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───森をさまようリヨク。
ここに住み始めてから、1ヶ月ほど経った。
毎日やる事があって、楽しい日々。
──「えーっと、これと──これと──これと──」
リヨクは葉っぱの手紙に書かれたレシピを確認しながら、植物の皮でできた袋に、花や葉や実を摘み入れていく。
友達? もできた。
──「やぁ! これ、食べれるかな?」
頭を横に振る猿たち。
「……じゃあやめとく。ありがとう!」
この猿たちは友達──いや、ぼくのファン?
いつもぼくのヒーロー劇を見に来てくれる。
リヨクの森での1日は、
朝、カラスの鳴き声と共に起きると森を探索しながら食料集め。
昼、家に戻りご飯を食べた後、家の近所で日が暮れるまでヒーローごっこ。
晩、家の中でご飯を食べた後、探索している時に見つけた変わった形の石と石を戦わせて遊ぶ。
ぼくは毎日、飽きることなく何度もこの作業を繰り返していた。
ヒーロー劇を終え家に帰ってきたリヨク。
──「ただいまー」
ぼくは家に誰もいなかったとしても、防犯のために言うことにしてる。
この森で人にあったことある?
いや、ない。
なら意味なくない?
じゃあ、福寿草に言ってるってことにするよ。
この1人2役の会話も日常茶飯事だ。
「蒸した《レル》の実に、《アカマヒョルテ》に付着していたゼリーを溶かしてかける──はい、ヤパルミュレルの完成。いただきます。はむっ」
作り方を覚えてから毎日食べてる。けど、まったく飽きない。
リヨクは、腹を満たした後、石学の授業で作った石の箱を持ってベッドに向かった。
石の箱から取り出した、変わった形の石のコレクションをベッドの上に並べると、前回やった物語の続きを繰り広げる。
「おれの名はブラック。この軍団をまとめる最強の悪者だ」
「おれの名はグリーン。かかってこいブラック」
リヨクは、左手で大きな黒い石と小石を操り、右手で中ぐらいの緑色の石を操る。
黒い石を持つ手を振りながら「これでもくらえ」と言うと、大量の小石をかき集め、緑色の石を囲う。
──敵兵として扱われていた小石は、物語が進むにつれて、黒い石が放つ技としても機能するようになる。
このような自由奔放な役割の転換は、物語の創造者であるリヨクの遊びの中での流動性を示唆している。
次にリヨクは、小石に埋もれた緑色の石を掴みながら、用意していた30cmほどの蔦を持ち、黒色の石に蔦を絡ませていく。
「ほう……あれをくらってまだ生きているとは……しかし! こんな弱い攻撃、何回おれに攻撃してもおれを倒すことはできない!」
リヨクは、黒い石に絡み付かせた蔦を解き、擬音を吐きながら2つの石をぶつける。
「コンッ。コンコンコンッコンコンコンッ」
石と石とがぶつかり合う音がしばらく続く──やがて「やるな……」とつぶやくと、黒い石はリヨクの手からポトっとベッドに落ちた。
リヨクは、石をベッドの端に寄せると、力尽きたように眠りについた。
──流れるように時は過ぎ、ここに来てからもはや何日経ったかわからない。
「へーんしん! 《成長》」
最初は腕や足に絡みつかせるのがやっとだったが、今ではコツを掴み、芝で全身を覆い──
「仮面戦士リヨク、グリーンアーマーモード!」
──リヨクは、緑色の鎧を完成させた。
「《成長! 》グリーンアルテメット(アルティメット◎)」
リヨクは細長い葉っぱを生長させ、剣のようにピンとさせた。
「さぁ、こい!」
大きな茎木に向かって葉っぱの剣を構える。
──「やぁ!」
茎木に傷がついていく。
「とどめだ!」ズバッ!
茎木は切り倒されてはいないが、どうやら勝ったようで、リヨクは「《逆成》」といい、葉っぱの剣を消した。
「パチパチパチパチ!」
森の猿たちが拍手した。
「どうもどうも」
リヨクは、一列にならぶ猿たちに果物をもらうと、次々に握手していった。
「また明日ー! 次はついにボスだよ」
「ウキー!」
リヨクは、猿たちが去るのを見送ると、森を探検しはじめた。
朝昼晩のルーティンが少し変わったのだ。
この実、食べれるやつかな……。
──「あ、いたいた。おーい、この実食べれる?」
猿は、頭を横に振った。
「ありがとう!」
リヨクは、その実を持って帰るのをやめた。
──「これ使えそう」
リヨクは、人型の石を拾うと、ポケットの中にしまった。
「今日は新キャラの登場だ」
家に戻ったリヨクは、箱から石を取り出し、ぶどうを食べながら戦わせはじめた。
植物術と石術、押力と引力を駆使し、レベルアップした攻防が繰り広げられる。
石の形も、どれも人型だ。
──「あー、楽しかった」
森探索で集めた石のコレクションで遊び終わったリヨクは、ご飯を食べ、福寿草に手を合わせる。
「毎日楽しい…お猿さんファンもできて…自由だし…けど、オウエンと一緒なら、もっと楽しいと思うけど……はぁ……」
メヒワ先生からもらった手紙を見る──〝毎晩、前向きな言葉をかけて寝てみてください。気が向くと運を与えてくれます。〟
「毎日、声かけてるよ……」まだかな……。
──次の日。
リヨクはいつものように、猿たちに見守られながらヒーロー劇を披露する。
森のギャラリーは増え、猿や鳥、リスなどは茎木から。
鹿やうさぎ、たぬきなど、他の動物は地上から観戦していた。
──「うっ、うっ、うっ」
静かにそびえたつ茎木にボコボコにされていくリヨク。
「くそっ、流石ボス。手強いな……」
──「ぐぁんゔぁへ!」
リヨクは聞こえてきた声援に「おう」と言うと、口を拭い、茎木に斬りかかる──スバッ!
森のギャラリーに拍手され、リヨクは、まあまあまあと言った感じで、少し照れながら葉っぱの剣を逆成する。
──「かっこ、よ、かっら!」
「いやー、ありが……ん⁉︎今……喋って……」
声がした方をゆっくりと見るリヨク。
──黒髪の少女が立っていた。
「え……きみは……」