第3話:「生還者」
《映像記録:202X年11月、地下モニタールーム》
ノイズ混じりの画面に現れた男――山本蓮は、以前と変わらない笑顔を浮かべていた。
だが、その瞳にはかつてなかった“冷たさ”があった。
彼は、まるで録画映像のように話し始めた。
「こんばんは。久しぶりですね、皆さん。
“告白ノ間”の元・スピーカー、山本蓮です。
死んだと思ってました? ごめんなさい、生きてました」
会場がどよめく。蒼の顔は真っ青だ。
狐面の男が、低くつぶやく。
「……“遺言映像”ではない。これ、今の蓮のライブ映像だ」
蒼:「……どういうことだ? あいつは逮捕されたはずだ。
警察の発表でも“死亡扱い”になったはず……!」
狐面の男:「それが、“違った”ということだ。
蓮は“捕まった”んじゃない。保護されたんだ――政府に」
蓮の映像が続く。
「“告白ノ間”というチャンネルが、ただの暴露配信だと思ってたでしょ?
実は違うんです。
これは“選別の場”でした――情報と、記憶と、正義の価値を測る“人間選別”です」
蒼:「……選別?」
蓮:「この世には、“隠されている真実”と、“話すべき嘘”がある。
俺たちは、その境界線を試されていたんだよ。最初から全部、ね」
映像が切り替わる。
そこには、蒼が初めて蓮と出会った、あの警備室の映像があった。
角度が違う。天井からの監視カメラ――民間のものではない。
蓮の声が被さる。
「君が話してくれて、嬉しかったよ、蒼。
でも君の“真相”には、まだ一つだけ“抜けている記憶”がある。
それを“思い出したとき”、君はきっと“敵”になる」
蒼:「……記憶?」
蓮:「君は“ある選択”をしたんだ。
けれどそれを、君の脳は“なかったこと”にしている。
さて――この配信の最後に、もう一度聞くよ。
“本当に、君は、誰を助けた?”」
映像が切れ、スクリーンが暗転する。
狐面の男が立ち上がり、会場に向けて宣言した。
「“#真相をお話します”最終ステージは、“記憶の再構成”です。
参加者全員は、1週間以内にそれぞれの“真実の映像”と対面し、
最終審判――“The End Talk”にて、“最後の語り”を行うことになる」
渡辺凛が、蒼の腕を掴む。
「蒼さん……“思い出したら敵になる”って、どういうこと?」
蒼は、小さく首を振った。
「分からない。でも……俺は、誰かを助けた。
そう思ってた……。けど――もしかしたら、助けた相手が間違ってたのかもしれない」
狐面の男が口にした。
「君の脳の奥底には、“鍵”がある。
次回、君の番だ――田中蒼」
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