「ねーえ、ねぇ、牧さん」
「どした?義也ならもうちょい来ないよ」
「違う、牧さんに用があるんすよ」
快成がわざわざ俺に用事があるって、ちょっとだけ嫌な予感がする。
「俺さ、死にたいんすけど、いい場所知らない?」
明日の天気って何?みたいにサラッと告げられた衝撃的な言葉。
「…ん?ごめん何て?」
「だから、いい死に場所ない?って」
そっか聞き間違いじゃなかったか。聞き間違いであってほしかったけどな。
うん、この話題は確かに義也じゃないかも。
「死に場所、かぁ」
ちら、と快成の方を見た。こちらを真っ直ぐ見つめてくる真っ暗な目に吸い込まれそう。
しょうがない。付き合ってやるか。
「やっぱ家じゃない?」
「手首切ったり首吊ったり」
「…俺がもし取り憑いたら事故物件なるじゃないっすか」
「大家さんに迷惑かけたくないっす」
気にするところそこか。まあ確かにな。
快成だったらイケメンの幽霊って有名になりそうだけど。
「じゃあ飛び降り?」
「他のやつより痛そうやしぐちゃぐちゃなるし…イヤっす」
死ぬときはみんな痛いよ。きっと。
「じゃあ山?行方不明ってことにしてあげるよ」
「滑落とか…動物とか?」
「…見つけてもらえないのイヤっすね」
「見つかったとしても汚くなってるじゃないですか」
見つけてもらえないのは寂しいんか。
しかも、キレイな姿のまま、ねぇ。
「じゃあ薬?」
「…ミスったらゲロまみれになるっす」
確かにゲロまみれで発見されるのはイヤかも。
「じゃあ練炭?」
「苦しそう」
「死ぬときはそりゃ苦しいでしょ」
「…最終手段は海かな。今は極寒だろうけど」
「寒いんイヤっす」
「…しかも大阪湾やったらヤバい人に沈められたみたいになりません?」
…まあ気持ちは分かる。そんで快成寒いの得意じゃなさそうだし。
いつも寒い寒いって言いながら義也のジャージ剥ぎ取ってくるまってるしな。
「…牧さんはなんでそんなに詳しいんすか」
「…ドラマとかよく見てるからね」
わかってるよ。俺が嘘つくの下手なことぐらい。
でもまだ快成にはこっち側に来てほしくないんだよ。
「どう?気に入ったのあった?」
「…うーん、何か全部違うんすよね」
まあ全部イヤって言ってたしな。しかもやっぱ怖いんだろうな。
漠然と死にたいと思ってるけど勇気はない、っぽいな。
「じゃあ死ぬのは延期?」
「うーん…でもなぁ」
だめだよ。快成はまだこっち来ちゃダメ。
悩まないでやっぱやめるって言ってほしい。
「…じゃあ、理想の死に場所探して旅しよう」
「え、」
「義也とかとでもいいんじゃない?」
「色んな所巡ってここがいいかもって探すの」
旅、我ながらいい案かも。
快成お出かけ好きだし、義也と一緒に遊びに行ってるのインスタでよく見る。
考え直してくれたら万々歳だし、いい場所が見つかるまで生きててくれそう。
「牧さん、二人でどっか行こうよ」
「オススメのところ案内してよ」
二人で理想の死に場所探しの旅。
快成はどんな所が好きかな。寒いの苦手だろうし、キレイな景色好きそう。そんで行ったことなさそうで、俺が詳しい所。
「「沖縄」」
「っ! 被ったね」
「ほんとに案内してくれるんすか?」
「もちろん」
「いい場所いっぱい知ってるから」
快成が納得するまで一緒に探し続けてあげるよ。
まだこれから何とでもなるよ。
うん。目がマシになった。もう大丈夫。
これで快成はまだ生きててくれる。
「じゃあ今度どこ行きたいか考えよ」
「うん」
「牧さん、ありがと」
ぽつり、呟いた快成の頭をぐしぐしと撫でた。






