テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
酒は飲んでも…?
「先生〜」
「あ?」
中間試験が終わり穏やかな日々が戻ってきた頃、D組担任のソロは生徒であるミーコに呼ばれそちらへ向かった。
「ねぇねぇ、先生この言葉知ってる?」
「「「酒は飲んでも??」」」
「はあ?何だいきなり…」
「良いから良いから!この続きは?」
声を揃えてきた生徒達に若干押されたが一応生徒からの質問なので教師として答えないといけない。質問で良いのかは謎だが。
「呑まれるな、だろ。そんくらい誰でも知ってるっつの」
「先生は大人でしょ?お酒ってどんな味がするの!?」
「それが聞きたかったのかよ…」
この年頃の子供は酒に興味があるらしい。いつもは止めてくれるイブキも気になるのかキラキラとした目でこちらを見て来る。
「あー、普通だよ普通。炭酸にアルコールと少し苦味を足しただけの飲みもん。人によっちゃ快感を得るらしいが俺は酒に強い体質だから酔った事ねぇし分かんねぇけどな」
「へぇ、意外。センセーは酒弱いイメージあったわ」
「シャオ、どう言う意味だそれ」
「ん〜?だって体弱いじゃん」
「そうだよ〜!お酒って体に悪いんでしょ?程々にしないと体悪くなっちゃうって。ミーコ、酔っ払いのお世話なんてヤダよ〜」
「何で酔う前提で話してんだ。兎に角!酒は二十歳になってからだ!絶対お前らは飲むなよ!じゃ、授業始めるぞ」
ブーイングが続く中、ソロは気にせず授業を始めた。その後は何事もなく終わり、一日の授業が全て終わったところで、帰る前に職員室に寄った。自分の机にあった忘れ物をとって帰ろうとした時、頭がズキリっ
と痛んだ。一度気づいてしまえば体調はどんどん悪くなっていく。しばらく動かずに居ると頭痛はなくなったが体がだるく重い。
「っ、中間試験が終わって気が緩んだか…
早く帰って寝よう…」
「ソロ先生」
「…ユリオス先生、何かご用ですか?」
何とか取り繕って好青年を装い何か用かと聞くと夕飯に誘われた。
「大したことではないんですがこの後、ご都合よろしいですか?」
「(よくねぇよ!けど、ここは乗っとかねぇの後で疑われるかもしれねぇ。最後まで俺の体力が持つのを期待するしかねぇか…)「ソロ先生?」あ、はい!特に予定ないので大丈夫です」
「良かった。ではデートですね」
「はは…(ちげぇーよ!)」
「皆さんはどうされますか?」
ユリオスが声をかけるといつもは集まってくる教師陣が今日に限って寄って来ない。それに不安を感じていると、周りの教師陣からは憐れみの目で見られた。
「皆さん都合が悪いようですね。では、二人で行きましょうか。ふふ、本当にデートになっちゃいましたね」
「(だからちげぇーて!)チッ」
「本性、出てますよ?」
「っ、あ、ぇと…」
つい、素が出てしまった。内心慌てながら誤解を解こうと口を開いたが、声が出ることはなかった。
「しーっ、僕はもっと貴方のことが知りたいんです。是非、生徒に接するときのように話しかけてください」
「(んな無茶な!)」
口を塞いでいたユリオスの指を退かして急いで職員室から出る。扉が閉まる刹那、迎えにいくと言う言葉が聞こえたような気がした。
ソロは自室に戻ると速攻ベットにダイブした。
「あー…だりぃ。ちょっと寝るか…」
体調の悪いソロはすっかりさっきの会話を忘れて寝についてしまった。
一時間後――
「失礼します。ソロ先生、おられますか?」
「っ!!は、はい!今行きます!」
いつの間にか熟睡していたソロは、扉の向こうにある気配に飛び起きた。扉を開けてすぐに閉める。自分の部屋の荒れようは前回、ミーコ達の反応から良いものでないこ
とは流石のソロにだって分かっていた。
「えっと、何故ここに?」
「おや?迎えに行くと言ったじゃないですか。迎えにきましたよ」
「そ、そうでしたね〜(やべぇ、覚えてねぇ)」
「今日は料理とお酒が美味しいと有名な店に行こうと思ったんです。一人で行くのも味気ないので誰か誘って行こうと思ったとき、ソロ先生がお酒にお強いと風の噂で聞きまして。これを機にソロ先生とは仲良くなりたいので!」
「へ、へぇ〜(アイツら口滑らしたな!)」
「では、行きましょうか」
ソロはまだ少し重い体に鞭を打ってユリオスを追った。
ユリオスに連れられて来た街は如何にも大人の雰囲気が漂う場所だった。未成年が居たら一発で報道ものだ。
「あ、あの〜…本当にこっちで道合ってます?」
「はい。この街を抜けると近道らしいんですよ。B組担任の先生が言ってたので間違い無いかと。あ、この建物です」
大人の街から少し離れた場所に趣のある店があった。さっきとは全く違う風景に少し頭が混乱する。
「(B組担任って、アイツだよな?本当にこの店大丈夫か?まさか危ない店じゃ…)」
「ソロ先生?入り口で立ち止まると危ないですよ?」
「あ、はい。すみません…」
人混みが得意で無いソロに気を遣ったのか、個室を借りたユリオスに少し感謝し、メニュー表を見た。心配とは裏腹に美味しそうな料理が並んでいる。
「メニューは決まりましたか?」
「はい。これとこれと…後酒を」
「私も彼と同じものを。あ、量は多めでお願いします」
「畏まりました。少々お待ちください」
店員が下がると今更ながらに気まずくなったソロはユリオスを隠し見た。特にいつもと変わった様子は見えない。
「(何が目的なんだ?まさか俺の正体に気づいて…)」
「ソロ先生お酒飲めて良いですね」
「はい…?」
全く予想していなかった言葉に一瞬フリーズした。
「僕、いつも皆さんに止められてしまうんです。それに、飲んだ後の記憶がなくて…」
「そーなんですか〜(つまり?酒が弱いってことか?めんどくせぇ…)あんまり無茶して飲まないですださいね」
「気をつけます。あ、そうだ。これを押しておかないと」
「それは?」
ユリオスは壁に埋め込まれていた魔法石に魔力を通して押し込んだ。
「一種の防音結界のようなものだそうです。さっき通って来た道をご覧になって分かったでしょうが近くのこの店にもそう言う客が出入りするらしくて…外に声が漏れないようにする結界を張るのはここ
の決まりらしいですよ」
「へぇ…詳しいんですね」
「ここの料理がお気に入りでたまに食べに来るんです。ここの店主とも仲良くさせてもらってるんですよ」
和かに笑うユリオスに相槌を打って運ばれて来た料理に舌鼓を打つ。ソロの酒がどんどんなくなっていくのに対し、ユリオスの酒はチビチビとしか飲んでいないのでなかなか減らない。
「すみません、酒追加で」
「承知しました」
「ふふ」
「ユリオス先生?」
「本当にお酒、強いんですねぇ」
「まぁ、人並みには…というか、大丈夫ですか?顔が赤いですよ」
「おや?少し酔ってしまいましたか…大丈夫ですよ」
いつもより力が抜けた笑みに大分酔って来ているのを感じたソロは、この酒に弱いところが他の教師陣が一緒に来たくなかった原因だと思った。それが間違えだったとを後で身思って知ることになるとは思わずに…――
「ユリオス先生、ユリオス先生!帰りますよ!」
「…………」
「ユリオス先生!ったく…こんなに酒弱いんなら無理に飲まなきゃいいのに…世話するこっちの身にもなれよな」
仕事場の関係上、このまま置いて帰る選択肢は消えた。そろそろ体もキツい。本音を言うならすぐに帰って寝てしまいたい。
「ん…」
「ユリオス先生?大丈夫です、か!?ちょ、おい!退けっ重い!!」
「…………」
焦点の合わない虚な目でソロに体重をかけ、押し倒したユリオスは暴れるソロの腕を近くにあった彼のローブで固定した。そんなユリオスにソロは謎の恐怖を感じて腕を解こうと暴れる。いつもなら魔法を使うところだが、体調が悪く上手く発動させることができない。
「ユリ、オス先生…?なぁ、退いてくれ。悪酔いし過ぎだ」
「……ソロ」
「っ、な…ぁ!?」
いきなり呼び捨てにされ、唇を耳に寄せられて流石のソロも驚きが隠せない。押し返そうとするも、普段魔法に頼りきっているソロは腕力がそこまでなかった。
「ちょ、退いてください!てか、こう言うのは好意を持った相手としてくれよ!俺を巻き込むな!はーなーせー!」
「うるさいです…ん」
「んン"!?んむ、ぅ…はっんん…っ」
職員室の時とは違い、指ではなく自分の唇で塞ぐユリオスに驚き、口を開けてしまった。それを見逃さず、ユリオスは舌を入れてくる。こう言う経験とは無関係の生活を
送っていたソロはどうするべきか分からず、とにかく混乱していた。魔法を使おうにも口が塞がれているので出来ないし、酸素不足で頭がボォっとしてくる。ようやく
離れた二人の口からは銀の糸が繋がっていてなんともイけないものを見ているようだ。
「ん…」
「ぷはっ、はっ、は…なに、すんだ!」
「?もっとですか?」
「違っ!ンン〜!!ぁ、ふっ…んぅ、ゃっ」
「メガネ、邪魔です…」
「ちょっ…」
なんとかメガネ分の距離を保っていたのに、それを取られてしまってソロにはもうこれ以上のキスを防ぐ術を失った。どんどん深くなるキスに背筋に痺れるような感
覚とフワフワした何かが頭を占める。両手で耳を塞がれていて音が反響し、くちゃっちゅぱっと音が脳まで届く。
「んゃっ、はなしっ…ンン"!ぅあ…っ」
腰に手を回されグッと引き寄せられた。もう抗う気力が残されていないソロの拘束された手は、今や必死にユリオスに縋り付いていた。ズボンからユリオスの指が侵入
して来たのを感じてより一層ビクリとが反応する。下着に手が伸びたところで遂にソロの羞恥メーターが振り切れた。
「いい加減に…しろぉお!『朝は来ない』!『草木の拳』!!」
「うぐっ」
「はぁーはぁー…」
なけなしの力を振り絞って『魔女の工廠』で刺し殺さなかった自分を褒めたいくらいだ。体調が悪いのに無理して発動させた魔法は弱々しく、酔っ払いを気絶させるほ
どの威力しかなかった。スヤスヤと気持ちよさそうに寝るユリオスに腹が立ち、一瞬物騒な発想が浮かぶ。
「ここで息の根止めてやろうか…いやいや!ここで殺せば俺が殺ったって疑われる!我慢しろ、我慢!」
「ん…?ソロ…先生?」
「っ!?ユリオス、先生…」
眠そうに起きたユリオスは自分を見て後退りするソロをしばらくの間ジッと見た。
少し息の上がった赤い顔がメガネをとって少し目尻に涙を浮かべてこちらを睨んでいる。何より、ソロは今すごく着崩れていた。酔ったユリオスにボタンを何個か剥がされ鎖骨が見えているし、手は彼のローブで固定されている。極め付けに、少し湿った唇がなんとも色めかしい。
「?酔いが回ったんですか?」
「は?覚えて、ないのか?」
「はい?えーと、何のことでしょう」
「っ〜〜〜!!」
ワナワナと口元を震えさせるソロに疑問を抱きながらも、キツく結ばれたローブを外してやろうと近づいた。
「ジッとしていてください。外しますから」
「ぁ…っ」
「え?」
「っ、さわ、るな!」
「えっと…もしかして、そうなった原因は僕、ですか…?」
「…………」
手が触れた瞬間、顔を赤くして手を振り払ったソロを見て何となく原因を理解したユリオスは申し訳なさそうに誤った。
「その…すみません!まさか、こんな事になるだなんて…」
「……良いから、これ取ってください。腕が痛い」
「は、はい…」
傷つけないように細心の注意を払いながらローブを解いた。気まずい沈黙が流れる。
先に口を開いたのはソロだった。
「ユリオス先生」
「はい…」
「酒は飲んでも呑まれるなと言う言葉を知っていますか?」
「はい…」
「酒は控えた方がいいと思いますよ」
「おっしゃる通りです…」
「はぁ…今回の事は事故と言うことにしましょう。他言無用です。記憶がないようですし忘れた方がお互いのためになる。俺はこれで失礼します」
「あっ」
それだけ言うとさっさと帰っていたソロへと手を伸ばしたが届くはずもなく行き場のない手が宙を舞った。残されたのはソロが持ち帰り忘れた彼のメガネだけだ。
「っはぁ…仲良くなりたかったのにこんな事になるなんて…酔うと記憶がなくなるから何かあった時ように持ち歩いていた記録魔術具がこんな事に役立つなんて思わなかった…」
念のため持って来ていたペン型の記録魔道具を胸ポケットから出す。
「これで何があったか分かるは、ず……」
胸ポケットに入れていたからこそ、はっきりと映っていた。酔っ払った自分がソロを押し倒して襲っている場面が。同時に、彼の色めかしい声や顔も記録されていた。自
分がしでかした事に頭を抱え、当分の間動く事はできなかった。
後日、ソロが置いて行ったメガネを届けると、熱で寝込んでいる彼と鉢合わせになり、罪悪感もあって看病した。それが原因で学園では二人は付き合っているのでは?と妙な噂話が流れることとなり、ソロは二次被害に遭い続けることとなる。
―酒は飲んでも呑まれるな―
コメント
1件
1話完走したよ🤍 「酒は飲んでも呑まれるな」ってタイトルが最後まで効いてて皮肉効いてて好きだな…。 酔ったユリオスがガラッ変わるギャップ、それでいて記憶ないって後悔する展開、重いけど引き込まれた。 ソロ先生の体調不良と重なるタイミングも絶妙で、続きがすごく気になる。次も読ませてね🌙
ルル
30