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【第一章】
第3話【動き出す歯車】
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大図書館に向かうために、賑やかな街の中を歩いているエメルダとサニー。
まだ出会ったばかりの二人だったが、サニーの持ち前の明るさのおかげで、道中の空気はどこか和やかだった。
サニーがふと思い出したように、中折れ帽のつばを少し持ち上げてエメルダの顔を覗き込んできた。
サニー「なぁなぁ、エメルダの大切な人の見た目ってどんな感じなのだ? 俺、すっごく気になるのだ!」
エメルダ「あー……これだよ」
エメルダは歩みを止めることなく、胸元から一枚の大切な写真を取り出してサニーに見せた。そこに写っていたのは、純白の髪に、夕日のような美しいオレンジ色の瞳をした猫の獣人の姿――エメルダがかつて愛し、そしてカルト教団「ネクロ・エデン」によって理不尽に命を奪われた、かけがえのない人だった。
サニー「めちゃくちゃ綺麗なのだ!美人なのだ!」
エメルダ「そうだな。あの子はいつも優しくて、思いやりのある子だったんだ。俺にとっては、何よりも大切な存在だよ」
静かに語るエメルダの緑色の瞳には、深い愛おしさと、決して消えない切なさが滲んでいた。差別を何よりも嫌うサニーは、他人の大切な存在を奪った「ネクロ・エデン」への怒りを隠そうともせず、小さな拳をぎゅっと握りしめた。
サニー「エメルダの大切な人を殺したネクロエデンは、俺が絶対に許さないのだ!」
エメルダ「……!」
いつも冷静なエメルダが、出会ったばかりのサニーの真っ直ぐな言葉に驚き、わずかに目を見張った。復讐の炎でガチガチになっていた心が、目の前の呑気な男の純粋な優しさによって、ほんの少しだけ解かされる。エメルダは少しだけ目元を緩め、ふっと小さく微笑んだ。
エメルダ「……ふっ。ありがとな, サニー」
サニーに御礼を言ったエメルダは、少し照れくさそうに写真を仕舞い、再び前を向いて歩き出した。サニーは「おう!」と元気よく頷くと、きょろきょろと周囲の複雑な建物を見回す。
サニー「それにしても、大図書館ってどこにあるのだ? 街が広すぎて、俺には全部同じ建物に見えてくるのだ……」
エメルダ「沈着冷静な俺でも、この複雑な街並みには少し手を焼くな。確かこの近くにあるはずなんだが……」
二人が足を止め、大図書館の場所を探してあたりを見渡していた、その時だった。
???「……ちょっと。そこでキョロキョロして、完全に迷子ね、あなたたち」
背後からかけられたのは、冷たくて透き通るような、けれどどこか心地よい女性の声だった。
エメルダとサニーが同時に振り返る。
そこに立っていたのは、美しいミントグリーンの髪と肌を持つ、不思議な雰囲気をまとった女性だった。腰には、手慣れた様子で銃が携えられている
サニー「おっ、綺麗な人なのだ! もしかして大図書館の場所を知っているのか?」
オーシャン「……オーシャンよ。オーシャン・マリス。別にあなたたちを助けたくて声をかけたわけじゃないわ。ただ、その大図書館なら、私がこれから向かう場所と同じだから……ついてきたいなら、勝手についてくれば?」
フイッと顔を背けるオーシャン。クールな口調とは裏腹に、その態度はどこか不器用な優しさを隠しきれていない。
エメルダ「オーシャン、か。俺はエメルダ。こっちはサニーだ。……助かるよ、案内してもらえるとありがたい」
オーシャン「べ、別にあなたたちを案内するなんて言ってないでしょ……! 勘違いしないで、私たちはただ目的地が同じなだけ。仲間でもなんでもないんだからね」
オーシャンは少し頬を赤くしながらも、二人を先導するように大図書館へと歩き出した。
サニー「なぁなぁエメルダ、あの子、怒っているのか? それとも照れているのか?」
エメルダ「……さあな。だが、悪い奴ではなさそうだ。行こう、サニー」
新しく出会ったオーシャンと共に、三人は街の中心にそびえ立つ巨大な石造りの建物――大図書館へと無事に到着した。
館内に入ってもオーシャンは二人と行動を共にし、カルト教団「ネクロ・エデン」の手がかりを探すため、膨大な古い文献が並ぶ棚へと向かった。
沈着冷静に何冊もの襲撃記録をめくり、詳細に情報を比較・分析していくエメルダ。しかし、いくつかの事件の遺体記録を並べて調べていた時、エメルダは奇妙な矛盾に気がつき、その指をピタリと止めた。
サニー「……? どうしたのだ、エメルダ。難しい顔をして、何か見つかったのか?」
エメルダ「サニー、オーシャン、これを見てくれ。……ひどく不可解な事実がある」
エメルダが指し示したページには、美しい紫色のドレスを身にまとい、額に神聖な輝きを宿した高貴な女性の姿が描かれていた。
エメルダ「『宝石の女王・アイリス』。彼女もネクロ・エデンに襲撃され、命を落としたと記録されている。殺害の犯人は間違いなくネクロ・エデンだ。……だが、殺害に使われた『特殊な武器の傷跡』の形が、俺の大切な人が奪われたときの傷と、完全に一致しているんだ」
サニー「……っ! じゃあ、女王様もあの子も、同じ特殊な武器であいつらに殺されたってことなのだな!?」
オーシャン「……ちょっと待って。それ、おかしいわよ」
エメルダの隣で本を覗き込んでいたオーシャンが、腕を組んで鋭い声を上げた。彼女のミントグリーンの瞳が、エメルダの広げた別の資料へと向けられる。
オーシャン「私は武器のプロよ。だからわかる。カルト教団『ネクロ・エデン』は本来、剣や槍といった量産された『普通の武器』を使って殺害を行う組織のはずよ。なのに、なぜアイリスと、あなたの広げている写真の2人だけを、こんな特殊な武器で殺害しているの……?」
エメルダ「あぁ、そこが最初の謎だ。奴らはあの子たちに対して、何か特別な意図を持ってその武器を使った。……だが、不可解な事実はそれだけじゃない。この机に広げた、最近街で起きたその他の被害者たちの記録を見てくれ」
サニー「その他の被害者……? どうなっているのだ?」
エメルダ「普通の武器を使うはずのネクロ・エデンの襲撃事件とされているのに、最近のその他の被害者たちは、刃物ではなく、全員『何者かに激しく殴られて』死亡しているんだ」
サニー「え……? 殴られて死亡……!? あいつらがそんな殺し方をするわけないのだ!」
エメルダ「その通りだ。つまり、世間はこれらをすべてネクロ・エデンの仕業だと一括りにしているが、実際は違う。アイリスと俺の大切な人を殺したのは、特殊な武器を使った本物のネクロ・エデンだ。だが――最近街で他の被害者たちを撲殺しているのは、ネクロ・エデンではない『別の何者か』だ」
サニー「な、なんだって……!? じゃあ、教団の仕業に見せかけて、裏で人を殴り殺している奴が別にいるってことなのだな!?」
エメルダ「あぁ。ネクロ・エデンが何のためにあの子たちを特殊な武器で殺したのか。そして、その影で人々を撲殺している何者かの正体は何なのか……。調べるべき謎が増えたな」
エメルダの鋭い考察を聞き、横にいたオーシャンはフイッと顔を背けながらも、腰の銃をしっかりと握り直した。
オーシャン「……フン、ただの迷子かと思ったら、意外と頭は切れるのね。真犯人の意図も、その裏で暗躍する撲殺魔の正体も、私の武器の知識があれば突き止める手がかりになるかもしれないわ。……勘違いしないでよね? あなたを助けたいわけじゃなくて、私がその不可解な謎と未知の武器に興味があるだけだから!」
オーシャンは少し頬を赤くしながら、エメルダの目をまっすぐに見つめた。
オーシャン「一人で死に急がれるのも寝覚めが悪いし、この謎の真相を暴くまで、私が一緒に行ってあげてもいいわよ。……仲間になってあげる、って言ってるの。文句ないわね?」
サニー「本当か!? 俺たちの仲間になってくれるのか! すっごく心強いのだ!」
エメルダ「……。あぁ、文句なんてないさ。心から歓迎するよ、オーシャン」
エメルダの緑色の瞳に、新たな光が宿る。
本当にネクロ・エデンに奪われた、大切な人と宝石の女王アイリスの命。そして、その裏で人々を殴り殺している正体不明の影。
二つの大きな謎を追いかけるため、彼らの復讐と真実の旅路が、今ここから3人で新しく動き出す――。
続く…
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こんばんは。作者のエメラルドです。
またもや新キャラのオーシャンが来ましたね✨️
ネクロ・エデン以外にも敵がいることに気づいたエメルダ達。
今後が楽しみですね✨️
短いですが、不定期更新なので来週は小説ではなく普通の投稿になる可能性もあります。
ご理解よろしくお願いします。
コメント
5件
キャラ紹介↓
オーシャン、いいキャラですね!ツンデレ口調の裏にある不器用な優しさが伝わってきます。エメルダが「沈着冷静な俺でも」と自称するのも性格がよく出ていて好きです。そして「ネクロ・エデンの凶器と一致する傷」と「撲殺事件」が別の犯人の可能性を示唆する展開……伏線の張り方が丁寧だなと感じました。3人の掛け合いも楽しく、続きが気になります!
NAGI [さかもっさん]
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