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◻︎奈緒が投下した爆弾
二人でイチャイチャでもしてるのかと思ったけど、リビングには和樹だけだった。でも、なんとなく桃子がいる気配は感じる。どこかで様子を伺ってるいのだろう。
「こんにちは」
「来たのか」
振り向きもせず、和樹が答える。
「約束したでしょ?一度、きちんと話しておかなければならないことがあるからって」
和樹は新しいパステルカラーのソファに腰掛けていたが、私はその場で立ったまま話す。桃子が選んだらしいソファになんて、気持ち悪くて座れない。
「僕が訊きたいのは、このことだ、どういうつもりだ?!」
そう言ってスマホからSNS画面を出して、私に見せた。
「なに?これ」
「とぼけるな、お前だろ?LINEや電話をブロックされた腹いせか?」
「ちょっと見せて」
そこには、男(和樹)と女(桃子?)が腕を組んでホテルから出てきたところらしい写真があった。どちらも目の部分に黒い線が入っていて、知らない人が個人を確定するのは難しいだろう。でも、私のように和樹のことを知ってる人間が見たら、目隠しなんてなんの意味もないくらいにわかりやすい写真だ。
そしてそこには、コメントが添えられていた。
《この男性を探しています》
という見出しに
《私の友達が、“主人に連絡がつかない”と困っています。この女性はその友達ではありません。が、ご主人と特別な関係のようです。お心当たりの方は、ご連絡ください。私の友達を助けてください。拡散希望!》
___奈緒ったら!
いつのまにか、こんな写真を撮ってくれてる。探偵になったみたいで面白かったと言ってたけど、素質はあるかもしれない。ククッと笑いそうになるのをこらえる。
「お前だろ?こんなことするのは!」
「なんのこと?私、こんな写真知らないし、そもそもこの写真はあなたなの?なんの写真なの?」
ビクッと黙る和樹。この写真を自分だと認めると、不倫の証拠写真ということになるからだ。私は今まで一度も、不倫のことを口にしたことはない。それに、この写真も今初めて見た。
“いいのが撮れたけど見ない方がいい。愛美の反応がお芝居がかったら作戦がバレるかもしれないから”
___さすが、奈緒
和樹はどんな言い訳をしてくるのだろうか。
「そんなことはどうでもいいだろ!」
「どうでもよくない、もしかして不倫してたの?だから早く離婚したかったの?」
初めて知りました、とうまくお芝居できてるかなぁと思いつつ。
「あー、そうだよ、いまさらそれがわかったところでもう離婚は成立してるんだ、なんの問題もないだろう?!」
腕組みをして、ふんぞり返る元、我が夫。
___ふーん、開き直るわけだ
私の頭の中は、いたって冷静だ。
「酷い人ね。たしかに法律的にはなんの問題もないかもしれない。でもね、私への謝罪は一言もないの?私ばかりか、娘たちのことも騙してたってことよね?」
「それは………」
顔を覆ってショックを受けた、フリをする。
「この離婚が最初から、あなたの不倫が原因の離婚だったら、あなたは私に謝ってくれたの?“他に好きな人ができた、ごめん”とか言ってくれたの?」
「………」
「それも言いたくなかったの?だから隠し通したの?」
「………」
和樹は何も答えない。
「あなたが不倫してたなんて、私が知る必要はなかったよね?だって離婚は成立してるんだもん。なのになんでいまさら、わざわざ言うのよ」
「だから、それはこの写真のせいで!」
「写真なんて知らないわよ!不倫のことも知らないならその方がよかったのに。どうしてそこまで私をバカにするの?」
「…それは………」
また言葉に詰まる和樹。
「せっかく、すんなり離婚できたのに、何が不満なの?おかしなことしてるのはあなたとその不倫女でしょ?」
「………」
「そんな写真が出ても、離婚が成立してるってわかってたらそう抗議すればよかったんだし。いや、そもそも、それがあなただという証拠はないのに、何をテンパってるの?」
私は止まらずまだ続ける。