都会の喧騒から少し離れた古い図書館の片隅で、叶は葛葉と出会った。葛葉は黒いコートに身を包み、どこか古風な雰囲気を漂わせる青年だった。鋭い目つきと、時折見せる柔らかな笑顔に、叶はすぐに惹かれた。
「この本、面白いよ。吸血鬼の話なんだけど、ちょっと現実味があるんだよね」
叶が手にしていた古い小説を指さして、葛葉は微笑んだ。その笑顔には、どこか秘密を隠しているような影があったが、叶はそれに気づかなかった。二人はすぐに意気投合し、週末ごとに図書館で本を読み、語り合うようになった。
葛葉は自分の過去をあまり語らなかった。叶は彼が少し変わっていると思いつつも、そのミステリアスな魅力に惹かれ、親友と呼べる存在になった。葛葉は叶の純粋さに心を許し、彼の笑顔に癒されていた。だが、葛葉の胸には重い秘密があった——彼は数百年にわたり生き続けるヴァンパイアだった。
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