ナムギュが認識していない裏で、クラスメイト含めたグループに対してサノスが行っていた事についての話です。
サノスの家柄設定をガッツリと描写しております。
また、サノスの過去に関しても書きました。
4話でサノスがナムギュに言った言葉に関係しています。
とは言え、4話をしっかり読む必要は無いです。
というか読まなくても問題無いです。
読んだほうが「理解が深まる」のは間違いないですが、別段読む必要は無いです。
「強制的に読ませる」という事を、私は極力避けたいと考えております。
貴重な時間を割いてまで読んで下さっている方々に、アレもコレもと求めたくないんです。
サノスの過去を描写するにあたり、複数人モブによるモブサノレイプ表現が地の文に入っておりますので、サノス受けが地雷の方にはオススメできません。
また、精神的に弱いサノスが地雷な方にもオススメできません。
過去の一時的な話とは言え、完全に弱ってしまっているので…
とは言え、これはあくまで「蛇足」です。
本編設定を私が勝手に深掘りしているだけのものなので、読まなくても全く問題ございません。
基本的には本編が全てですので、読まなかったところで損は一切しません。
「お暇でしたらぜひ!」という気持ちでおります。
どうぞご安心下さいませ。
「あらすじ」の部分をキャプションとして使用しております。
詳細はそちらに明記しておりますので、どうぞ一読のほうをお願いいたします。
※加筆修正いたしました。
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開き直ったナムギュをコントロールできないと知ったグループの面々は、しかし諦め悪く次の作戦を立てていた。
もう一度ナムギュを支配下に置くための、悪辣な作戦を。
「何とかしてナムギュを手に入れたい」
それは随分と異様な執着であったが、誰1人として疑問すら持たなかった。
とは言え、無理も無い話だろう。
レイプされていた最中のナムギュの表情、身体、声。
犯している時の優越感とコトが終わった時の満足感。
それらを忘れることが出来なかったのだ。
ナムギュの持つ、男を性的に満足させる才能。
それはサノス相手だけではなく、グループの全員にも存分に発揮されていた。
酷いやり方でレイプされていた時ですら、ナムギュは無意識のうちに暴漢達の性的欲求全てを解消させ、望みを叶えてしまっていた。
個々の好みを本能で理解し、そのまま相手にとって極上の性的サービスを提供してしまう。
例え、それがレイプであったとしても。
それはナムギュ自身も制御できない天賦の才。
グループの全員が魅了されてしまっていたのだ。
しかしながら。
人生を捨て去り失うものが無くなったナムギュを再度手中に収める作戦を立てるのは難しく、一向に進まない話にグループの面々は焦りと苛立ちを覚え始めていた。
次の集会のことである。
相も変わらずナムギュを議題に話し合っているメンバーの元にサノスが当然の如く近寄り、声をかけた。
「よぉ、元気かクズ共?」
唐突な罵倒に当然ながら腹を立てたグループの面々は、サノスに悪態を吐こうとした。
吐こうとしたが…無理だった。
それどころか、声すら出なかった。
「地獄」
その概念が集約され、人間の形をとっている。
自分達の目の前に立っているのは、それ。
絶対零度の視線に、身体が凍り付いていくような感覚。
サノスは口調こそフレンドリーだったが、その笑みと目つきには強烈な敵意と狂気しか感じられなかった。
完全に何かのスイッチが入っているソレだった。
「何だよ?俺が来た途端テンション下がっちまってんじゃねーか。傷付くぜマジ」
おちゃらけた調子で続けるサノスに対し、しかしグループの全員は震え上がるより他に無かった。
寒くも無いのに、歯がガチガチと音を立てた。
見たことの無い表情だった。
サノス云々の話ではない。
その場の誰1人として、人生で1度も見たことの無い表情だった。
とてもじゃないが、話の通じる相手とは思えない。
凡そ人間が纏える程度の狂気では無かった。
目の前にいる存在は、ヒトじゃない。
ヒトの様な外見をしている、何か。
サノスに関してクラスメイトがナムギュに吹き込んだ内容の半分は真っ赤な嘘だった。
しかし、半分は事実であった。
ナムギュが話半分で聞き流していたサノスによる恐ろしい所業の数々。
クラスメイト含めグループのメンバーは9割以上を嘘として吹聴していたのだが、彼らはサノスに対しての認識が甘かった。
これ以上なく、甘かった。甘過ぎた。
自分に向けられたグループのネガティブな活動にサノスがイチイチ反応していなかったのも当然の話である。
あまりにも馬鹿らし過ぎて相手をする気にもならなかったのだ。
足元にいるアリをムキになって踏み潰すことほど馬鹿らしいものは無い。
「サノスを潰す」
それは、アリが人間を踏み潰すと息巻いているのと同義である。
できるわけがない。
「さて、じゃあ始めっか…おい!来てくれ!運ぶからよ!」
サノスの呼び声を聞いたグループメンバー達は即刻逃げようとしたが、できなかった。
サノス達との追いかけっこで捕まったわけではない。
それ以前の問題。
あまりの恐怖で身体が動かなかったのだ。
彼らはただ座り込んだまま涙を流すのみで、そんな人間を捕まえることなどサノスの仲間達にとっては造作も無い。
というか逃げようとすらしないのだから、もはや無機物と変わらない。
サノスの仲間達は引越しの準備でもするかの如く、グループの全員を荷造りのように淡々と拘束していった。
そもそも仲間達は、ただ意味も無くサノスとつるんでいるわけではない。
サノスの家系は代々続く巨大なマフィアであり、当然ながら次期ボスはサノスである。
要は、言ってしまえば彼らは将来的にサノスを支える腹心となる者達であり、だからこそ常に行動を共にしているのだ。
サノスは仲間達の過保護さにウンザリする時もあるが、そこまで慕ってくれる彼らをぞんざいに扱ったりなどは決してしない。
上下関係皆無で普通の友達と同じように接している。
一緒になってからかい合ったり、はしゃいだり。
それに、注意をすればシュンとしながら素直に謝る。
次期ボスだからと偉ぶることなく同等に接するサノスの人柄。
彼らにとって、着いて行くには充分な理由である。
そんなことを知ってか知らずか、グループメンバー達は抵抗になっていない抵抗をしながら嘆願と命乞いをした。
「ご、めん、なさい…」
だの、
「はなして、いや、やだ」
だのと。
そのように惨めったらしく懇願の言葉を繰り返す彼らの顔を悠々と眺めながらサノスは、
「ナムスがどんだけ絶望したか、コレで分かったろ?」
次いで、
「まあ、俺はずーっと前から分かってるけどな」
そう続けながら、その場に胡座をかいて座った。
そして自分の仲間達が手際良く拘束していく様子を尻目に、サノスはマニキュアの状態を確認しつつ何とは無しに言葉を重ねた。
「ナムスみてぇな状況になっちまうと、生きるのって苦痛でしかねーんだわ。マジで病むぜ。輪姦された挙げ句恐喝とかよぉ…そりゃ自殺したくもなるっつの。あん時は俺も多分100億回くらいは考えたな。まあ、何とかなったけどよ」
そこまで語った時、サノスは仲間の1人に肩を強めにどつかれた。
仁王立ちで、眉間に皺を寄せながら無言で睨んでくる仲間に対しサノスは、
「あー、悪ィ。つい話しちまった。不機嫌にさせちまったな」
素直に謝罪したサノスに対して肩をどついた仲間は変わらず無言であったが、その表情には隠し切れない悲壮感と後悔、悔しさが滲み出ていた。
その表情を見たサノスは笑いながら、
「気にすんなって、アレはお前らの責任じゃねーから。つか、14歳に完璧さを求めるほうが意味わかんねぇだろ」
仲間の太腿をポンポンと優しく叩き、フォローの言葉をかけた。
「てか、ありがとな。感謝してる」
柔らかく微笑むサノスは、自分の弱さをナムギュに吐露した時を思い出していた。
「いや?マジで弱ぇよ俺は。テメェと同じような時期あったしな」
ナムギュに言った言葉。
そこに嘘は全く無い。
14歳の時、サノスはライバル組織の人間に襲われ、輪姦された。
それは殆ど潰された組織の人間がヤケクソで暴走した、最期の醜い足掻き。
サノスは大の男達に引き摺り回され罵倒され殴られながら、一晩中レイプされ続けた。
痛くて痛くて、たまらなかった。
肉体的な痛みだけではない。
もっと深い、大切な部分。
何もかもが痛くて、苦しくて、悔しくて。
行き場を失った感情は決壊し、目から勝手に流れ落ちて行った。
男が泣くなんて情け無い。ダサい。
サノスは思いながらも、しかし止まってはくれなかった。
殴られたり噛まれたりと、ケダモノ同然の暴漢達に好き放題された身体は血塗れだった。
それでもサノスは必死に抵抗した。
しかしながら、14歳。
ガタイの良い複数人の男達を相手に、逃げられるわけがなかった。
また当然、動画と画像も撮られていた。
その上最悪なことに、サノスの場合は既に流失してしまっているのだ。
表に出ているものは何とか消せたが、裏では未だに出回っている。
「巨大組織の次期ボスである男に一生付き纏う汚点」
として。
仲間達が過保護になっている理由は、それである。
組織にとっての、家にとっての、汚点。恥。
そう思い込んだサノスが自分の存在を否定するのは当たり前であった。
「お前を恥だなんて、思うわけがないだろう」
そのような周囲の言葉など、一切耳に入ってこなかった。
白々しいとすら思っていた。
鬱陶しいとすら思っていた。
嘘ばっかり吐きやがって、と。
だから何度も何度も自殺を試みた。
しかし毎回見つかり、力づくで止められた。
ならばと酒とクスリで現実逃避を狙った。
しかし結局見つかり、立ち直るまでは禁止だと取り上げられた。
テメェら全員殺してやると、泣きながら呪詛を吐き散らした。
最終的には監視付きの軟禁状態にさせられた。
自分から食事など摂るわけがなかったため、仲間達が強制的に食わせていた。
自殺が無理なら餓死したいと願っていたサノスは食事の度に暴れて嫌がるため、仲間達は毎回拘束しなければならなかった。
暴れ続ければ放置してくれるだろうと思ったが、いくら暴れようとも献身的な支えは微塵も変わらなかった。
もう死なせてくれと頼んだが、それを許す者など1人もいなかった。
吹っ切れたサノスが笑顔を見せ始めた頃には、既に2年の歳月が過ぎてしまっていた。
あの日。
放課後に呼び出された時。
サノスはナムギュを他人と思えなかった。
クスリ漬けでヘラヘラ笑う姿が自分と重なったのだ。
泣きながら笑う、チグハグな表情が。
「今まではクソどうでもいいから放置してたけどよぉ…」
顔面蒼白で怯え散らかしているグループの面々に頓着することなく、サノスは一言だけ。
「さすがに無理だわ。悪ィな」
実に軽薄で端的なそれは、しかし実質的な死刑宣告であった。
コメント
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設定や書き方が素晴らしくて、全私にぶっ刺さります!!