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頑丈な鉄の扉を開けて一人の青年が部屋に入っていく。部屋は薄暗く、ただ中央だけにぼんやりと光が灯っている。光が照らされているのは、大きなガラスでできている箱。その中には、とても美しい少女が静かに眠っていた。
彼女は、御伽話に出てくるお姫様のように白く透き通った肌を持ち、雪の結晶のような、美しさを放っていた。青年は、眠っている彼女に悲しそうに言った。
「ねぇ、起きてよ…キルア。」
***
時は少し遡る。
ある小さな町のレンガの道を一人の少年と一人の少女が楽しく並んで歩いていた。
少年の名は「ゴン」。少女の名は『キルア』と言った。
キルアはどこにいても、目を引く存在だった。真っ白な銀髪に、透き通るような白い肌。そして、青くサファイヤのように輝いている瞳。とても綺麗で美しかった。通り歩くだけで、人々は振り返り、その美しさに見惚れるほどだった。
そんな彼女に、ゴンは密かに心を惹かれていた。しかし同時に、誰もがキルアに注目することに、どこか嫉妬を覚えていた。ゴンの少しふくれっ面を見たキルアは笑い、その真っ白な銀髪をなびかせながら、言う。
『なあ、ゴン。そろそろ、昼だし、なんか食べようぜ〜』
ゴンは町を見渡し、目に入った小さなファミレスを指さす。
「じゃあ、あそこのファミレスとかどう?」
『ん。行こ。』
「うん!」
二人はその小さなファミレスに入っていった。昼が近いこともあり、店内は少し混んでいた。
「はい。ニ名様ですね。どうぞ、こちらへ。」
店員に案内され、そして、席に着く二人。メニューを手に取り、しばらく眺める。
「キルア、注文決まった?」
『おう。ショートケーキとオレンジジュースと…トマトのスパゲッティ。』
「分かった。じゃあ、店員さん、呼ぶね。」
『ん。』
ピンポーン、とテーブルの端にある呼び出しボタンを押すと少し待ってから店員がやってきた。
「ご注文ですね。」
「えっとー、、オレンジジュースとコーヒーに、ミックスサンドイッチと、トマトのスパゲッティ、あと苺のショートケーキで。」
「かしこまりました。」
店員が去っていくと、ゴンは楽しそうにキルアに問いかける。
「キルア。食べ終わったら、、他にどこか行く?」
すると、キルアは一瞬黙り、視線を落とし、小さな声で答えた。
『…服買いに行きたい』
「分かった。そうしよう!」
ゴンは笑顔で即答する。キルアは照れくさそうに手で紅い顔を隠しながら「うん。」と返した。
実は、元々、二人はこの町に立ち寄る予定はなかった。友人のクラピカと待ち合わせしていたのだが、急遽、クラピカの都合で一日予定がずれたため、仕方なく、この町で一日過ごす事になったのだ。せっかくの空き時間を楽しもうと、こうして、二人は町を歩いていた。
やがて、料理が運ばれてくる。
「お待たせしました!オレンジジュースとコーヒー、ミックスサンドイッチに、トマトのスパゲッティ。そして苺のショートケーキです!」
テーブルに並べられた料理を前に、二人は声をそろえる。
「『いただきます!』」
しばらく、食事を楽しんだ後、ゴンは、先に食べ終わる。キルアの前には、苺のショートケーキが残っていた。彼女は、その残ったショートケーキをパクと口に運び、幸せそうにモグモグと味わっている。そんな様子を見て、ゴンはつぶやく。
「ほんと、キルアは甘いもの好きだよね。」
キルアはケーキを飲み込み、答える。
『ん。甘いもの、美味しいからな。』
キルアは、いつも頼むものには甘いものがあった。しかし、不思議な事に甘いものをたくさん、食べている彼女は、なぜかスラッと体が細かった。それもまた彼女の魅力の一つだった。
最後の一口を入れ、キルアは満足そうにする。二人は会計をし、店を出た。