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「ほーら、はやくきて!」
「えーっ、ほんとに行くんですか…?」
当たり前でしょと軽くツッコミを入れて私の腕をぐいぐいと引っ張る。半ば強制的に店内に入れられた私を気にする素振りも見せず先輩は誰かを指名しはじめた。
(まさか自分がこんな…ホストに行くなんて…)
「…うう、先輩私やっぱりむ……」
無理と言い切る頃には先輩はとっくにいなくなっていた。一人で唖然としていると1人の男の人が私に話しかけてきた。
「こんばんは。初めての方ですか?」
「あっ、えっと、初めてです。誰か指名しないといけないんでしたっけ」
「指名したい方がいるのでしたら指名できますよ。」
つまり指名しなかったらランダム…ってことかな……。ぶっちゃけランダムでもいいけど変な人になったら怖いしなぁ……
「……」
男の人に全く興味のない私からすると全員が同じ顔に見えてしまう。適当に選んでさっさと帰ろう。そんなことを考えているとふと、ある人に目が止まった。
「…あの人……がいいです……」
「やっぴー!!コーちゃん参上したっぴー!」
「わっ!?こ、こんばんは……」
席で少し待っていると私の指名した人がハイテンションでやってきた。チャラそうだったけどここまでハイテンションだとは思わなかった……。
「指名ありがとうー!君みたいなかわいい子に指名されて僕うれぴーな〜!!」
「か、かわいぃ…って…」
そっかホストってこういうものだもんね…慣れないなぁ…。
「あはは、可愛いって言っただけで照れちゃうんだね〜」
意地悪そうに目を細めて笑う顔がなんだか幼くみえた。でも発言は大人びていてギャップにやられそうになる。この人人気高そう…
「あの私こういうところ初めてで…」
「初めてなんだねー!ちなみに僕のこと指名してくれたのはなんでなのー?」
「…えっと、髪の毛……ぴんく可愛いなって…」
馬鹿げた理由で指名してしまったことを後悔していると隣からあははっと優しい笑い声が聞こえてきた。
「ふふ、面白い理由で指名されちゃったなぁ」
「ごめんなさい…浅はかな理由で選んじゃって……」
「えー全然いいよ?だって」
いきなり距離を詰めて私の手を両手で握って彼は続けた。
「姫とこうして出会えたんだから。」
「…ぇ…ぁ……」
今まで男の人に興味なんて全くなかったのに、何故か心臓が破裂しそうなほど音を立てていた。顔も赤くなっているのがわかり思わず顔を背ける。
「ありゃ、ちょっと意地悪しすぎたかな〜」
「慣れてない……から……すみません……」
か細い声で呟くとそっかそっかと優しい相づちが聞こえてくる。
「…あ、そういえばお名前って」
「コーイチだよー!コーちゃんって呼んでもいいよ?」
「コーちゃ…は恥ずかしいのでコーイチさんで……」
ホストの人ってみんなこんな感じなのかな。距離感狂ってる……。
「じゃあ先輩に無理やり連れてこられてホストに来たってことかー!ならその先輩に感謝だね」
「…えへへ」
あれからお酒を呑みながらコーイチさんと色んな話しをした。気づけば夜中になっており明日のことも考え先輩と一緒に今日は帰ることにした。帰り際エレベーターの前まで送ってくれたコーイチさんに挨拶をしてエレベーターに乗り込んだ。振り向くとにこりと笑顔を見せて「またおいで」とつぶやかれ扉はしまった。
あれから一人でもクラブワンに通っているのはまた別の話……