💚『ねぇ、Tord』
❤『んぁ?なんだEdd?』
💚『ほんとに、出てくの……?』
僅かな沈黙を過ごした後に、Tordが重々しく口を開いた。
❤『残念ながら本当にな』
💚『……そっか』
Tordが決めたのなら仕方ないことだ。
夢を追いかけているのであればそれを応援するのが親友としての役目である。
俺に止める権利なんてない。けど、それでも。
💚『ねぇ、Tord』
❤『……なんだよ』
💚『俺、Tordのことがずっと好きだった。』
❤『……は?』
💚『ずっと隠してた。でも君が出ていくなら、気持ちだけでも最後に伝えたいと思って。』
❤『…………そうかよ』
Tordがガシガシと頭を搔く。思い悩んでいるその顔もすごく好きだ。
けど、今話すべきじゃなかったかもしれない。
覚悟を決めて話したつもりだったけど、これがもしも君の心残りになってあとを引いてしまったら。
ドキドキが止まらない心臓を、ぎゅうっとパーカー越しに掴んで抑えようとする。
❤『……なぁ、Edd』
💚『……うん、』
答えは知ってる。NOでしょ?
❤『…………俺だって、隠して、来たのに』
❤『……そんなこと、言わないままお前らと別れるつもりだったのに……!』
💚『…………え?』
なんで。
だって、俺は男で。
君も男だろ?
💚『……な、んで』
❤『俺だって、好きって言いたかった。けど……そんなことしたら嫌われると思ってて。』
なのに、なんで、とTordは繰り返す。
💚『……嫌じゃないの?』
❤『当たり前だろ、好きだって言ってるのに』
Tordの口から出る『好き』という言葉に過剰に反応してしまう。
❤『あーあ。言わないで行けば心残りがなくていいかなって思ってたのに。』
Tordはすごくしんどそうに笑った。
もう覚悟を決めてたんだ、Tord。
それが酷く魅力的で、眩しかった。
焦燥感に駆られて、憧れて、それがいつしか恋心に変わった。
お互い『親友』なのに、『親友』にあるまじき感情を抱えてしまって苦しんだ。
💚『Tord……好きだよ』
ようやく告げることの許された言葉は、俺にとってはあまりにも甘美で。
脈打つ心臓はそれはそれは騒がしくて、止まってくれと思うくらいだった。
けど今は、これでもいいかな。
❤『……俺もだよ、Edd』
ちゅ、と優しいリップ音が鳴る。
初めてのキスはとても安心して、それ以上にこの上ない幸福感でいっぱいだった。
トランクに積み込まれていく荷物を呆然と見ながら、俺も一緒に行ければなぁ、なんて考えた。
💚『(あぁ、世界って残酷なんだなぁ)』
これから旅立つ親友の姿を目に焼き付けながら、今も残る唇の感覚を指でなぞって確かめた。
💚『君がいなくなるなんて、寂しくなるよ。』
必ず、戻ってきてね。