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 夕立時雨の話を聞いた綾波みぞれは胸を押さえてうずくまる。


(な、なんて尊いんでしょう! 特殊な力に惑わされ、それが二人を結びつける運命となるなんて! この後二人は分たれて英雄と呼ばれるまでの話をもっとお話を聞きたい! 真昼様のお話をもっと!)


 みぞれは顔を紅潮させながら、荒い息を吐いている。

 あまりにも異常な様子に流石の真昼も心配になる。


「だ、大丈夫? みぞれちゃん」

「はい、綾波は大丈夫です」

「そっか。話せるのはこれくらいだから、これで我慢してね」

「十分です! ありがとうございます!」

「他に聞きたい事はある人はいるかな?」

「じゃあ私も」


 そう言って流星が前へ出る。


「何が聞きたいの?」

「隊長としての責務について」

「レギオンの隊長としての話かな」

「ええ。真昼さんはどんな思想を持ってレギオンを率いていたの?」

「私は……」


 真昼は少し黙った。


「私は、私の思想に同調する者を集めたレギオンだったかな」

「真昼さんの思想って?」

「最大効率で最大の戦果と最小の犠牲」

「理論上の理想的な動きね」

「そう。私のレギオンのできたのは少し特殊な理由があるんだけど、少なくとも私の指示には絶対従ってくれる事が絶対条件。優先順位を守り、油断せず、全力を尽くすレギオンだった」

「真昼さんのためのレギオンという事ね?」

「うん。逆に聞くけどサイドサイドはどんなレギオンなの? 目指しているところでも良いし、現在進行形でも良いけど」

「サイドサイドはみんなの個性を大切にしたレギオンのつもりよ」


 真昼はぐるっと見渡して頷く。


「確かに、型に嵌めるより臨機応変な対応をした方が強さを発揮するタイプのレギオンの感じがするね。まぁそれはそれとして基本戦術は覚えてもらうんだけど」

「その基本戦術について疑問があるのだけど良いかしら?」

「どうぞ」

「あの陣形で揃える意味は何? 今それぞれのガーデンで開発、改良された戦術を今更統一するには膨大な時間と手間がかかると思うの。それでも世界基準として教える理由は何?」


 確かに流星の疑問はもっともだった。訓練校はそれぞれの特色が強く出る。軍需系といってもあくまで女学園が元になっているので衛士の意向が強く反映された結果現在の形に落ち着いていた。


 そこに無理矢理、統一した戦術を教えるのはかなりの時間と手間がかかるのは流星の言った通りだ。しかし、それでもやらなければいけない理由がある。


「これまではそれぞれの訓練校が自身の地域を守っていたけど、それで持たない場合、救援を要請して戦力をもらっていた。また外征によって他所の地域のデストロイヤーを倒す事が多かった。けどこれからは衛士は全て一つの組織として統合される可能性があるの」

「一つの組織に統合って」

「ごめん、それは言い過ぎた。あくまでそれは可能性の話。どちらかといえば訓練校同士の密な協力が増える、救援要請の強制力が強くなる、と言えば良いかな」


 今の訓練校同士の協力は交流のある訓練校やレギオン同士がお互いの同意のもと、戦力を送っている状態だ。真昼の言う救援要請の強制力が強くなるという話は、軍隊の上層部から下層部への命令に近い形になると言っているのだ。


「訓練校同士の協力が増えるとお互いに共通の戦術がないと上手く立ち回れない場合が多くなる。だからこの新陣形を世界共通のものとして啓蒙して、円滑な強力の足がかりにしようって話なの」

「どうして訓練校同士の協力が増えると思うの? 今のままでも良いと思うのだけど」

「デストロイヤーの進化と、人類のタイムリミットが近づいているから。詳しくは言えないけど、このまま防衛戦を続けても人類は敗北すると考える人たちが現れている。その人たちはリリィの密な協力関係を築いて大規模攻勢に出るべきだと訴えている」

「それはネストとアストラ級デストロイヤーの破壊ってこと?」

「そう。だから私達はそれに備えて戦力を上げなければならない。その一環として新陣形の啓蒙があるって感じなの」


 流星はそれを聞いて怖くなった。

 このままデストロイヤーと戦って、みんなを守っていれば、いつか卒業して平和な世界になるとどこかで思っていた。しかし目の前の存在は、そんな幻想は許さず、自らの手で歩みを進めようとしている。

 どれだけの犠牲や損害が出ようとも、本当の意味で誰も脅かされない世界を作る為に活動しているのだ。


「真昼さんは先を見据えているのね」

「これが成功するか否かはわからない。だけど戦わないで負けるのは嫌なの。私達は取り戻すんだ、故郷と平和を」

「でも、それは私たちの命に見合うものなの?」

「少なくとも私は殺すしかなかった。この誰かが殺される連鎖を止める為なら命を懸ける価値はある」

「今のまま、自分達が死ぬまで平和ならそれで良い、そう言った考えの人もいると思うけど」

「そう考えるのも理解できる。むしろそれが大勢の意見だと思う。それでも、後輩を持つようになったからわかる。自分を慕ってくれる人を少しでも生かしたい。そう思うようになったんだ」

「それこそ、何もしない事が一番じゃないの?」

「デストロイヤーは進化している。知能をつけ始めた。これからは防衛だけでも多くの損害出るのは間違いない。だから、デストロイヤーの知能が人類を越える前にカタをつけないと」

「待って、知能を持つデストロイヤーなんて聞いた事ないわ。それは本当の話なの?」


 そこで真昼はしまった、と顔をした。しかしここまではっきり断言してしまった以上、誤魔化すこともできない。


「知能を持つデストロイヤーは存在する。けど、それはまだ一部の特型に分類される個体に留まっている。だから人類はまだ生きている。だけどもし、これが全てのデストロイヤーに知能が高くなったら損害は大きくなる。少なくとも統率者型でも現れたら、大きな被害は免れない」

「だから焦っていたのね。人類の攻撃が無効化される前に先制攻撃で壊滅させる。それが真昼さんの考えなんだ」

「そう。その為には少しでも衛士同士の協力が不可欠。人類は一致団結しなければ未来はない」

「わかったわ、隊長として、サイドサイドの力を使って梨璃さんを助けます。もし何かあったら呼んでね」

「良いの? 流星ちゃんは今を生きる人だと思ってたけど」

「そうだけど、そんな話を聞かされちゃね。初見で知能あるデストロイヤーと対峙して勝てる自身はないし、少なくとも戦力増強には協力する。その分、色々私達にも対策とか情報を回してね」

「うん、約束する」


 その時だった。

 神凪の警報が鳴り響き、デストロイヤー出現を知らせる。同時に地面が大きく揺れて、立っている事ができない。

 校庭が爆発が起きて、窓ガラスが粉々に砕け散る。そしてその中からミディアム級のデストロイヤー達が侵入してくるのが見えた。


『コード991発生、繰り返すコード991発生。デストロイヤーの大群がガーデン内に出現。全てのリリィはこれを殲滅せよ。繰り返すデストロイヤーの大群が訓練校内に出現』


 姫歌か叫ぶ。


「まさか訓練校に直接ケイブが!?」


 それに反論したのは真昼だ。


「いや、ケイブの発生は場所をある程度予測できる。これは校庭が爆発してからミディアム級が現れたのを見ても、地面から現れたとしか思えない。掘ってきたんだ。少なくともラージ級、もしかしたらギガント級がいるかもしれない。全員気をつけて」

「了解、真昼さんも気をつけて!」

「サイドサイド、出動します!」

剣と銃がついたデカい武器を振り回す女の子は好きですか!?

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