワタクシが彼のことをどうこう言える立場ではないですし」
「おい、オリジナル!そのウジウジした態度やめろ!それでも俺らのオリジナルかよ!」
「!」
半ギグルがオリジナルの腕を掴み、無理矢理立ち上がらせる。他のジェスターが止めようとするが、普段から乱暴で暴力的な彼に、体の諸々がない彼らは敵わない。彼はグイッとオリジナルと顔を近づけ、静かな声で脅した。
「今すぐに、この手紙の主の所へ行け。それでもここで駄々をこねるつもりなら、俺がそいつのとこ行ってボコボコにしてやるよ。許せるんなら、行けるだろ?行けねぇってことは許せねぇってことだろ?なら気が済むまで…」
「わかった!わかった行きます!だから、そんな事しないでください!」
「……早く行け」
パッと手を離し、オリジナルはすぐに出て行った。半ギグルはどかっとベッドに座り、溜息を漏らした。隣で半ビターがニヤけ顔で笑っている。
「…珍しいねぇ。君がわざわざ悪役になるなんて」
「うるせえ」
◈ーシェリフ・トードスター sideー◈
「別の部屋っつったって、どこにしようか…街で宿でも借りるかな…対価がねぇな」
保安官はヘトヘトの体を引きずるように歩いている。自室に戻ろうかと思ったが、そこまで戻るのもめんどくさい。いっそこの廊下で寝てしまおうとも考えていた。
「ダッ……ダー…………」
遠くでノーティワンズの声が聞こえる。その声はどんどん近づいている。
「そういや、ヒルって夜行性だったか……」
「ダッ!ダダダダ!」
「一人か?迷子になったのか?」
ノーティワンズは首を振る。だがすぐに保安官の足元をぐるぐると回り、ぴょんぴょんと跳ねる。
「どこか、行きたいところがあるのか?」
「ダァー!!!」
先程より高く跳ねると、保安官に合わせたスピードで進み始める。体力の限界が近づいているため、どこに連れていかれるかと心配だったが、たどり着いたところはそう遠くなかった。
「王国か…?なんでこんなところに……あれ?どこ行った?」
着いたところは王国だった。扉を抜けた途端、ノーティワンズが姿を消してしまった。保安官はここが目的地だということにして、流木の上に座った。ようやく座れたことで、睡魔が襲ってきた。もうみな寝静まっている時間だ。寝ても怒られはしないだろう。
「…リフ、ェリフ……、トー…ター、トードスター!」
「……誰だ」
ぼんやりと見える緑と紫の影。顔にかかる水滴。影の主は俺の体を起こし、少し強く揺さぶられる。意識がはっきりしてきた。
「トードスター!!私です!」
「ギグル?ギグルか!?」
俺がギグルの名前を呼ぶと、ギグルは俺を強く抱き締めてきた。頭で何が起きてるか処理できてないが、俺も腕を回し返す。ギグルの泣きじゃくる声が聞こえる。全てを理解するのにそこまでかからなかった。
俺は許して貰えたんだ。
大粒の涙が頬を伝い、鳴き声の代わりに嗚咽が漏れる。
「っ!ごめん!ギグル、俺、お前にずっと辛い思いさせてた!なのにずっと自分のことばっかりでっ!」
「私こそごめんなさい!貴方の大切なものを奪ったまま、皆さんに甘えてしまってっ!やっと言えたっ、あぁぁぁ!」
二人は抱き合って泣き続けた。お互いの背中を擦りながら、全力で泣いた。
どれくらい経っただろうか。二人は体力の限界と安心でその場で眠りについていた。とても幸せそうな顔で。
王国の天井から、大きな影が二人を見守っている。その傍らには先程のノーティワンズがいた。影はその個体の頭を撫で、起こさないように小さな声で言った。
「よくやったな、わが子よ」
大きな影は、満足そうに出て行った。
どうやら、俺たちは二人仲良く眠っちまったらしい。朝の放送が鳴り、先に目が覚めた俺は親友の寝顔をじっと見つめていた。仲直りしたはずなのに…なんか気持ちが落ち着かなかった。まだ不安なのだろうか。俺らしくないな。
「ん、…」
「おはよう、ギグル」
「、おはようございます。シェリフ」
おやまぁ、寝てしまってました。しかもこんな人目に付くところで。でも…悪い気はしないですね。ちょっと優越感というか……よく分からない気持ちです。
「もう俺は怖くないか?」
「もちろんデス。貴方の寝顔を見れなかったのは残念ですが」
あれ?私はなんでこんなこと思ったのでしょうか。今は特にジョークを言いたい気分でもないし、ネタを探したい訳でもないですし…。
「じゃあ……ずっと俺の隣で寝てればいいさ。そうすればいつかは見れるだろ?」
これは今言うべきことではない気がする。ていうか普通に気持ち悪くないか、二秒前の俺よ。昨日まで怖がられてたのわかってるか!二秒前の俺よ!!!
「…」
ほら!引いてる!もう、どうすんだよこれ……。今ギグルの顔見れねぇよォ…。
「悪ぃ、忘れてくr…」
「それは、告白と受け取って良いデスか?」
「え?」
俺が振り返ると、ギグルの顔がずいっと迫っていた。忘れていたが、こいつは元々距離感が近すぎる奴だった。だが今回はあまりにも近い。このままじゃ、キ、キ、キ……
保安官の理性も虚しく、重なってしまった。一瞬の出来事だったが、脳は処理しきれていない。ギグルは顔をGv色にさせながら焦って何かを言っているが、保安官の耳には何も入っていない。代わりにギグルの顔を抑え、もう一度した。こんかいは少し長い。ギグルは苦しそうに保安官の背中を叩く。何度か叩いてやっと終わった。
「シェ、シェリフ…///」
「……俺の部屋でいいか?」
ギグルは沈黙の後にこくりと頷き、二人は誰かが来る前に部屋へ向かった。予想外のことだったが、いい方に転んだ。保安官は今度こそ、この愛くるしい花を守り抜こうと誓った。