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#クロスオーバー
유키에
52
菅原は人間が嫌いだった。
正確に言えば、“人間の醜さを見ないふりしている人間”が嫌いだった。
「菅原!! 貴様また任務を放棄したらしいな!」
城の廊下に怒号が響く。
目の前には、鎧を着込んだ騎士団長。
額に青筋を浮かべ、今にも剣を抜きそうな勢いだった。
「いやぁ、放棄っていうか」
菅原は困ったように笑う。
「話し合い?」
「敵と何を話し合う必要がある!!」
「ありますよぉ。結構」
「貴様……ッ!」
周囲の兵士達も露骨に嫌悪を向けてくる。
知っている。
自分が嫌われていることくらい。
魔法使い。
人外。
得体が知れない。
しかも敵側と仲が良い。
気味悪がられない方がおかしい。
「……ほんと、分かりやすいよねぇ」
ぽつりと呟く。
「何?」
「んーん」
菅原は笑った。
いつものように。
何も気にしていないように。
そうしていれば、“面倒”にならないから。
その夜。
菅原はいつものように魔王領へ来ていた。
侵入。
……というより。
「お、⬛︎⬛︎⬛︎くん来た」
「こんばんは〜」
普通に迎え入れられていた。
城のバルコニー。
月明かり。
紅茶の香り。
“???”はテーブルに頬杖をつきながら笑っている。
「今日は何されたの」
「役立たずって言われた」
「毎回言われてるね」
「飽きないよねぇあの人達」
くすくす。
まるで他人事みたいに笑う。
“???”は菅原をじっと見つめた。
「……辛くないの」
「ん?」
「人間側にいるの」
少しだけ、沈黙。
風が吹く。
菅原の薄灰の髪が揺れた。
「まぁ、正直しんどいかなぁ」
軽い声。
けれど。
その目は笑っていなかった。
「俺、人間じゃないし」
「うん」
「頑張って馴染もうとしても、“違う”って顔されるんだよね」
最初から。
ずっと。
優しくしても。
助けても。
結局返ってくるのは恐怖と嫌悪。
「……疲れた?」
「ちょっとね」
“???”は静かに紅茶を飲む。
「じゃあ来なよ」
あまりにも自然だった。
まるで。
“帰っておいで”と言うみたいに。
「君、向こう向いてないよ」
「ひどくない?」
「事実」
「否定できないの嫌だなぁ」
菅原は笑う。
その時だった。
バルコニーの窓が勢いよく開いた。
「なー魔王サマ!!!」
飛び込んできたのは日向だった。
「影山がオレのプリン食った!!」
「知らないよ」
「絶対アイツ!!」
「証拠は」
「勘!!」
「雑」
その後ろから影山も来る。
「うるせぇなボゲ」
「食ったろ!!」
「食ってねぇ」
「顔が犯人!!」
「なんだその理論」
さらに五色まで現れた。
「お前ら廊下走んなって言われてるだろ!」
「五色はうるさい」
「はぁ!?」
騒がしい。
喧嘩。
怒鳴り声。
でも。
誰も菅原を“気味悪い”目で見ない。
「……ほんと変な奴ら」
思わず零れる。
「ん?」
「いや」
菅原は小さく笑った。
「居心地いいなぁって」
数日後。
菅原は人間側の会議室にいた。
「魔王軍幹部、影山飛雄の討伐作戦を開始する」
空気が張り詰める。
机に地図が広げられる。
「なお、囮は菅原隊員に任せる」
「……へぇ?」
菅原は目を瞬いた。
「貴様は敵と親しい。誘き寄せるくらいは出来るだろう」
「断ったら?」
「命令だ」
冷たい声。
周囲も当然のように頷いている。
――あぁ。
そうなんだ。
菅原はぼんやり思った。
この人達にとって自分は。
仲間じゃない。
ただの便利な駒。
「……そっか」
「なんだその顔は」
「いや別に」
にこり。
いつもの笑顔。
でも。
ーーーーーその瞳は完全に冷えていた。
夜。
菅原は魔王領へ向かう。
今日は酷く静かだった。
「⬛︎⬛︎⬛︎くん?」
“???”が首を傾げる。
「どうしたの」
菅原はしばらく黙っていた。
それから。
「……俺さぁ」
ぽつりと呟く。
「もう疲れちゃった」
初めてだった。
こんな声を出したのは。
「頑張っても意味ないんだもん」
助けても。
笑っても。
結局、“異物”。
「なら」
“???”が立ち上がる。
そして。
菅原へ手を差し出した。
「こっち来る?」
優しい声だった。
責めもしない。
否定もしない。
ただ、当たり前みたいに受け入れる声。
菅原はその手を見つめる。
後ろでは日向達が騒いでいた。
「五色それオレの!!」
「違います!!」
「ボゲうるせぇ」
「影山も黙れ!!」
騒がしい。
めちゃくちゃ。
なのに。
不思議と安心する。
「……はは」
菅原は笑った。
「ほんと、変なセカイ。」
そして。
その手を取った。
「じゃあ、お世話になろっかな」
一瞬。
空気が静まる。
次の瞬間。
「えっマジで!?!?」
日向が叫んだ。
「うっせ」
影山が顔をしかめる。
五色は目を丸くした。
「え、寝返るんですか!?」
「まぁね〜」
菅原は笑う。
すると“???”が嬉しそうに目を細めた。
「歓迎するよ、⬛︎⬛︎⬛︎くん」
その瞬間だった。
菅原の背後で、巨大な魔力が弾ける。
白銀の圧倒的な光。
人間側が放った追跡魔法だった。
「――裏切り者を捕縛せよ」
無数の魔法陣。
殺意。
それを見た菅原は。
静かに笑った。
「ほらね」
やっぱり。
最初から。
自分は“敵”だったのだ。
コメント
1件
ああ、もうこれ……胸がギュッてなったわ……。 菅原の"普通の笑顔"の裏にある諦観と疲れ、めっちゃ刺さった。「頑張っても意味ない」って本音が漏れた瞬間、こっちも息止まったよ。それでいて魔王領の騒がしいけど誰も"異物"扱いしない空気との対比が美しすぎる。最後の「やっぱり最初から自分は敵だった」で完全に持ってかれた。第2話でこの温度差、すごいわ。この先どうなるんだろう……続きが気になって仕方ない🔥