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わたしはあなたにだけは嘘はつきません。あなたが今付き合っている人間は、あなたを愛しているのですか?
あなたは彼を愛していても、わたしは知っているんです。あなたが窓辺で泣き叫んで、シャワーから出てきてびしょ濡れのままーーその電話に絶望してベッドにしがみついているのを……
どうしてそんなことさせる男と付き合い続けるのですか?
何故あなたはわたしを選ばないのですか?
わたしならあなたを彼よりもっと大事にできる。あなたをひとりぼっちにさせたりなんて、ため息をこぼす暇もないほど強く抱いていられるのに。
わたしが恋愛対象外なら、あなたが辛いと言ったならすぐに隣に座り、その涙が乾くまで共にだっていられるのに。
「…見た?」
通りすぎる制服を着た誰かが不安な顔をする。
「見た見た…あれ縛られてたのかもよ…痣の痕…」
「絶対暴力振るわれてるよね…ギリギリ見えたけどさぁ…服脱いだらやばそう」
あなたはときに朝から晩まで連絡が取れなくなる。
でも2日くらいしたら、急にわたしに電話がくる。申し訳ありません。ごめんなさい。なんともないですーーまるで自分のせいだからと言わんばかりに謝罪する。
でも翌日あなたに会えばわかる。まるで映画でも見てるみたいに。あなたの視線からは、もう何も出来ない…という絶望しか感じられない。何度もあなたの髪が左右に揺れて、引っ張りあげられて、壁に頭を打たれるのが見える。
はあ…とあなたが最後に吐息をもらして、虚ろに床に頬をつけて涙が流れるまでそれが続く。
どうしてーー
何故ーー
わたしは壁に向かって怒り続けるしかできない。
わたしはーーわたしならあなたを抱き締められる。
何故そんな男の為に時間を割くんです?
どうして……
わたしは壁を殴り続けて、あなたのその瞳を思い出す。
わたしはあなたの為なら時間を止める。
あなたが床から起き上がり、またその脅えた瞳を上げないように……。
その日は雨が降っていた。定時が近づくに連れてあなたは落ち着きがなくなる。
ベルと同時にあなたが駆け出すのを、辺りの人間は哀れそうな目で見送るだけ。
もう耐えられないーーお願いだからもう傷つかないでくれーー!
わたしはあなたを走って追いかける。傘をさそうとするあなたの手首を掴む。ずる、と上がったシャツの下から紫色の痣が見える。
あなたは振り向いたが、あなたはわたしに向かって目を見開いたまま、叫び声を上げて手をかざした。
わたしは顔をぐしゃぐしゃにする。
「ごめんなさい…!ごめんなさい…っ!」
「名字刑事!」
「いやぁあああっ!」
「名字刑事!!わたしです!!わ…」
あなたはわたしを払うように壁にへばりついて大泣きして、ずりずりとしゃがみこんで頭を抱えたまま子供のように首を振り続けた。
わたしはもう破裂しそうになる。たまらずにわたしはあなたにしがみついて、同じように泣き出してしまう。
「警部…警部離して…えっ……行かないと……行かないとまたぁ…!」
わたしは首を振り続ける。あなたと同じように金切り声でわめき続ける。
わたしならあなたを絶対に大事にします!わたしなら……わたしなら出来るのにーー…!!