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そうして手を繋ぎながら歩き出すと、マンションの入り口の前に、1人の男性が立っているのが見えた。
その人は何を思うのか、マンションをじっと見上げている。
亜矢が不思議に思ったのはその人の行動ではなく、容姿の方だった。
グリアやコランとは少し雰囲気の違うブルーグリーンの髪、白い肌。整った顔立ち。
年齢は推測出来ないが、大人っぽさからして亜矢よりいくつか上だろうか。
一見、女性と見間違えそうな雰囲気の彼の横顔は、不思議なくらい綺麗だった。
「誰かしら、あの人?」
2人がマンションに近付くにつれ、彼が気配を感じてこちらに視線を向けた。
彼が視線を向けたのは、亜矢ではなくコランの方だった。
「王子サマッ!!」
そう叫ぶなり、彼は亜矢とコランの方へと駆け寄る。
そして、コランも彼の姿に気付くなり、驚きに声を上げる。
「ディアッ!!」
え? と、亜矢はコランを見下ろす。
「コランくん、あの人と知り合いなの?」
それにしても、その名前からして彼は外国人なのだろうか?
それに今、コランの事を『王子サマ』って呼んでいたような?
疑問ばかり浮かべる亜矢だったが、彼はコランの方に目的があるようだった。
「捜しました、王子サマ。長い事魔界へとお帰りになられないものですから」
コランは、表情にちょっと暗い影を見せた。この子にしては珍しい。
「……兄ちゃんの命令で来たのか?」
「魔王サマだけじゃありません。私も心配していたのですよ」
クールそうな外見とは逆に、ディアという人は優しい口調で言う。
「えっと、コランくん、この人とは……どういう関係なの?」
王子だとか、魔王だとか。亜矢が訳も分からずにいると、コランはひょいっと亜矢の正面に向かい合う形で立った。
「人じゃないぜ、魔獣ディアだ!」
誇らし気にディアの前に立ち、亜矢に紹介する。
「魔獣!? ……って、どう見ても彼は人間だけど?」
「ディアの本当の姿は、すっげーーでっかい魔獣なんだぜ!」
コランは両腕をいっぱいに広げ、その大きさを表現しようとする。
つまり、今のこの姿は『仮の姿』であって、本来は魔獣である、と—。
悲しくもこういう事に順応している亜矢は、頭でそう整理しつつ。
「あと、コランくんが『王子サマ』ってどういう事?」
するとコランは、堂々と自慢げな笑顔を向ける。
「オレの兄ちゃん、魔王なんだ!」
「えっ!?」
さすがの亜矢も、これには言葉を失い、呆気に取られている。
コランには魔王の兄がいて、それでコランは魔界の王子サマで……。
さすがにここまで来ると、想像の範囲を超えている。
コランはクルっとディアの方を向くと、今度は亜矢の事を彼に紹介する。
「この姉ちゃんがアヤだ! オレの初めての契約者!」
ディアは、亜矢の方に静かに視線を向ける。
「そうですか……あなたが、王子サマの契約者」
ディアは亜矢に近付くと、その高い身長を少し屈めた。
「私は魔界の王と王子に仕える魔獣・ディアと申します」
「は、春野亜矢です……」
戸惑いながらも亜矢は、その礼儀正しい魔獣に向かって自らも名乗る。
「でも、ディアはオレの家族みたいなモンなんだ!」
コランが付け加える。
「亜矢サマ、もう少しだけ王子サマの事をよろしくお願いします」
そう言ってディアは深く頭を下げる。
「えっ!? あっ、はい……!!」
つられて、何故か亜矢も慌てて頭を下げる。
「……では、今日はこれで失礼します」
ディアは2人に背中を向けて、ゆっくりと歩き出す。
亜矢は呆然としていたが、コランがふいに亜矢の片手を握った。
亜矢がその感触にハっとして、コランの方を見る。
コランは少し顔を俯かせ、唇を噛み締めている。
その小さな体から、何かとても大きな悲しみのような、何かの感情が溢れているようだ。
亜矢は言葉をかける事も出来ないまま、ただその小さな手を握り返してやった。
コメント
1件
おおっ、新キャラのディア、めっちゃ気になる…! ブルーグリーンの髪に白い肌、しかも魔獣が人間の姿って設定、好きだなあ。コランが「王子サマ」で兄が魔王ってのが一気に世界観広がった感じ。でも最後の、コランが俯いて唇噛みしめてるシーン、なんか切なくて胸がぎゅっとなった。亜矢が黙って手を握り返すのも、言葉いらない関係性が伝わってきて良かった。続きがすごく気になるよ〜🌙