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『何千回でも、その先も――』
蝉の声。
暑い風。
ベンチ。
そして——
みるく「ドズゥ?」
また、同じ声。
同じ景色。
同じ夏。
ドズル「……」
目を閉じる。
ドズル(またか)
もう驚かない。
理解している。
これは“やり直し”。
みるくを助けるまで終わらない。
みるく「ほんとに大丈夫?」
ドズル「……大丈夫」
少し笑う。
でも、その目だけは笑えていなかった。
——1回目。
帰る時間を変えた。
事故は回避。
夜、転落事故。
失敗。
——2回目。
一日中みるくの隣にいた。
車も、階段も回避。
夜、信号無視の自転車。
失敗。
——5回目。
家まで送った。
部屋まで確認した。
その帰り道。
ガス漏れ。
失敗。
——12回目。
病院に連れて行った。
安全な場所に閉じ込めた。
でも。
急性発作。
失敗。
ドズル「……っ」
何度も。
何度も。
何度も。
未来を変える。
でも結果だけは変わらない。
みるくが死ぬ。
どんな形でも。
どんな理由でも。
まるで——
“そこ”に向かうように。
ドズル(なんでだよ)
タイムマシーンを握る手が震える。
ドズル(何が悪い)
何回も考えた。
行動も変えた。
時間も変えた。
場所も変えた。
でも。
死ぬ。
必ず。
ドズル「……ふざけんな」
声が掠れる。
眠れていない。
食べても味がしない。
それでも。
ループをやめない。
——47回目。
みるく「ドズゥ、なんか今日変やよ?」
ドズル「……」
みるく「なんか、泣きそうな顔しとる」
ドズル「してない」
みるく「しとるよ〜」
優しく笑う。
その笑顔を見るたび、
怖くなる。
ドズル(また失う)
その未来が頭から離れない。
——103回目。
ドズル「今日は帰るな」
みるく「え?」
ドズル「お願いだから」
みるく「……ドズゥ?」
理解されない。
当然だ。
みるくは何も知らない。
ループも。
死ぬ未来も。
ドズル一人だけが覚えている。
——256回目。
ドズル「……」
もう、数える意味も薄れてきた。
時間感覚も曖昧。
でも。
諦める気だけは、消えない。
ドズル(まだだ)
助かる未来が、
どこかにあるはず。
そうじゃないと、おかしい。
——541回目。
みるく「ドズゥ」
ドズル「……なに」
みるく「うち、ドズゥとおると安心するとよ」
ドズル「……」
胸が痛い。
ドズル(守れてないのに)
安心なんて、
言われる資格ない。
——999回目。
雨。
珍しく天気が違った。
ドズル(今度こそ)
そう思った。
でも。
落雷。
失敗。
ドズル「……あぁ」
膝から崩れる。
笑いそうになる。
もう、何をどう変えればいいのか分からない。
それでも——
画面は光る。
〈ループ可能〉
ドズル「……」
見つめる。
目は死んでいる。
でも。
手だけは止まらない。
ドズル(何千回でも)
その先でも。
みるぴえが生きるなら。
ドズル(俺はやる)
たとえ壊れても。
たとえ、自分だけがおかしくなっても。
ドズル「……ループ」
また。
世界が巻き戻る。
蝉の声。
夏の空。
みるくの声。
何度でも、
同じ始まりへ。
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