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「…もうヤダ。」
その一言で、俺と彼との関係は変わってしまった。
キッカケは些細なこと、だったと思う。彼がどう思ってるかは、自信ないけど。
元より異世界人と人魚っていう言葉通り世界の違う2人だ。
価値観も大きく違うし、考えてることも違う。人間しか知らない異世界人と、陸に上がったばかりの陸初心者の人魚と。
互いに知らないことを知ったり、教え合ったりしている内に段々と心が揺れていった。
分かってる。いつか離れ離れになるであろうことくらい。それでも、好きになっていた。
好きに性別は関係ないと言うけれど、俺達の場合は好きに世界は関係ない、だろうか。
そんな感じで距離を少しずつ詰めつつ、互いを知って行った。
気付けば両片想いだったらしく、2人同時に告白して、互いにポカーンとした後、笑って承諾し合った。
そして正式に恋人同士となった俺達は以前よりほんの少し近く、優しく触れ合うようになっていたんだ。
いつも通り、オンボロ寮の部屋で一緒に過ごすことになっていた週末、彼と居る時は起こらなかった腹の虫がその日は収まらなかった。
どんな嫌なことがあっても彼の前だったら全部消えて嬉しいでいっぱいになるのに。
慰めようとしてくれたであろう普段は好きなスキンシップも寧ろイライラを増長させて、思わずキレてしまった。
『──触らないで!!』
焦りながらも機嫌を取ろうとしてくれた彼に何故かもっと苛立ちを覚えてしまい、とても口が悪くなってしまっていた。
ハッとした時には、彼は冷たい表情だった。
謝らないと。そう思っても口ははくはくと震えるのみだった。
彼はそのまま部屋を出て行って、その日は帰ってくることは無かった。
「…ねぇ、小エビちゃん。オレが悪かったから。なんて言ったら許してくれる?オレの全部あげたら許してくれる?どんなことされてもいい、って全部捧げたら許してくれる?
言い訳に聞こえちゃうかもしれないけど、オレ、雑魚に薬盛られてたんだって。好きが嫌に変わってイライラしちゃうようなやつ。人魚は耐性があるからってとっても濃いヤツ。アレはオレの本心じゃないし、小エビちゃんの全部が大好きだし、愛してる。
だからさ、ねぇ。 」
──早く起きてよ。