jmside
不思議な高揚感と共に目を覚ます
ふわふわした感覚のまま、
ベッドから抜け出て、鏡の前に立つと、首筋に傷ができていて、
自分はヴァンパイアに襲われたのだと思い出した
鍵の開いていた扉から、部屋の外に出て、家の中を探るように歩いた
自分がヴァンパイアに変えられてしまった記憶はあったが、その実感は全くなかった
グクの姿もなく、あれは夢の中の出来事で、今も夢の中でさまよっているだけなのではないかとぼんやりと考えて、
ふらふらと家の奥へ奥へと向かう
気づいたら目の前に黒い扉があった
何故ここに来たのかも分からなかったが、
なんの躊躇いもなく、ドアノブに手をかけ、内開きのその戸を、ぐっと押して中を覗く
その部屋の中心には小さなベッドが置かれ、
1人の血の気のない女性が横たわっていた
僕はそこに引き寄せられるように近づくと、
傷口から滴っていた血に口をつけた
全て無意識だった
それを美味しいと思った瞬間、
僕は我にかえる
🐣「ぼ、、ぼく、、あ、、、あっ、、」
はっと目線を上げ、その女性の恐怖が浮かぶ顔が目に入った時、足が震えた
動くはずもなかったが、今にもその女性に首を絞められ、怒りのままに殺されるような気がした
🐣「い、、いや、、違う、、ごめんなさい、ごめんなさい、、いやあああああああ」
必死で外に飛び出すが、女性の顔が頭から離れない
家中から、僕を恨む声が聞こえてくる気がした
震える身体でなんとか玄関の方へと逃げる。
鍵をガチャガチャとこじ開け、外に飛び出そうとした時、
大きな身体に受け止められた
jkside
外の世界から戻り、家の鍵を開けようとした時、
何やら慌てて鍵を開けようとする音が内側から聞こえた
嫌な予感がして、様子を伺おうとしばらく待っていると
ガチャっと扉を開けて、ジミニヒョンが飛び出してきた
慌てて抱きとめると、抗うようにバタバタと暴れる
🐣「いや、、いや、、ちがう、、ごめんなさいごめんなさい、、」
🐰「落ち着いて!お願い暴れないで!」
暴れているものの、力は弱く、震えている
無理やり押し込むように家の中へと戻した
鍵を閉めてヒョンの方を振り返ると、錯乱しているのか、僕に掴みかかってきた
🐣「出してっっ僕は化け物じゃないっっなんでっ、、血がっ、、おんなのひとっ、、、、」
泣き叫ぶ彼が、何を言っているのか半分以上聞き取れなかったが、切れ切れと耳にした言葉で黒い扉の部屋を思い出す
確かヒョンに出会う前の日に襲ってしまった女性がそこにいたはずだ、多分それを見たのだろう
理由が分かったものの、もうヒョンの動転ぶりは手に負えないほどになっていた
落ち着いてと何度言っても、僕をどかして逃げ出そうとする
🐰「ヒョン、、ごめんっ」
やむを得ないと思った僕は、彼を床に乱暴に
ドンッと押し倒し、首に噛み付いた
🐣「ぅッッ、、、ぁ、、」
血を少し吸い上げて、力を抑える方法しか思いつかなかった
甘い血が僕の喉を流れ落ちると共に、
僕に掴みかかっていた手から力が抜け、ふっと床に落ちる
🐣「ぁ、、、、やだ、、、」
ある程度吸ったあと、身体を起こし、虚ろな目になったヒョンの、上半身をそっと抱えて抱き起こした
🐰「ヒョン、ごめんなさい頭打ちましたよね、、無理やり、、ごめんなさい。」
呆然としているのか、返事はなかった
🐰「ヒョン、、聞こえてる?黒い扉の部屋に入りましたか、、?」
そう聞くと、怯えた表情を浮かべた
🐣「な、、なんで、、あの人、、」
🐰「やっぱり、、血を吸いましたか?」
🐣「ぼ、、僕のせいで、、死、、んだ、、?」
また少し震え始めた身体を落ち着かせるように、頬を撫でる
🐰「大丈夫。確かにあの方は亡くなっているけれど、僕が○した女性です」
🐰「ヒョンは何も悪くない。家に残しておいた僕のミスです。怖がらせてごめんなさい」
大切にすると約束したのに、初めからこのザマで、
後悔と申し訳なさで胸がいっぱいになり、ぎゅっと抱きしめた
jmside
力の入らなくなった体を、
そっと抱き寄せられた
僕が○してしまった訳ではないと聞き、少しの安堵と、やはり目の前のグクはヴァンパイアなのだと思い知って怯える
🐰「傷つけないって決めたのに。ごめんなさい」
でも、騙されているのかもしれないが、彼の優しい声と、その身体の香りに安らぎを覚える僕がいた
🐣「僕、、血を吸わなきゃ生きていけないの、、?」
ぽつぽつと話す僕の言葉に、グクが静かに耳を傾けた
🐣「僕の体は、もうそうしなきゃ生きていけない、、?僕には無理だよ、、、」
赤い月の無い、綺麗なブラウンの瞳を見つめると、グクはその目を悲しそうに微笑んだ。
🐰「ヒョン、ヒョンは別に血を吸わなくても、まだ人間の食べ物を食べれば生きていけます。だから安心して。」
🐰「そう、、か、、僕まだヒョンにちゃんと話してなかったんですね。僕の話をしますね。
僕は、ずっと血に飢えて生きてきたんです、、、」
支えられ、体を預けたまま、グクの話を聞く
🐰「でも、僕らヴァンパイアは、伴侶を見つけられれば、血に困らなくて済む。人間の食べ物を口にできるようになるし、何より自分に血を与えてくれる人がそばに居てくれるから。」
🐣「それが、、、ぼく、?」
🐰「はい。誰が決めたのかは分からない。でも世界でたった1人なんです。僕が見つけられたのは奇跡だった。あなたしかこの苦しみから救ってくれる人はいないんです。」
🐣「そんな、、、」
目の前のグクは涙を流していた
そっと頬に触れると、さらに溢れ出す涙が熱くて、彼が本心で話しているのだと察する
🐰「ヒョン、、僕は乱暴に連れてきてあんな選択をさせてしまったけれど、あなた無しじゃもう生きられなくなってしまった。愛しているんです。」
🐰「ヒョンの人生を狂わせてしまった代わりに、僕はヒョンのことを守り続けます。苦しい思いはもうさせません。どうか、、僕のそばに、、いてくれませんか?」
泣きじゃくりながら言うグクをしばらく見つめていた
彼は本当に苦しかったみたいだった。
目の前で幼い顔をして、子供のように泣いているグクに愛情のようなものを抱き始めていた
僕は彼の頬に当てたままだった手をそっと動かし、その目から溢れる涙を拭う
🐣「分かったよ、、、」
グクがはっと息を飲んだ
🐣「僕が捕まったのが、
お前みたいな優しいヴァンパイアでよかった」
🐣「お前のそばにいるよ。もう泣かないで。」
泣かないで、と言ったのに、咳が切れたようにグクが大泣きをはじめて、僕は力いっぱい抱きしめられた。
🐰「ヒョン、、ヒョン、、僕もヒョンでよかった、、、泣 ごめんなさい、、でもありがとう、、ありがとう泣」
🐣「く、、くるし、、」
身体を支えてもらっているものの、血を抜かれた体には少々しんどくなってきていた
🐰「あ、、しんどいよね、?僕の血を入れてもいいんだけど、多分寝た方がこれ以上体に負担かけなくてすみます。」
🐰「次ヒョンが起きた時、僕は必ず隣に居るようにするから、安心して寝てください」
そう言われる頃には限界で、閉じかけていた意識の中でグクに尋ねる
🐣「もう、、グクは、、あんな風に人を殺さなくて済むの、、?」
また泣きそうな顔をしてグクが微笑んだ
🐰「うん。ヒョンのおかげで、もうこの力使わなくて済む。救ってくれてありがとう」
🐣「よかっ、、た、、」
グクの腕が、背中と膝下に差し込まれ、そっと抱き上げられたのを感じながら、
僕は落ちていく意識に身を預けた
僕も、グクも、間違った選択をしたのかもしれない。恐ろしい世界に首を突っ込んでしまったのかもしれない
でも、2人で生きていけるのなら、この可愛い顔をしたヴァンパイアを守れるのなら。
僕はもうそれだけでいいと思えていた
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈fin
ここまで読んでくださってありがとうございました☽
コメント
7件
本当に終わった……、私も頑張って終わらせよ💪
凄い面白かったです!!
終わっちゃった…… このお話めっちゃ好きやったから😄 ほんと面白かったです! 🐰ちゃん!伴侶みつかって良かった〜