テラーノベル
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MV撮影の日。
もうすぐ始まるというのに渡辺の姿が見当たらない。
目黒は、建物の外に出る。
壁にもたれ、空を見上げて泣いている渡辺を見つけた。
声をかけていいのか分からない。
静かに涙を流しながら泣いている。
渡辺ー目黒、誰にも言うなよ?
目黒ー分かってる。
渡辺ーもう時間?
目黒ーうん。
渡辺ー行こうか。
乱暴に涙を拭いて建物の中に入って行った。
目黒は心配になりながらも渡辺が何も言わないから黙って後を追いかける。
話してくれていいのに。
やっぱり年下は頼りにならないのかな。
渡辺の背中を見ながらそう思った。
別に目黒から聞いたんじゃない。
渡辺がポツリと話してくれた。
「愛」なんてもの信じてなかった渡辺。
愛するという事も愛されるという事も知らない。
そんな渡辺に無償の愛。
親子でも兄妹でも愛は存在する。
人を好きになった事がないのかと言われたら、付き合った女の子はいた。
だが、愛していたか?と聞かれたら分からない。
何をもって愛と呼ぶのだろう?
好きと言われれば付き合う。
嫌いと言われれば別れる。
そんな付き合いしかしてこなかった。
愛は存在したのか分からない。
「君は愛を知りなさい」と言ってくれた人がいた。
渡辺より年上で20歳の頃にその人は4〜50歳くらいに見えた。
どうやって愛を知ることが出来るか分からなかった。
女の子と付き合った事はあると答える。
「泣いた事はあるか?」と聞かれ無いと答えるとまだ愛を知らないからだと言われる。
目黒ーなんか深いね。
渡辺ーん。
目黒ーその人に会いたいね。
渡辺ーあの日。
目黒ーしょっぴーが泣いてた日?
渡辺ー亡くなったんだ。
目黒ー・・。
渡辺ー愛を教えてくれる前に亡くなったんだ。
目黒ーそっか。
渡辺ー誰にも言うなよ。
渡辺と目黒はプライベートでは仲良しだ。
メンバー内では1番一緒にいるかもしれない。
普段は飲まない酒を飲んでポツポツ話してくれた。
今はソファで眠ってしまった。
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