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しにたがり

1 - しにたがり

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2026年02月14日

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「ねーえ、ねぇ、牧さん」


「どした?義也ならもうちょい来ないよ」


「違う、牧さんに用があるんすよ」


快成がわざわざ俺に用事があるって、ちょっとだけ嫌な予感がする。


「俺さ、死にたいんすけど、いい場所知らない?」


明日の天気って何?みたいにサラッと告げられた衝撃的な言葉。


「…ん?ごめん何て?」


「だから、いい死に場所ない?って」


そっか聞き間違いじゃなかったか。聞き間違いであってほしかったけどな。

うん、この話題は確かに義也じゃないかも。


「死に場所、かぁ」


ちら、と快成の方を見た。こちらを真っ直ぐ見つめてくる真っ暗な目に吸い込まれそう。

しょうがない。付き合ってやるか。


「やっぱ家じゃない?」

「手首切ったり首吊ったり」


「…俺がもし取り憑いたら事故物件なるじゃないっすか」

「大家さんに迷惑かけたくないっす」


気にするところそこか。まあ確かにな。

快成だったらイケメンの幽霊って有名になりそうだけど。


「じゃあ飛び降り?」


「他のやつより痛そうやしぐちゃぐちゃなるし…イヤっす」


死ぬときはみんな痛いよ。きっと。


「じゃあ山?行方不明ってことにしてあげるよ」

「滑落とか…動物とか?」


「…見つけてもらえないのイヤっすね」

「見つかったとしても汚くなってるじゃないですか」


見つけてもらえないのは寂しいんか。

しかも、キレイな姿のまま、ねぇ。


「じゃあ薬?」


「…ミスったらゲロまみれになるっす」


確かにゲロまみれで発見されるのはイヤかも。


「じゃあ練炭?」


「苦しそう」


「死ぬときはそりゃ苦しいでしょ」

「…最終手段は海かな。今は極寒だろうけど」


「寒いんイヤっす」

「…しかも大阪湾やったらヤバい人に沈められたみたいになりません?」


…まあ気持ちは分かる。そんで快成寒いの得意じゃなさそうだし。

いつも寒い寒いって言いながら義也のジャージ剥ぎ取ってくるまってるしな。


「…牧さんはなんでそんなに詳しいんすか」


「…ドラマとかよく見てるからね」


わかってるよ。俺が嘘つくの下手なことぐらい。

でもまだ快成にはこっち側に来てほしくないんだよ。


「どう?気に入ったのあった?」


「…うーん、何か全部違うんすよね」


まあ全部イヤって言ってたしな。しかもやっぱ怖いんだろうな。

漠然と死にたいと思ってるけど勇気はない、っぽいな。


「じゃあ死ぬのは延期?」


「うーん…でもなぁ」


だめだよ。快成はまだこっち来ちゃダメ。

悩まないでやっぱやめるって言ってほしい。


「…じゃあ、理想の死に場所探して旅しよう」


「え、」


「義也とかとでもいいんじゃない?」

「色んな所巡ってここがいいかもって探すの」

旅、我ながらいい案かも。

快成お出かけ好きだし、義也と一緒に遊びに行ってるのインスタでよく見る。

考え直してくれたら万々歳だし、いい場所が見つかるまで生きててくれそう。


「牧さん、二人でどっか行こうよ」

「オススメのところ案内してよ」


二人で理想の死に場所探しの旅。

快成はどんな所が好きかな。寒いの苦手だろうし、キレイな景色好きそう。そんで行ったことなさそうで、俺が詳しい所。


「「沖縄」」


「っ! 被ったね」


「ほんとに案内してくれるんすか?」


「もちろん」

「いい場所いっぱい知ってるから」


快成が納得するまで一緒に探し続けてあげるよ。

まだこれから何とでもなるよ。


うん。目がマシになった。もう大丈夫。

これで快成はまだ生きててくれる。


「じゃあ今度どこ行きたいか考えよ」


「うん」

「牧さん、ありがと」


ぽつり、呟いた快成の頭をぐしぐしと撫でた。

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