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無蛇野先生が好きな四季君と毎日相談に乗ってた花魁坂先生とのお話。
ムダ←四季
四季←花魁坂
って感じです
「ねぇ四季君…」
保健室の椅子に腰掛ける四季は悲しみに染まっている。
深い青の瞳には押し殺された思いと感情によって一つの涙が浮かんでいた。
俯いているその子に手を伸ばして頬をただ優しく花魁坂は撫でた。
「泣かないでよ…」
「…泣いてねぇよ」
「泣いてるよ…」
月明かりだけが保健室を照らす唯一の明かり、その溢れた涙は悲しいぐらいに美しい。
「…俺さ、ムダ先が好きなんだぁ」
「好きだったんだ…」
「うん」
「でもねっ…無理なんだ」
「ムダ先は、優しいでしょ?」
向かいに座る京夜の手を振りはらうこともせずに、四季はポツリポツリと言葉を落としていった。
「…言ったらさ、ふ…たんになっちゃうじゃん」
京夜の顔を見ながら涙を溢して四季は笑った。酷く酷く悲哀を纏って。
無蛇野への想いを実感してから、誰にも言えなかった言葉を四季は京夜だけに相談していた。
ノリが近かったからか、無蛇野と友人関係だったからか…理由は定かではないけれども、四季は足繁く京夜の元へ通っていた。
「なぁなぁチャラ先!!」
「ん〜?どうしたの四季君」
回転椅子に座りながら身を乗り出して四季は書類に目を通していた京夜に話しかける。
時間としては10時半前、消灯時間から少し過ぎた頃。毎日四季は保健室に足を運ぶ。
「今日ムダ先がちょっとだけ強くなったなって褒めてくれたん!!」
「良かったねぇ」
「!おう!!」
いつもいつも楽しそうに自分の友人への恋を楽しそうに嬉しそうに話す四季の言葉を聞くのが京夜は好きだった。
無蛇野がどうしたこうしたと身振り手振りで伝えて幸せそうに笑っている四季を見るのが好きだだった。
血の繋がった家族が居ない四季、その上父親代わりだった剛志を亡くしたにとっては無蛇野はとても大きな存在だった。
側にいて道を提示するけれども決める事も悩む事も本人に託す。死にそうになりほどに鍛えて戦地に立たせようとも、決して死なせはしない。蹲る生徒に厳しい言葉をかけても見放したり、置いておこうとはしない。
全く優しいよね…ダノッチは。心で1人呟きながらも京夜は四季の話に今日も耳を傾ける。
「ムダ先はきっとさぁ…俺が好きだって伝えたら…」
「良いよって…言うかもしんないじゃん?」
「…」
「俺ムダ先には…幸せになってほしいんだぁ」
眉を下げて四季は笑った、自分を殺してでも人の幸せを願って。
その顔は自己犠牲でしかない痛みが浮かんでいる。
「ねぇ…四季君」
「俺にしない?」
「…え。」
大きな目で京夜を見た。その目からは未だ大きな涙粒が浮かんでいる。
赤くなった目尻に手を添えて溢す涙を親指でただただ優しく拭った。
「…ダノッチの代わりなんて言わないからさ」
「四季君はダノッチを好きなままでいて良いから」
「俺なら側にいてあげるよ」
泣かないでほしい。命が他の子よりも短いと制限をつけられた少年には最後まで楽しい記憶を増やしていてほしい。
笑っていてほしい。
短い時間だからこそ、楽しい生活をしてほしい。
「俺が四季君を愛してあげる」
「俺をダノッチだって思い込んでも良いから」
「代用品でも良いからさ」
「どうか…泣かないで」
京夜は四季を抱きしめた。白衣が濡れようとも、抱きしめた。
強く強く、壊れて消えてしまいそうな小さい少年を留めておく為に。
四季は京夜の白衣を握り締めて涙を溢した。諦めがつかない思いにも、優しいこの人も、全部が痛かった。
四季の喘鳴が2人しか居ない保健室に響いた。
保健室のベットで静かに眠りについている四季の目は痛々しいほどに赤く腫れている。
その目に優しく触れた。
俺は、四季君が好きだよ。明るくて優しくて、元気で誰かを助けようと全力な四季君が。
俺は四季君が幸せになる為なら、1番じゃなくて良い。
「だから…どうか、泣かないで四季君」
閉じている目元に京夜はそっと唇を落とした。
悲哀のきょうしきが見たかったんです…
無蛇野さんは四季君に対して生徒としか思ってないです。強いて言うならば他の生徒よりも気に掛けている生徒。
花魁坂さんは四季君が好きだと気付いてなかった。
四季君は花魁坂さんを代わりにしてしまう事が申し訳ないと思っていながらも、愛情をくれる花魁坂さんに救われてる。