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卒業まで、あと5日
第1話 残り5日
「なあ、悠真。卒業したら何すんの?」
昼休み、窓際の席で弁当を食べていた俺――**桜井悠真(さくらい ゆうま)は、友人の高橋陸(たかはし りく)**に尋ねられた。
「別に。普通に大学行くだけだけど」
「つまんねえなあ。もっとこう、卒業したら世界一周するとかさ!」
「お前、進学先決まってないだろ」
「うっ……今それ言う?」
陸が露骨に顔をしかめる。
思わず笑ってしまった。
こんなくだらない会話も、あと少しで終わる。
三年間通い続けたこの教室。
毎朝、眠い目をこすりながら歩いた通学路。
放課後、友達と寄り道したコンビニ。
当たり前だった毎日が、もうすぐ当たり前じゃなくなる。
そう考えると、少しだけ寂しかった。
「悠真くん、お昼終わった?」
不意に声をかけられ、顔を上げる。
そこにいたのは、**水瀬美月(みなせ みづき)**だった。
肩まで伸びた黒髪に、柔らかい笑顔。
俺と美月は、一年生の頃からの付き合いだ。
席が近かったことがきっかけで話すようになり、気づけば一緒に帰るのが当たり前になっていた。
「まだ食べてるけど、どうした?」
「今日、一緒に帰れる? ちょっと寄りたいところがあるんだ」
「いいよ。どこ?」
「秘密!」
美月は楽しそうに笑った。
その笑顔を見ると、なぜか少しだけ胸が苦しくなる。
俺は、ずっと前から美月のことが好きだった。
でも、伝えたことはない。
今の関係が壊れるのが怖かったからだ。
告白して、もし気まずくなったら。
もし、今までみたいに笑い合えなくなったら。
そう考えるたび、俺は何も言えなくなった。
「じゃあ、放課後に昇降口で待ってるね!」
美月はそう言って、自分の教室へ戻っていった。
「……お前ら、付き合ってんの?」
隣から陸がニヤニヤしながら聞いてくる。
「付き合ってねえよ」
「ふーん。まあ、頑張れよ」
「何をだよ」
「さあな!」
陸は笑いながら弁当の最後の一口を放り込んだ。
窓の外では、春の風に桜の枝が揺れていた。
卒業式まで、あと5日。
俺はまだ知らなかった。
この何気ない一日が、三年間の高校生活を振り返る、特別な始まりになることを。
コメント
1件
やー、第1話読んだよ🤍 卒業までの5日間か…何気ない日常が「当たり前じゃなくなる」って部分、すごく響いた。 悠真が美月に告白できない気持ち、すごくわかる…今の関係壊れるの怖いよね。 最後の「特別な始まりになる」って一文で、この先どうなるんだろうって胸がざわついたよ。 つばささんの文体、優しくて切なくて、すごく好きだなあ。 続き、静かに待ってます🌙
#学校
霧夜
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