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「月島、一日だけ女の子になってみない?」
孤爪さんは僕の目を真っ直ぐみてそう言った。
合宿1日目
暑くて暑くて仕方がないから人気のないところで涼んでいたのに、いきなり孤爪さんが来て訳の分からないことを言ったかと思うと何やら説明を始めた。
「おれの知り合いの人が薬の開発をしてるんだけど新しい薬ができたから月島に試してみて欲しい」
そう言って赤と白のカプセル型の薬を僕に差し出してきた。
「なんで僕なんですか?」
こんな怪しさ全開の薬を飲むやつなんてただのバカか頭がやばいやつのどちらかだろう。
「……クロってロングの子がタイプらしいよ」
申し訳無いような何かを隠しているような顔をしている。どうやら孤爪さんにはバレていたらしい。どうせ否定してもバレるんだから言い返すことはしない。
「もし、女になれたとして周りの人にはなんて説明したらいいんですか?」
「それは大丈夫。初めは驚かれるだろうけど何とかなるから」
どうやら僕はただのバカだったらしい。どうせ叶わない恋なのに、たかが好意を抱いている人のタイプがロングってだけなのに薬を飲んでしまった大バカものだ。
合宿2日目
「さ、さわさわさ、澤村ささささんんん!?」
今日も朝から日向はうるさい。先輩の名前もろくに言えないほどバカだったんだ。知ってたけど。
「そこの女の子、どこから来たんだ?」
澤村さん寝ぼけてんのかな、なんか僕がまるで女みたいな対応してくるんだけど。眠い目を擦りながら身体を起こすと普段は絶対にない髪の毛がこれまた普段はない大きな2つの膨らみに垂れてきた。昨日はピッタリだった服も少しブカブカになっている。周りが焦りまくっているせいで逆に冷静になった頭で考えていると思い出した。あの薬のせいだ。
「あの、僕月島です」
そういうと周りはほんと阿鼻叫喚。日向は僕を三度見した後、顔を真っ赤にしながら部屋を飛び出すし、田中さんと西谷さんは変によそよそしい。まさかの1番まともだったのは王様だ。
「?月島なんですよね?バレーできるならどっちでも良くないっすか?」と言い残し走りに行った。30分程この状態が続いた後、澤村さんの
「こいつは月島だ、くれぐれも手を出さないように他の奴らから守れ」
という一言で場は収まった。他の人たちには澤村さんが説明をしてくれるらしい。王様と日向が帰ってきたタイミングで朝ごはんになった。
「烏野に美女が増えてるんだけど!?」
という風にご飯を食べに行っただけですっかり注目の的となってしまった。
「月島、だよね薬は大成功だったんだ。可愛いね」
と、いい全ての元凶(僕も悪いかもだけど)である孤爪さんが話しかけてきた。
「いいことなんて1つもないですよ」
周りの知らない先輩や同級生、知ってる顔の人でも僕のことを2度見したり見つめたりコソコソとこっちを見ながら喋っている。僕のどこがいいんだか。
「悪いことだけじゃないかもよ」
これのどこが悪いところではないのだろうか、初めて孤爪さんを火炙りにしてやろうかと考えてたところに、トサカ頭の詐欺師顔をした人がきた。
「もしかしなくても噂のツッキー!?さーむらさんから聞いたよー」
不思議そうな顔で見つめてくる黒尾さんはちょっと面白い。
「そうですけど…」
「なんでこんなことなってんの?可愛いけど」
あなたの幼なじみの知り合いのせいでしょうが。
「僕もわかんないデス、ほら練習始まりますよ」
会えただけなのに、一日だけのこの姿を可愛いと言われただけなのに、期待しちゃうってほんと子供みたい。
肩が痛い、胸が痛い、女の大変さが少し分かったような気がする。何より視線をいつもより感じる。まぁ傍から見たら女が男に混じってバレーの練習してるんだもんね。
「月島、ごめんだけどバレーの練習今日は参加しない方が良い」
考え事をしているといきなり清水さんが話しかけて来た。いつもより身長が縮んでいるせいか、目線がいつもより合う。ぼーっとそんなことを考えていると清水さんが続けて
「さっきから男子達が月島の胸のせいで集中出来てない」
と、言った。僕男なのに?と言い返そうとしたがそうだ。体は何度も言うように女なのだ。
「む、胸のせいってどういうことデスカ」
「周りの人の話聞いてみて」
そう言われて周りの声に耳をすませてみた。
「あの子やばいって胸めっちゃ揺れてる」
「監督に気にするなっていわれたけど無理だよな」
これはだめなやつでは無いか、周りの人にも迷惑をかけてしまうかもしれない。でも今日練習をやらないのは勿体ない、まだ練習したいのに僕が薬なんて飲むからだ。そんなものに頼っても練習出来なかったら意味が無いじゃないか。嫌な汗がダラダラと額に流れる。
「ツッキー」
後ろから声を掛けられたと同時に赤いジャージを肩に掛けられた。
「可愛い子がそんなTシャツ1枚でいたら風邪引きますよー、ほら今日のところは練習切り上げたら?」
「でも、!」
「そのジャージ返しに自主練の時第三体育館に来てくんない?」
僕が練習したいのを言わなくても分かってくれてるんだこの人。今だって音駒も練習試合の途中なのに、僕のためにわざわざ抜けてきてくれて、他の人に見えないように立ってくれてどれだけ世話焼きなんだよ。たかが他校の後輩にこんなことしてて疲れてんじゃないの。
「……分かりました。仕方ないから自主練まで借りてあげます。」
「ははっ!せっかく黒尾先輩のジャージが借りれるっていうのに生意気なヤツめ、自主練覚悟しとけよ!」
それからは監督に事情を話して今日中は見学させて貰うことにした。他のチームの試合を戦ってる時とは違う視点で見れて勉強にはなった。夜からは黒尾さんが言った通り第三体育館組にジャージを返しに行くことにした。日向は王様と灰羽は夜久さんと練習しているらしく、体育館には黒尾さん、木兎さん、赤葦さんしかいなかった。
「おぉ!ツッキー来たか!!ほんとに女の子じゃん!!おっぱいデカっ‼️」
木兎さんは思った事を全て口に治す癖をやめた方がいいと思う。本当に。
「木兎さん、セクハラですよ」
「え、なんで??」
「はいはい、あほ梟は置いといて練習すっぞ」
変なとこで終わってすみません🙇♂️