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多分、有佳は何かを感じているのかも知れない。
気のせいだと思って欲しい、実際オレが好きなのは愛しているのは有佳だけなのだから。
朝は必ず玄関まで来て見送ってくれる、綺麗で性格も良くて料理も家事もきちんとできて、最高の妻だ。
「行ってくる」
無性に有佳にキスをしたくなって顔を近づけると、避けられてしまった。
「ごめんなさい、今までこんなことしてなかったでしょ、びっくりしちゃって」
「そうだよね、ごめん」
「でも、有佳がかわいいからつい、じゃあ行ってくる」
警戒させてしまった、やましい気持ちもあるが、キスをしたいと思った事も確かだ。
最近は大森さんとしかキスをしていない。でもそれは愛情からではなく情事の一連の作業の一つとしてのものだ。
今度の金曜日、それで本当に終わりにしよう。
今はオレに疑惑を持っているかもしれないが、終わりにしてもう二度と浮気をしなければ今までの事は無かったことにできるかもしれない。有佳を失うのだけは嫌だ。
帰宅すると有佳はとても機嫌が良かった。
今までもオレを疑いつつも嫌な態度は取ったりしないが、明らかに今日の有佳は違っている。
「有佳、なにか楽しいことがあったの?」
「え?」
なんとなく楽しそうな雰囲気で軽い気持ちで聞いたことに過剰な反応に見えた。
「なんとなく楽しそうだから」
「そうかな、久しぶりに学生時代の友人から連絡があったからかも」
学生時代の友人?
もしかして男なのか?
なんとなく気分が悪い。有佳なら学生時代に言い寄ってくる男がいただろう、そんな奴らと会わせたくない。
もうその話をしたくなくて話題を変えた。
「体調はどう?」
「うん・・・、少しはいいかな」
ここのところ寝室も別になっている、有佳とデキなくてもせめて抱きしめて眠りたい。
「じゃあ、今日は一緒に寝ないか」
有佳のふわふわな髪をさわりながらやっぱり今夜は有佳を抱きたい、いっそこのままソファでいてしまおうかと思っていると
「今週も金曜日は残業?」
思いがけない言葉に、硬直してしまった。
「うん、ごめんね。でももう残業は無くなると思うから」
有佳はまた書斎に入ってしまった。
やはり有佳は金曜日の残業に疑惑を持っている。
『明日は部屋でシヨ』
しつこくメッセージを送るなと注意してからは、すっかりおとなしくなり昼休みに一言だけメッセージが入った。
ホテルよりは時間制限がない分話しやすいかも知れない。
『わかった』と、一言で返した。
仕事中も落ち着かなかった、何度も終わりにしたいと思っていても彼女にうまくはぐらかされたり脅されたりした。
冷静に考えれば、彼女が部長にバラしたところで彼女自身既婚者であるオレを誘惑したという事実だってあるのだから、もっと毅然とした態度をとればいいんだ。
そもそも、彼女とその恋人はどうなっているんだろう。
風呂から上がるとソファでくつろいでいる有佳の姿に欲情する、頭を有佳の肩にもたれさせるとほんのりと甘い香りがする。
むせるような匂いを纏うあの女とは違う。
「最近、有佳不足かも」
有佳はテレビを消した、OKの合図なのかもしれない。
有佳の肩に腕を回して抱き寄せる、このまま二人のベッドに連れて行こうと思っていたが
「ごめん、やっぱりちょっと具合が悪いかも。おやすみ」
と言って書斎に消えていった。
狐につままれたようだ・・・
あの夜、拒んだ事を有佳は気にしているんだろうか