テラーノベル
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6月中旬。もはや梅雨とは何なのかと言う疑問を忘れる位に外は暑く、そんな中1人の生徒がシャーレに飛び込んでいった。
フブキ「あっっっづ….先生ちょっと邪魔させて〜…」
先生「あれ、フブキどうしたの、今日は資料片付けるって言ってたのに。」
フブキ「ぁー涼しい…生活安全局の空調壊れてさぁ…あんなとこでたたでさえ面倒くさい資料作業何てしてたら暑さで死んじゃうって話。」
先生「はい麦茶。じゃあ今日はシャーレで仕事してけば?」
フブキ「ありがと。いやー、今日は朝から見回りやら不良の対処で働きすぎてるしぃ、少し休憩が必要だと思うんだよね。」
先生「それ..ただ涼しいシャーレでサボりたいだけじゃ?」
フブキ「細かい事は良いの!」
先生「後で困らないなら別に止めないけど…私は仕事だから、あまり騒ぎすぎないようにね?」
空調で汗が引いていくフブキにそう忠告する。
フブキ「分かってるって。…てかタイツ邪魔だなぁ…あ、先生タイツ脱ぐね、」
先生「拒否権ないんだ..?まぁ良いけどさ..フブキも女の子だしもう少し気にしたら..?」
フブキ「まぁ別に先生だし大丈夫でしょ。さて、ソファー借りるね。」
先生「はいはい…さて、仕事するか..」
その時執務室の扉が開いた。
ユウカ「先生、例の資料をまとめたので..あれ、これは…タイツ?一体誰の…」
フブキ(あれ、誰だろあの人。)
先生「いらっしゃいユウカ。何を聞きたいの?」
ユウカ「先生、ここに引っかけてあるタイツは誰のですか..?見た感じさっき置いたばかりの良いですけど…」
先生「あ、それはね…(うーん、説明してもいいけどフブキがサボってるのバレそうだし。)」
ユウカ「わざわざ執務室に置いてあるって事は…先生もしかして..?」
フブキ(これ..先生あらぬ勘違いされてない!?流石に弁解しないと…)
ユウカ「もしかして先生、」
ユウカ/フブキ「女装の趣味が?/待って、先生先生は生徒に手なんて出さな…!」
フブキ「え?」
ユウカ「..あなたは?」
フブキ「あ…どうも…」
先生「そっかユウカヴァルキューレあんまり行かないもんね。この子は生活安全局の1年生、フブキだよ。」
ユウカ「あ、ヴァルキューレの…てっきり先生とうとう女装に手出したのかと…」
先生「私のイメージどうなってるの..?」
ユウカ「まぁとにかく、以前頼まれた資料が出来たので、お願いしますね。」
先生「あ、うん、ありがとう!」
ユウカは執務室から出ていった。
先生「あれ、ところでさっきフブキもなんか言おうと…」
フブキ「うん、あの人が先生が生徒に手出したと勘違いしたのかなって。」
先生「私そこまで信頼ない!?」
フブキ「あはは、冗談だよ。…半分ね。」
先生「私が生徒に手を出すなんて事ないよ…そもそも体罰だし、嫌がる子が居るならそれこそ私は責任取るつもりだよ?」
フブキ(嫌がる人なんて居てもごく僅かだと思うけど)
フブキ「はぁ…本当に先生は鈍すぎて私でも呆れるよ..」
先生「何でぇ!?」
フブキ「ま、そこも信頼できるところだよ、先生?」
先生「それはまぁ、嬉しいよ。」
フブキ「…先生ってさ、もしかしなくても女性経験ない?」
先生「偏見すごいね。」
フブキ「鈍すぎるからね。」
先生「まぁ間違ってはないけど…どちらかと言うと、今も昔も忙しくて暇が無かっただけなんだよ。それに、こんな人を好きになる人が居るなら…むぐっ!?」
突然フブキは先生の口にドーナツを突っ込んだ。
フブキ「それ以上言うなら…流石の私でも怒るよ?」
先生「むぐぐ…ゴクン」
フブキ「どう?駅前のイチオシの名店のオールドファッション。この…素材の味?と言うか素朴な甘さが好きなんだよね。」
先生「う、うん美味しいよ。」
フブキ「…さっきは誤魔化したけどさ先生。」
先生「ん?」
フブキ「先生は…生徒と付き合う気って、本当にないの?」
先生「…生徒を正しい道に導く、それが大人の仕事だからね。生徒が正しく、大人になるまで手は出しちゃ行けないんだ。」
フブキ「…の癖に。」
先生「えっ、なんて..」
フブキ「人の感情には鈍いのに、自分で責任だけ被う何てそんな理不尽なのが大人なの?」
先生「…少なくとも、大人が子供と付き合う、これが駄目なことなのは…」
フブキ「グイッ」
執務室にソファーに人が倒れる音が響く。
先生「..フブキ?」
フブキ「そりゃもちろんさ、何を決めるのかは先生の自由だよ。でもさ…子供を導く為に、本当にしたい恋愛が出来ないって、一生悔いに残るよ。私はまだ分からないけど…先生の立場と逆ならそう思う。」
先生「えーっと…」
フブキ「キヴォトスの生徒、私が知らない人までみーんな、先生の事が大好きなんだよ。」
フブキ「その中から決めろとは言わない。でも、わがままが言えるなら…私だってチャンスを逃す程怠惰じゃない。」
先生「…」
フブキ「まぁだから、さ。先生ももう少し自分を理解して欲しいの。」
フブキ「…何が言いたいって、ここまでで流石の先生も分かったでしょ?」
フブキ「無理かもしれないと分かってる。けど。…怠惰で、サボり気味で、かつ面倒くさがりでもいいなら、私とこれから一緒に居て…ください。」
先生「…..!」
執務室に沈黙が流れる。その時間は数秒とも、数時間とも取れる程長い沈黙だった。そして、先生が口を開く。
先生「フブキ。私はその気持ち、受け取ったよ。改めて言うけど…」
フブキ「…!!」
フブキは驚きながら大粒の涙を流す。
フブキ「ぅ…全く、本当に出来た大人だよ、先生は…っ…笑」
先生「…もう後戻りしないし、しようとしないよ。」
フブキが腕を広げると先生は呼応するように、フブキの小柄な体を優しく抱きしめる。
この事は2人以外、もちろん知らない。記者でも、勘の鋭い生徒でも、はたまた相手の行動を予知した様に動くヴェリタスの天才ハッカーでも。これから2人は、ドーナツでも食べながら、フブキの願いに先生は振り回されるだろう。それでもいい。それが2人の望んだ幸せなのだから。
おわり
コメント
7件
グロ系だけでなく恋愛系も上手いとは恐れ入りました… これが文才を持った人なのかといつも思わせられますね 最近グロ系で酷い最後を迎えたキャラしかいなかったので最後まで幸せそうで涙でそうになりました(幸せそうなハッピーエンドなのと、フブキも覚めぬ夢喰われる運命で死ぬのかと思うと) 次回も楽しみにしてます!