ある休日の昼下がりのこと。 第四分隊長の副官であるモブリットからクソメガネの様子を見て来て欲しいという訳の分からない頼みをされた。理由はアイツが翌朝から熱っぽくなっているにも関わらず、おまけに班の奴らを部屋に入れない為に鍵を掛けているらしい。モブリットの推測によると、来月の巨人捕獲の許可を受け入れて貰う為に、上への説得方法を寝ずに試行錯誤しているとか。 もちろん扉を蹴破る方法はあったものの、コイツにはその勇気が無かったらしい。 「本人は大丈夫と仰っていたんですが、かなり声が掠れていて…。」 (ったく、部下に心配かけさせやがって。あのクソメガネ。) リヴァイはモブリットの頼みを受け入れ、ハンジの部屋へ向かった。それにしてもアイツが風邪を引くなど、7年間の付き合いでも無かったことだ。 まぁ、ろくにまともな生活をしなかったアイツが悪いと思った所で部屋に着いた。軽く三回ノックをすると咳き込みながら返事をする声が聞こえた。 それに溜息をつき、「開けろ。」と一言放すと部屋の中でドンガラガッシャーンという効果音が付きそうな物音が聞こえ、リヴァイは眉間の皺を寄せた。 「おい、何だ今の音は。」 いかにも部屋が片ずいていない光景が頭に浮かび上がると掃除道具を持って来るか…。とまた溜息が出る。 「……いい加減開けろ。お前のとこの部下が心配してるだろうが。」 少し経ってから「無理。」という返事が返ってきて リヴァイは思わず舌打ちをする。 「扉を蹴破られたいか?」 これも、無理と返される。そろそろこめかみの辺りがピクついてきて、リヴァイは構えの形に入る。 扉に向かって蹴りを一発入れようとした瞬間、何故か身体中を布で覆い、恐る恐る扉をギィ…と開ける女が現れた。そして一目散にベッドに逃げ込むように布団を被った。自分に移さない為にした所為だろうか。…そんなことより、部屋がやはり汚い。 書類はバラバラになって床中に散らばめられており、本は大量に積められている。ベッド周りには衣服や下着が………あ? リヴァイは頭の中を一旦整理し、もう一度その床を見た。……やはり、下着だ。ということはコイツは今、布団の下には何も着ていないと考えられる。 「ッ、何考えて……」 ーキュッ 「リヴァイ、ぎゅってして…?」 「…………………………………………………は?」 布団の隙間から白い腕が出されてリヴァイのシャツを人差し指と親指によって引っ張られる。 頬が真っ赤に染まり、目がトロンとした女が布団からひょこっと顔を出して、リヴァイをジッと見つめる。 「…………お前何して」 「……ッ!?うわぁぁぁぁぁぁ!!!!」 突然の叫び声に思考停止した脳が動くと、ハンジは布団の中で激しく動き回っていた。いや、全く理解が出来ない。明らかにさっきの言葉は奇行種と言えるだろう。まぁ、いつもも奇行種だが。 「リヴァッゴホッゴホ今のは…ごほッ」 「……何となく状況は掴めた。それが鍵を掛けていた理由だな?」 「察しが、早くて…助かるよゴホッゴホッ」 人間は弱ると普段抑制されている言葉を放してしまうらしい。いや、そうなるとさっきの言葉はなんだ。ただの甘えか?もしそれがコイツの本音だとしたら……。 「リヴァイ………き。すぅ、すぅ…」 布団越しの声をリヴァイの耳は逃がさなかった。
コメント
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見返したら改行の所がおかしくなっていますがお許しを:( ;´꒳`;)