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マスタード【ん………】
また朝が来た。
俺は、いつも通りに時計を見る。
マスタード【…八時か……】
時計を見ると、針が八時を指していた。
今日の睡眠時間は約五時間、前よりかは眠れている。
隣には、愛おしい存在が寝息を立てながら安心したように眠っている。今日は、安心して眠れたみたいだ。
名前は、マーダー。俺の唯一の愛おしい存在。
ダイスキな存在。
俺はマーダーを起こさないようにそっと、ベッドから出た。
マスタード【……チュッ】
おはよう…ではないが、俺は起きた時に必ずkissをする。
今日も可愛い、マーダーが生きていてくれているだけで幸せだ。
マーダー【スゥ……スゥ……】
マスタード【いつもありがとな、マーダー。ヨシヨシ…】
マーダーの頭を撫でる、これも朝のルーティン。
早く声が聞きたい…が、自然と起きるまで我慢する。
マスタード【…さてと、朝食作るか】
朝食を作るため、キッチンへと向かう。
マスタード【……あ、忘れてた】
忘れていたのは、歯磨き。それと洗顔。
ルーティンを忘れるくらいに、昨日の出来事で精神がマイっているらしい。
マスタード【頭痛ぇ……あー…】
頭痛のせいか、動くのも面倒になってきている。
でも大丈夫だ、こんなネガティヴはすぐに吹き飛ぶ。
マーダーの声を聞けば、明るくなれる。
マーダーがいるから、俺は生きることを保てている。
……なんて。依存してるのは俺の方なのかもな。
マスタード【彼奴は栄養不足だから、野菜でも入れるか】
今日の朝食は、野菜たっぷりのポトフとオムライス。
オムライスは『ふわとろの方が好キ』と言っていたから、ふわとろオムライスを作る。
あのとろけたような表情が、本当に可愛い。
マスタード【人参、玉ねぎ、じゃがいも、キャベツ…あと試しにウインナー入れてみるか】
まずはポトフを作り、その次にふわとろオムライスを作る。
ポトフは煮込まないと味が染みないから、早めに作る。
ウインナーは切らないでそのまま入れてみる、他の野菜は皮を剥いて細かく切る。
マスタード【じゃがいもと人参を先に炒めて…】
料理は、クロスに教えてもらいながら覚えた。あとは料理本を読んで覚えたり、自分なりに試したりした。
自慢できるほどのものじゃないが、ある程度の一般的な料理なら作れる。
マスタード【次に玉ねぎとウインナーは、少し炒める程度でいいか】
慣れた手つきでフライパンを煽る。
煽る必要はないが炒めていると、ついやりたくなってしまう。
(フライパンを煽るとは_)
炒め物やチャーハンを作る際に、前後に振って食材を空中で返したり均一に混ぜ合わせたりする技術のこと。
マスタード【コンソメと水を入れて…あとは様子見だな】
これで一応、ポトフは完成だ。
次は、オムライス。ふわとろ…実は一番難しい。
練習しているのはしているが、上手くできたことは少ない。
今回は、上手くできるだろうか。
マスタード【………やるか】
ケチャップライスを作り、皿に丸く盛り付ける。
次に卵を三つ割り、卵を溶いて油を引き…卵を流し込んで固くなるのを待つ。少し固まってきたら、ヘラで奥側から優しく丸み込む。
トントンして、丸めながら引っくり返す。少し温めたら火を止め、ケチャップライスの上に乗せる。
マスタード【ふぅ……。なんとか上手くいった】
最後に色付けとして、パセリを一振りする。
ふわとろオムライスの完成。
マスタード【ジュル………こっちも美味いな】
ポトフもいい感じの味付けだ、両方上手くできた。
朝食を作り終えたら、マーダーを起こしに行く。
それがもう、俺の日課となっている。
マスタード【ガチャッ……】
マーダー【スゥ………スゥ……】
マスタード【マーダー、飯の時間だから起きろ】
マーダー【ん……まだ寝る…】
マスタード【今日は予定があるんだ】
マーダー【ん…?予定……?】
マスタード【あぁ。睡眠薬、もうないだろ?】
マーダー【あ、あぁ………そうだったか…?】
マスタード【そうだったはずだ。とりあえず飯、冷めるから食おうぜ】
マーダー【んー………、わかった…】
少し無理やりだが、マーダーを起こすことに成功。
勿論、起こせずに失敗する時もある。
その時は、少し意地悪をしてから起こしている。
………何がとは言わない。
マスタード【偉い偉い。ヨシヨシ】
マーダー【っ………へへ】
マスタード【おはよう、マーダー。チュッ】
マーダー【んっ。…おはよう、マスタード】
起きれた時は、必ず頭を撫でる。その時の表情も、堪らなく可愛い。
そして必ず、朝の挨拶を交わしてからkissをする。
勿論、名前も呼び合いながら。
この時間も、とてつもなく幸せな時間。
マーダー【……今日もありがとう。メチャクチャ美味そうだな】
マスタード【へへ、そうだろ?】
マーダー【あぁ。…って、これふわとろのオムライスじゃないか?】
マスタード【Just. それにポトフもあるから、ちゃんと食べろよ】
マーダー【げっ……ポトフって、あの野菜だらけのスープのことだろ?】
マスタード【そうだ。残さず食えよ?】
マーダー【グッ………が、頑張る……】
マスタード【まぁ…少しでもいいから、食べてくれ。栄養摂らないと倒れちまうからな】
マーダー【わかった、ちゃんと食う。…いただきます】
マスタード【どうぞ召し上がれ。俺も、いただきます】
ポトフが苦手なのは知っていた。だが、栄養を摂ってもらうために作った。
『げっ……』という表情も、素直に可愛かった。
今でも頑張って野菜を食べてくれている、それだけで愛おしい。
マーダー【うぐっ……オムライスは美味いのに…】
マスタード【そんなにポトフ嫌いか?】
マーダー【野菜が…でも、マスタードの味付けが丁度いいから食える】
マスタード【嬉しいこと言ってくれるな、サンキュ】
マーダー【へへ。……薬…か……】
マスタード【ん?何か不安なことがあるのか?】
マーダー【いや……薬って言ったら、インクの所だろ?】
マスタード【まぁ…、そうだな】
マーダー【また何を質問されるか…、回答次第で指導受けるからな……】
マスタード【でも、それで治療していかないと治らないんだぜ?】
マーダー【それは……っ…、仕方ないか……】
可愛い。嫌なのに嫌と言わず、耐えているあの表情。
インクの所に行くことを嫌がっているのは、いつものことだ。可愛いのもいつものことだけどな。
前よりかは食べるようになり、インクの所にも行ってくれるようになった。それだけでも、成長だと思っている。
マーダー【……御馳走様でした】
マスタード【御粗末様でした。じゃ…インクの所に行くから、準備してくれ】
マーダー【…わかった。洗い物は、俺がする】
マスタード【サンキュ……と言いたいところだが、俺がするから大丈夫だ】
マーダー【でも………】
マスタード【洗い物までが、料理だからな。任せてくれ】
マーダー【……ありがとう。準備してくる】
そう言って、マーダーは着替えを始めた。
少し強引にしてしまったが、やっぱり優しい。
前は食事すらできなかったが、今ではもう洗い物を自分から手伝おうとしてくれるところまで回復した。
正直、信じられない。信じられないくらいに嬉しい。
マーダー【準備終わっ……どうしたんだ?マスタード。何か嫌なことでもあったのか…?】
マスタード【いや、何もないが……どうしたんだ?】
マーダー【マスタードが泣いてるから…、何かあったのかと思ったんだ】
マスタード【俺が……泣いてる…?】
自分の目に触れると、生ぬるい水が零れていた。
本当だ。マーダーの言う通り、俺は泣いていた。
泣いている理由は、どういうワケか俺にも分からない。
安心してなのか、疲れていてなのか。わからない。
マスタード【……ハハ】
マーダー【……、マスタード…?】
マスタード【何でもない。インクの所に行こうぜ】
マーダー【…頼むから、何かあったら言ってくれよ】
マスタード【りょーかい】
他に何か言いたそうだったが、何も言わなかった。
ただ優しい目をしながら、傍にいてくれた。
本当に苦しいのは、マーダーのはずなのにな。
………調子が、狂う。
……インクの所に来た。いつも通り、インクとエピックに診てもらう。最悪の場合は施設入院、軽い場合は薬をもらって終わりだ。
二・三度入院経験をしたが、俺には無理だった。
毎日毎日マーダーの名前を読んで、毎日毎日泣き崩れていたらしい。ケチャップがそう言っていた。
マーダーが入院した時は、ケチャップの家に泊まらせてもらうことになっている。そのため孤独になることはない。
…今回は、どうだろうか。
前よりも悪化していないことを願いたい。
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