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ーーガタンッ
「ーいっ、たぁ…」
最近の彼はとても忙しそうだ。ずっとパソコンに向かって、仕事と配信の行ったり来たり。そういえば、新しい洋服も出すとか言ってたっけ。ちゃんと休んでいるのか心配してしまうくらいに顔が疲れ切っていて、だから、流石に止めないとやばいと思い声をかけてみることにした…まではよかったのだが。
「…ぼ、び、?」
「………」
無言のままの彼に押し倒される。虚でただぼんやりと眺めている生気のない目が少し怖かった。
「ねぇ、大丈夫…?」
「………ニキ」
「うん?ーっ!?んっ、ふぁ…ぅ…」
名前を呼ばれたと思いきや、いきなり口を塞がれてパニックになる。
「ーまっ、まって、ぇ……ね、どしたん、?」
「……なぁ、ヤろ」
「は、?え、ちょっと…!…いたっ…」
今日に限って、彼の考えてることが全くわからない。床に押し倒されてされるがままで、怖くてどうしようもなくて。逃げないようにと握られた手首は、跡がつきそうなくらい強く押さえられていた。
「ねぇ、手、いたいっ…!」
「…ニキ、ごめん」
そう小さく呟やかれて俺は『今日くらいいいか』なんておもってしまい、彼に俺の全てを許してしまった。
「…いいよ…今日だけね」
今思えば、この選択が間違っていたんだ。
◇◇◇
「ゔぁ…ん、あ“っ…」
「…ここ。気持ちいなぁ、ニキ」
お腹苦しい。もう何回イったかも覚えてない。頭くらくるする。いつもと全然違う。
「ぼび、も、やらぁ…!」
「駄目」
「やっ///むり、い“っ…///」
止めても止めても「駄目」と「無理」の一点張り。ここまで余裕がないの、初めて見た。何度も体勢を変えて、何度も中に出されて、正直意識を保ってるだけでもう限界。ここまでしたら、いや、ここまでしなくても逃げるわけなんてないのに、彼はずっと手や腕、俺のどこかしらを強く握っていた。
「…ずっとイッてるやん。こんなんで嫌とかよう言うわ」
「まっ…ほんとに、むりだからぁっ///」
「…じゃあ、あと一回な」
「へっ…?」
『あと一回』、その言葉に希望を持ってしまった。やっと解放される。やっと終われる。いつの間にか俺は無意識のうちに泣いていて、彼を捉えた視界はぼやけていた。
「っあ…」
ぼやけていてもわかる。俺のことを思い、理性のあるうちに止めようとしている、苦しそうな顔。
「…や、だぁ」
「は?」
「やめな、で、いいっ…」
ここでやめさせたら彼は苦しいままだろう。思ってたのとはちょっと違ったけど、日頃の疲れをとって欲しくて、俺も役に立ちたくて、だからあの時『いいよ』って言ったから。
「ぼび、の…好きにしていいって、ぃった、からぁ…」
だから
「おれのこと、ぐちゃぐちゃにして…?」
洋紅色の目がギラリと光ったような気がした。
◇◇◇
俺を夢から引き上げたのは、子どもの頃に母親から頭を撫でられたような懐かしい感覚だった。
「…あ、起きた」
「ぼ、びぃ“…っ」
「あー喋らんでええ。喉、やばいやろ?なんか飲みもん持ってくるわ」
喉の痛み。腰の鈍痛。腹部の不快感。そして記憶が無くならないタイプの俺は自分が言ったことも昨日の情事に加えて鮮明に思い出せる。
「…なんしてんの」
「え“、ぃや…」
1人で悶えていたところで、相方が帰ってきた。見られてた…
「ほい…ごめんな、昨日。調子乗りすぎた」
「……いいよ、別に」
俺から煽られたとはいえ流石にやりすぎた、と謝罪をぼそぼそと述べている…あんま気にしてないんだけどな…
「…ほんま、俺みたいなやつに捕まって大変やな」
なにそれ。大変だなんて思ったことない。同じ仕事だからこそ分かってあげられることもあるし、一緒に住んでるから見えてきた表情だってある。今回だって、まぁちょっと予想外だったけど新しい彼を知ることができた。
「大変、じゃないよ。寧ろ俺ね、」
優しくて気遣いもできる。でも俺のことが好きすぎるあまり必死になって、痕がつくまで手首を掴む余裕がなくなる、ちょっと不器用な人。
「こういうボビーも、好きだよ」
「おまっ……ほんまに敵わんわぁ…」
俺のちょっとした一言で耳まで真っ赤にするとこも。全部大好きだから、もっと色んな表情見せてね。