打ち上げ🍻
スタッフA「最終回、本当に最高でした!」
〇〇「ありがとうございます!」
北斗「ありがとうございます」
スタッフB「壁ドンの迫力すごかったです」
〇〇「強かったです」
北斗「加減しました」
〇〇「してないです」
スタッフ笑い。
スタッフC「キスシーン長かったですよね」
〇〇「台本通りです」
北斗「予定通りです」
スタッフD「でも終わったら会う理由なくなるって本当ですか?」
一瞬、空気が止まる。
〇〇「は?」
北斗「……」
スタッフD「さっき北斗さんおっしゃってましたよね?」
〇〇が北斗を見る。
〇〇「何それ」
北斗「言ってません」
スタッフA「言ってましたよ」
北斗「酔ってますよね?」
スタッフ笑う。
〇〇「別に会えばいいじゃん」
北斗「簡単に言うな」
〇〇「何が」
北斗「……なんでもない」
少しだけ空気が張る。
スタッフB「不仲コンビ出ました」
〇〇「不仲は事実です」
北斗「事実です」
スタッフC「でもお似合いですよ」
〇〇「違います」
北斗「違います」
同時。
また笑い。
その時。
〇〇がテーブルの端に置かれたグラスを手に取る。
北斗「それ何」
〇〇「お酒」
北斗「明日仕事あるって言ってただろ」
〇〇「だから我慢してました」
北斗「やめとけ」
〇〇「なんで」
北斗「弱いだろ」
〇〇「今日はいい」
北斗「よくない」
〇〇「一口だけ」
北斗「絶対一口で終わらない」
〇〇「子供扱いしないで」
北斗「事実言ってる」
スタッフA「飲んじゃえ!」
〇〇「いただきます!!」
ぐいっと飲む。
北斗「……」
数分後。
〇〇「……あれ」
北斗「ほら」
〇〇「回ってきたかも」
北斗「だから言った」
〇〇「酔ってない」
立ち上がろうとしてふらつく。
北斗がすぐ支える。
北斗「座れ」
〇〇「大丈夫」
北斗「大丈夫じゃない」
スタッフB「北斗さん優しい」
北斗「優しくないです」
敬語で否定。
〇〇の力が抜ける。
そのまま北斗の肩に頭が落ちる。
〇〇「……戦友」
北斗の呼吸が止まる。
北斗「寝るな」
〇〇「負けないから」
北斗「今それ言うな」
〇〇「……」
完全に眠る。
スタッフ小声。
スタッフC「どう見てもカップル」
北斗「違います」
静かに、でもはっきり。
北斗「戦友です」
そこへ監督がゆっくり近づく。
監督「寝たか」
北斗「はい」
監督が〇〇を見る。
監督「昔のあいつ思い出すな」
北斗「昔、ですか?」
監督「俺、〇〇の作品二回やってるんだよね」
北斗「そうなんですね」
監督「今は国民的女優だろ」
北斗「はい」
監督「でも昔はな、お前と似てた」
北斗「……」
監督「演技の腕も舞台度胸もあった」
監督「評価もされてた」
監督「でもどこか足りなかった」
北斗「何がですか」
監督「熱」
北斗は黙る。
監督「今回の撮影、あいついきいきしてたぞ」
北斗の視線が落ちる。
監督「芝居が楽しいって顔してた」
監督「見つけたのかもな」
北斗「何をですか」
監督「〇〇にとっての戦友」
監督「ライバルでもいい」
監督「本気でぶつかれる相手」
監督「負けたくない存在」
静かに。
監督「そういうのがいると、人は変わる」
北斗の喉が動く。
監督「お前はどうだ」
北斗「……」
監督「壊すなよ、その関係」
北斗「壊しません」
監督がふっと笑う。
監督「酔ったー!」
急に声を上げる。
スタッフ笑い。
スタッフA「監督大丈夫ですか?」
監督「全然酔ってない!」
空気が和らぐ。
北斗は肩に眠る〇〇を見る。
北斗「……軽い」
小さく。
北斗「ほんとに軽い」
スタッフB「タクシー呼びますか?」
北斗「少ししたらお願いします」
不仲は事実。
でも今。
〇〇は安心しきった顔で眠っている。
北斗の肩で。
監督だけが少しだけ気づいていた。
二人の間にある熱を。
ー2時間後ー
打ち上げ終盤。
スタッフへの挨拶も終わり、ざわざわしていた空気が少し落ち着いた頃。
〇〇 「酔いながら)明日早いから、、、そろそろ帰るーね。お先にー失礼しーます」
スタッフ達「本当にお疲れさまでした。最高の最終回でした」
〇〇 「ありがとうございます。😪またぜひご一緒でき、たら嬉しいーです」
北斗 「お疲れさまでした。ありがとうございました」
監督 「北斗、〇〇をちゃんと送れよ」
北斗 「……はい」
酔っている〇〇はほとんど目が開いていない。
北斗 「〇〇、立てる?」
〇〇 「んー……むり……」
ふら、と体が傾く。
その瞬間。
北斗は迷いなく抱き上げた。
お姫様抱っこ。
周囲が一瞬どよめく。
スタッフ 「お、おお……」
北斗 「タクシー呼んでますか?」
スタッフ 「もうすぐ来ます」
〇〇は完全に寝ている。
北斗は静かに歩き出す。
不仲のはずの距離感とは思えないほど、自然に。
――――――――――
タクシー内。
静かな車内。
エンジン音だけが響く。
〇〇 「……ん……あれ……」
北斗 「起きた?」
〇〇 「うわ、なに、私寝てた?」
北斗 「がっつり」
〇〇 「やば……迷惑かけてない?」
北斗 「まあ」
〇〇 「まあってなに!」
少し酔いが残っているのか、テンションが高い。
〇〇 「そうだ!!!聞いて。映画決まった!」
北斗 「……は?」
〇〇 「恋愛映画。近いうち打ち合わせ」
北斗の心臓が、嫌な音を立てる。
北斗 「相手は?」
〇〇 「キンプリの永瀬廉」
その名前を聞いた瞬間。
胸の奥がぎゅっと締め付けられる。
〇〇 「廉とは仲良いしさ、やりやすいと思うんだよね。ご飯も行くし」
北斗 「へえ」
〇〇 「しかも恋愛ど真ん中。キスもあるし、大人のシーンもあるって」
北斗 「……」
笑って話す〇〇。
嬉しそうで、キラキラしている。
その顔を見ているのが、苦しい。
北斗 「楽しそうだな」
〇〇 「うん!楽しみ!」
その無邪気さに、嫉妬が積み重なる。
言えない。
言える立場じゃない。
ライバルで、不仲で、ただの共演者。
――――――――――
マンション前に到着。
〇〇 「なんかさ、公園でちょっとぶらぶらしない?」
北斗 「は?」
〇〇 「夜風あびたい」
北斗 「……だる」
〇〇 「付き合えよ」
北斗 「命令すんな」
結局ついていく。
夜の公園。
静かで、少し冷たい空気。
〇〇 「最終回さ、壁ドンもお姫様抱っこもキスもやったね」
北斗 「仕事だろ」
〇〇 「不仲なのに上手いって言われてるらしいよ」
北斗 「知ってる」
〇〇 「北斗、演技すごかった」
北斗 「お前も」
少し沈黙。
〇〇 「……戦友って感じだよね」
その言葉が刺さる。
戦友。
それ以上にはなれない。
〇〇 「私さ、今回めっちゃ楽しかった」
北斗 「……」
監督の言葉が頭をよぎる。
“〇〇は今回いきいきしてた。見つけたのかもな。戦友でもあり、ライバルでもある存在を”
北斗は目を伏せる。
〇〇 「北斗?」
振り返った瞬間。
〇〇がまたふらつく。
北斗 「おい」
そのまま、完全に寝落ち。
北斗 「……まじかよ」
仕方なく背を向ける。
〇〇をおんぶする。
軽い。
でも、重い。
好きって感情が。
マンション前。
〇〇 「……ん」
目を開ける。
〇〇 「え、なにこれ」
北斗 「寝てた」
〇〇 「まじ?ありがと。じゃあね」
あっさり。
いつも通り。
普通にバイバイ。
ドアが閉まる。
北斗はその場に立ち尽くす。
――――――――――
翌朝。
〇〇 「え、昨日どうやって帰ったっけ」
マネージャー 「北斗くんが送ってくれましたよ」
〇〇 「は!?うそ!」
マネージャー 「公園寄ったらしいですよ」
〇〇 「……え、なに話した?」
マネージャー 「知りませんよ笑」
〇〇 「記憶ゼロなんだけど」
完全に覚えていない。
――――――――――
その頃、北斗の部屋。
北斗 「……はあ」
ソファに沈み込む。
永瀬廉。
キスシーン。
大人のシーン。
笑って話す〇〇。
監督の言葉。
戦友。
ライバル。
北斗 「見つけたのかもな、って……」
もし。
もしあいつが、俺じゃない誰かを見つけたら。
北斗 「……限界」
胸が苦しい。
でも言えない。
不仲は事実。
ただの共演者。
北斗 「俺、なにやってんだよ」
イラつく。
自分の弱さに。
嫉妬する自分に。
言えない自分に。
スマホを見る。
〇〇からの連絡はない。
北斗 「覚えてねえんだろうな」
小さく笑う。
その笑いは、全然笑えていない。
窓の外が白み始める。
眠れない夜。
監督の声が何度も響く。
“〇〇にとっての戦友と言ってもいい存在がライバルなんてな”
北斗 「戦友で終わりたくねえよ……」
ぽつりと漏れる本音。
でもその声は、誰にも届かない。
まだ。






